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3話:都での流行病
05.強化チュートリアル(3)
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しかし、ここまで説明されれば数々のソシャゲに片足を突っ込んで来た花実にとってみれば簡単なものだった。表示されている神使名をタップし、素材を投入すれば良いのだろう――
勝手に理解を示していると、信じられない薄群青の言葉が鼓膜を打った。
「はい、そんじゃ素材を俺に渡して貰っていいッスか」
「……え?」
「あ、もしかして烏羽サンの能力を解放しようとしてます? あの人の強化をしたいなら結晶1個じゃ全然足りないッスよ」
「確かに……」
薄群青の強化に必要な結晶の数は1個か2個で一つの能力、となっているのに比べて烏羽はどの能力も結晶が複数個必要だ。一番消費量が多い項目で5個――これは途方も無い数なのでは?
いやそうじゃない。それも気掛かりだが、一番の気掛かりは強化チュートリアルである。
「主サン。まずは俺の能力を解放して、結晶の生成が出来るようにしましょう。素材の入手経路の確保が先ッス」
「そ、そうだね。え? その手は何?」
「え? いやだから、俺を強化するんスよね。輪力の結晶を渡して貰わないと」
「……あ、あー。成程ね!」
試しに端末の強化画面に表示された項目をタップするも、ウンともスンとも言わない。これはただの一覧に過ぎず、結晶が幾つ必要なのかを表にしているだけなのだろう。没入型なのだから、強化する神使へ直々に結晶を渡す必要があるのか。驚きだ。
苦笑しながら、手を差し出して召喚士のアクションを待っている薄群青に、それを手渡す。
「それじゃ、いただきますよっと」
結晶化していた輪力なるものが、薄群青の手の中で光を放ちながらほどけて行く。やがてそれは、吸い込まれるようにして溶け消えてしまった。
「はい、それじゃ俺の結晶生成が使えるようになったんで。結晶が出来上がり次第、主サンに渡しますね」
「おおー。だいたい、どのくらいの時間で作成できるの?」
「1日に1個くらいッスかね。ああそれと、俺以外に薄色シリーズを入手して、生成を解禁すれば1日に薄色シリーズの人数分作れますよ」
「キャラゲーじゃん……。つ、次のガチャを早く……!」
プレイヤーの悲痛な声は誰にも届かなかった。薄々気付いてはいたのだが、最初に高レアを引いてしまうと次のガチャがなかなか引けず、実質詰むのでは。何故そういう所で難易度調整をしてしまったのか。
それと、と薄群青が言葉を発する。
「あんまり主サンのやり方に口出しはしないッスけど、まあ、結晶の個数が少ない神使から強化した方が良いかもしれないッスね。俺等、初期時点でかなり能力を封じられてるんスけど、本当、能力が天と地ほども違うんで」
「コストが低い方から?」
「そうですね。素材の必要数が少ない神使は、すぐ元の性能に戻せるッス。手っ取り早いのは俺等、薄色から強化する事ッスわ」
唐突にそれまでずっと黙って事の成り行きを見守っていた烏羽が口を開いた。彼にしてはかなり我慢をして、長時間静かにしていた方である。
「おやおや、悲しい事ですねえ。ええ、召喚士殿。私と貴方程の付き合いでありながら、ポッと出の薄群青を優先させようとは。ええ、私だってずーっと能力の解放待ちであると言うのに!」
「ええ、どうしたの急に……」
「ええ、ええ、構いませんとも! 私なぞを頼るより、弱いくせに甲斐甲斐しさだけは一丁前の薄色しりぃずを優先させて!」
――め、面倒臭い!!
嘘と真実が混在しているが、薄群青を優先させる事に関して良く思っていないのだけは本当だ。卑屈過ぎる発言に耳を疑う。そして多分、プレイヤーに好感を抱いている訳ではなく、他者を優先されるのが気に食わないのだろう。気位の高い猫のような振る舞いだ。尤も、彼は猫ではなくカラスなのだが。
「まあまあ、落ち着いて」
「今日はお喋りですねえ、召喚士殿。どうです? ご機嫌ついでに、まずは私から強化してみると言うのは。ええ、ええ。ま、解放された能力を使うかどうかは私次第ですけど」
「いいよ。じゃあ先に、烏羽を強化しようか」
「はあ?」
「うちに最初に来たもんね。何でも順番だよ」
「……」
初期キャラ推し党に加入しているので、最初からそのつもりだった。が、烏羽は変な顔をして黙り込んでいる。
現実的な話、1日に1個、結晶が生成されるのであれば誰から強化しても問題無い。素材を得る為に高難易度クエストに行く必要が無いからだ。クエストありきであれば、初期の安い費用で強く出来るキャラクターから育てるが、時間経過で入手出来るアイテムを共用するのなら、究極的に言えば誰からでもいい。
沈黙する烏羽を横目で見ながら、薄群青が肩を竦める。
「まあ、誰からでも任せるッス。この社、烏羽サンが初期神使だから次の召喚まで、かなり時間がありそうだし。その判断が正しい気もします」
話の流れを完全に無視し、何故か烏羽が勝ち誇ったような声を上げた。彼は情緒が大変忙しい。
「ふふ、そうですね。我々が召喚士殿の決定に物申す事はありませんよ。ですが! そう、解放された能力を使うも使わないも私の自由である事はお忘れ無く! ええ、それでも私から強化しますか!?」
「急にどうした? 別にそれでも良いけど、折角強化したんだから戦闘で使う所、見たかったな……」
「そうでしょうとも! さあ、ほら、それでも私から強化しますか?」
「うん。最初の強化に必要な結晶の個数は2個でしょ。簡単じゃん。2日くらい待つよ」
「そうですか。……そうですか」
――これもしかして、好感度上昇もしくは下降したのでは?
フリースペースで運営から貰った助言をこの段階で噛み締める。明らかにペースを崩している烏羽は実に新鮮だ。自分からはグイグイ来るくせに、プレイヤーからアクションを起こしたらちょっと混乱する模様。
味を占めた花実はもっと積極的に声を掛けようと決意した。データと話すのが少し恥ずかしいと思っていた時期もあったが、思ったより会話が噛み合う。これも運営のおかげだ、ありがとう神様。
勝手に理解を示していると、信じられない薄群青の言葉が鼓膜を打った。
「はい、そんじゃ素材を俺に渡して貰っていいッスか」
「……え?」
「あ、もしかして烏羽サンの能力を解放しようとしてます? あの人の強化をしたいなら結晶1個じゃ全然足りないッスよ」
「確かに……」
薄群青の強化に必要な結晶の数は1個か2個で一つの能力、となっているのに比べて烏羽はどの能力も結晶が複数個必要だ。一番消費量が多い項目で5個――これは途方も無い数なのでは?
いやそうじゃない。それも気掛かりだが、一番の気掛かりは強化チュートリアルである。
「主サン。まずは俺の能力を解放して、結晶の生成が出来るようにしましょう。素材の入手経路の確保が先ッス」
「そ、そうだね。え? その手は何?」
「え? いやだから、俺を強化するんスよね。輪力の結晶を渡して貰わないと」
「……あ、あー。成程ね!」
試しに端末の強化画面に表示された項目をタップするも、ウンともスンとも言わない。これはただの一覧に過ぎず、結晶が幾つ必要なのかを表にしているだけなのだろう。没入型なのだから、強化する神使へ直々に結晶を渡す必要があるのか。驚きだ。
苦笑しながら、手を差し出して召喚士のアクションを待っている薄群青に、それを手渡す。
「それじゃ、いただきますよっと」
結晶化していた輪力なるものが、薄群青の手の中で光を放ちながらほどけて行く。やがてそれは、吸い込まれるようにして溶け消えてしまった。
「はい、それじゃ俺の結晶生成が使えるようになったんで。結晶が出来上がり次第、主サンに渡しますね」
「おおー。だいたい、どのくらいの時間で作成できるの?」
「1日に1個くらいッスかね。ああそれと、俺以外に薄色シリーズを入手して、生成を解禁すれば1日に薄色シリーズの人数分作れますよ」
「キャラゲーじゃん……。つ、次のガチャを早く……!」
プレイヤーの悲痛な声は誰にも届かなかった。薄々気付いてはいたのだが、最初に高レアを引いてしまうと次のガチャがなかなか引けず、実質詰むのでは。何故そういう所で難易度調整をしてしまったのか。
それと、と薄群青が言葉を発する。
「あんまり主サンのやり方に口出しはしないッスけど、まあ、結晶の個数が少ない神使から強化した方が良いかもしれないッスね。俺等、初期時点でかなり能力を封じられてるんスけど、本当、能力が天と地ほども違うんで」
「コストが低い方から?」
「そうですね。素材の必要数が少ない神使は、すぐ元の性能に戻せるッス。手っ取り早いのは俺等、薄色から強化する事ッスわ」
唐突にそれまでずっと黙って事の成り行きを見守っていた烏羽が口を開いた。彼にしてはかなり我慢をして、長時間静かにしていた方である。
「おやおや、悲しい事ですねえ。ええ、召喚士殿。私と貴方程の付き合いでありながら、ポッと出の薄群青を優先させようとは。ええ、私だってずーっと能力の解放待ちであると言うのに!」
「ええ、どうしたの急に……」
「ええ、ええ、構いませんとも! 私なぞを頼るより、弱いくせに甲斐甲斐しさだけは一丁前の薄色しりぃずを優先させて!」
――め、面倒臭い!!
嘘と真実が混在しているが、薄群青を優先させる事に関して良く思っていないのだけは本当だ。卑屈過ぎる発言に耳を疑う。そして多分、プレイヤーに好感を抱いている訳ではなく、他者を優先されるのが気に食わないのだろう。気位の高い猫のような振る舞いだ。尤も、彼は猫ではなくカラスなのだが。
「まあまあ、落ち着いて」
「今日はお喋りですねえ、召喚士殿。どうです? ご機嫌ついでに、まずは私から強化してみると言うのは。ええ、ええ。ま、解放された能力を使うかどうかは私次第ですけど」
「いいよ。じゃあ先に、烏羽を強化しようか」
「はあ?」
「うちに最初に来たもんね。何でも順番だよ」
「……」
初期キャラ推し党に加入しているので、最初からそのつもりだった。が、烏羽は変な顔をして黙り込んでいる。
現実的な話、1日に1個、結晶が生成されるのであれば誰から強化しても問題無い。素材を得る為に高難易度クエストに行く必要が無いからだ。クエストありきであれば、初期の安い費用で強く出来るキャラクターから育てるが、時間経過で入手出来るアイテムを共用するのなら、究極的に言えば誰からでもいい。
沈黙する烏羽を横目で見ながら、薄群青が肩を竦める。
「まあ、誰からでも任せるッス。この社、烏羽サンが初期神使だから次の召喚まで、かなり時間がありそうだし。その判断が正しい気もします」
話の流れを完全に無視し、何故か烏羽が勝ち誇ったような声を上げた。彼は情緒が大変忙しい。
「ふふ、そうですね。我々が召喚士殿の決定に物申す事はありませんよ。ですが! そう、解放された能力を使うも使わないも私の自由である事はお忘れ無く! ええ、それでも私から強化しますか!?」
「急にどうした? 別にそれでも良いけど、折角強化したんだから戦闘で使う所、見たかったな……」
「そうでしょうとも! さあ、ほら、それでも私から強化しますか?」
「うん。最初の強化に必要な結晶の個数は2個でしょ。簡単じゃん。2日くらい待つよ」
「そうですか。……そうですか」
――これもしかして、好感度上昇もしくは下降したのでは?
フリースペースで運営から貰った助言をこの段階で噛み締める。明らかにペースを崩している烏羽は実に新鮮だ。自分からはグイグイ来るくせに、プレイヤーからアクションを起こしたらちょっと混乱する模様。
味を占めた花実はもっと積極的に声を掛けようと決意した。データと話すのが少し恥ずかしいと思っていた時期もあったが、思ったより会話が噛み合う。これも運営のおかげだ、ありがとう神様。
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