ガチャから不穏なキャラしか出てきません

ねんねこ

文字の大きさ
38 / 74
2話:悪意蔓延る町

17.トラブル(4)

しおりを挟む
 まあまあ、とその場を宥めたのはやはり彼女――灰梅だ。彼女は穏やかな表情のまま、穏やかな発言を続ける。

「一先ず、召喚士ちゃんの言う通りにしましょう。きっと、何かお考えがあるのよ~。それで~、私の行動履歴だけれどぉ。薄群青くんとほぼ一緒ね~。ずっと自宅にいたわ。それと、参考までに。私が現場に到着したのは~、薄群青くんの次。2番目よ」
「ふむふむ。なら、最初に薄群青が来て次に灰梅。最後が褐返の順番で到着したんだね」
「ええ~。この情報が少しでも役立つと良いのだけれど~」

 灰梅にも嘘偽りはない。であれば――最後、褐返の証言に注目が集まる。花実にとっては二重の意味でだ。ここまで嘘吐きが一人もいなかったのだから、彼以外には裏切者である事があり得ない状況となっている。
 生唾を飲み込みながら、態度だけはかなり自然体である彼の言葉を待つ。

「じゃあ、最後はお兄さんね。俺もずっと依拠にいたよ。ま、こんな夜中にふらふら出歩いたりはしないねえ」

 ――凄い、嘘だ!!
 かなり黒に近い状態の神使を前に、息を呑む。2人嘘センサーに引っ掛からなかった時点で、やはりデータの嘘を見分けるのは根本的に無理かもしれないと思ったが、そんな事はなかった。前回、薄桜の時が特殊だった訳ではないようだ。

「あの、褐返、あなたって結界に触ったりした?」

 一瞬の間。酷く怪訝そうな顔をした彼はややあって首を傾げながら口を開いた。

「俺だけにその質問を? ……結界には触ってないよ。満足したかな、召喚士ちゃん」
「……うーん、うん……」
「え、何その不思議そうな顔」

 生じる矛盾。褐返が結界に触っていないのは、嘘じゃ無い。つまり真実だ。でも、それならどうやって汚泥は結界内に浸入した?
 もしかして――裏切者が2人以上いるのだろうか。だが、薄群青と灰梅は嘘を吐いていない。ならば、この3人以外にもう1人、別の神使が存在している?

「えーっと、烏羽」
「お呼びでしょうか、召喚士殿」
「ごめん、変な事聞くけど、烏羽は結界に触ってないよね。この一件で」
「……? え、それ本気で聞いてます? ええ、吃驚なのですが。触っておりませんよ、どうされました? 急に」
「そうだよね、うん」

 困惑しつつ帰って来た答えは、当然ながら嘘などない。それよりも「え」という間の抜けた母音が本当だった事に、やや心を痛めた。すまない初期神使。
 だが、幻の4人目がいるのならここでずっと発言を突いていても意味が無い――

 瞬間、町内で何かが爆発するような音が響く。続いて絹を裂いたような悲鳴。ぎょっとして音がした方を向けば、火の手が上がっていた。何故。
 思考が上手くまとまらない。カンカンカン、と危険を報せる鐘の音が高らかに響き渡り始める。
 事態にすぐ反応したのは薄群青だった。神使と言うのは、見た目は人であるにも関わらず五感も優れているらしい。眉根に皺を寄せた彼はポツリと溢した。

「汚泥……? 俺が通ってきた時はいなかった……」
「なら、君がいなくなった後に現れたんじゃない? 何とも言えないけどね」

 薄群青の呟きに対し、そう応じた褐返もまた音がした方を眺めている。何でもいいわ、と灰梅がその場を制した。

「二手に別れて~、まずは汚泥の討伐を。ごめんねぇ、召喚士ちゃん。烏羽さんと一緒に~、東門の方を見て来て貰っていい? 私達、3人の中には敵対者がいる可能性があるからぁ、あまりまぜこぜしたくないのよねぇ」
「わ、分かった」

 ちら、と烏羽に視線を送る。ニヤニヤと唇を歪めた彼は何をどう受け取ったのか、道化の如き大袈裟さを披露する。

「ええ、ええ、まさに英断でしょう! ささ、参りましょう召喚士殿。裏切者の蔓延るぱぁてぃなどに参加する必要はありませんとも! ええ!」
「いや、言い方……! ごめんね。それじゃあ、また後で」

 灰梅に手を振って別れる。このゲーム、やはり現実に寄せているからかプレイヤーの手を振るというモーションに合わせてしっかり手を振り返してくれた。凝った作りではあるのだが、現実へ戻れなくなりそうなので程々にして欲しいものだ。

 ***

「――結界に穴を空けて入ってきた訳ではなさそうですねえ、この汚泥達は」

 現場へ到着、速やかに汚泥の処理を終えた烏羽は運動後とは思えない程、優雅な仕草で考える素振りを見せながらそう言った。

「どういう事?」
「そのままの意味ですよ、ええ。まるで急にこの場所に現れたかのようです。この地点は結界という境目から近い場所ではありませんし。ええ、ここへ来るまでに別の町人が汚泥を発見し、もっと早く騒ぎになっているはずです。結界から侵入したのであれば」
「確かに……。いやでも、何の為に現れたんだろう。今、急に出現する事に意味はあった? もしかして――」

 ――褐返を疑う素振りを見せたから現れた?
 体の良い話題逸らしとして、幻の4人目がこの場所に放った、とかだろうか。それならば裏切者同士が助け合って引き起こされた事件として辻褄が合う。
 唐突に黙り込んだ私の顔を、相変わらずバグった距離感で覗き込みながら初期神使が首を傾げる。その動き、体躯の大きな彼がしてもやや不気味なだけなので止めて欲しい。神使感の共通モーションなのかもしれないが。

「どうされました、召喚士殿?」
「あ、いや、上手く話を逸らされたかなって。でも……うーん、謎が多いなあ」
「謎が多いも何も。ええ、まだ何一つ解決していないので数がどうのという段階まで行けていないかと」
「厳しっ……」
「一先ず宿へ戻られては? 私達の仕事は終わりましたし。ええ、待っていれば他の連中もゾロゾロと集まってくる事でしょう」
「んー、了解」

 宿の場所など普通に分からなかったので、烏羽に案内をお願いする。呆れたような目を向けられてしまった。いやだからこのゲーム、そういう所は凝ってなくていいのだが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓
ファンタジー
「…ここは、どこ?」  …私、そうだ。そういえば… 「貴女、ここで何をしておる」 「わっ」  シュバッ 「…!?」  しまった、つい癖で回り込んで首に手刀を当ててしまった。 「あっ、ごめんなさい、敵意は無くて…その…」  急いで手を離す。  私が手刀をかけた相手は老人で、人…であはるが、人じゃない…? 「ふははは! よかろう、気に入ったぞ!」 「…え?」  これは暗殺者として頂点を飾る暗殺者が転生し、四大精霊に好かれ、冒険者として日銭を稼ぎ、時に人を守り、時に殺め、時に世界をも救う…。そんな物語である…!

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

処理中です...