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3話:都での流行病
11.挨拶回り(1)
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「――なんか様子がおかしかったッスね、白菫サン」
退室した白菫を見送った後。ポツリと薄群青がそう溢した。花実の社には白菫がいないので何とも言えないが、同僚から見ると変な様子らしい。そうですね、と心底面白おかしそうな顔をした烏羽が同意を示す。
「ええ、ええ。奴はなかなかに面白い御仁ですが、それに輪を掛けて今は面白そうですねぇ」
「はあ……。主サンは白菫サンと初対面だと思うんスけど、本来はもっと積極的な神使なんですよ。トラブルは自分から解決するタイプッスね。だからこそ、今の煮え切らない態度は、まあ有り体に言えば変です」
ガンガン行くタイプが元の性格のようだ。確かに薄群青の言う通り、花実から見た彼の第一印象は活発そうな性格には見えなかったので、薄群青の言葉が正しければ設定と乖離している状況という事になる。
「普段はもっとこう、ハキハキしてるって感じかな?」
「ええ、そうですねぇ。やかましい方ですよ。からかい甲斐――おっと失礼、お話のしがいがあって愉快な方ですとも!」
「玩具扱いじゃん……」
烏羽は打てば響く相手を好むので、真面目な性格で優秀な人材こそ、彼に弄ばれるに違いなかった。残念な事に、初期神使は頭の切れる嫌な奴だからだ。この情報だけを見ても、現実世界ではお近づきになりたくない手合いである。
「白菫サンは熱血漢で、俺にとっては割と付き合い辛い対象ッスわ」
「ああ、薄群青は暑苦しいのダメそう。いや、白菫には今の所、熱血漢っぽい一面は皆無な訳だけれど」
情報は一通り揃ったようだ。珍しく誰も嘘を吐いていないので、白菫の振る舞いが不審なのは明白である。後で重要になってくるのは確実なので、頭の中にメモを残しておく。
ところで、という烏羽の声で我に返った。
「これからどうされますか、召喚士殿。ええ、まだ会っていない4名の神使は2名ずつに別れて、2カ所に陣取っているようです」
「それじゃあ、挨拶回りにでも行こうかな。顔合わせみたいな」
「おやおや、貴方様が自ら出向かれるので? ええ、不敬だと言って全員をこの部屋に集めるのも一つの手ですよ」
「いやいいよ……」
建物がどうなっているのかも知りたいし、何より都マップ――要は外に出たい。招集を掛ける方が時間が掛かりそうなので、自分の足で向かうのが効率的だろう。
「神使達に会ってみたいから、案内してよ。烏羽」
「ええ、承知致しました。近場から回られるので?」
「うん。……というか、その、神使がどの辺にいるのか感知する能力って薄群青は使えないの?」
別に誰が案内してくれてもいいのだが、手持ちキャラクターの性能は把握しておきたい。そういう意味を以て訊ねると、薄群青は肩を竦めた。
「使えますよ。ただまあ、俺は感知出来る範囲が狭いので。あまり俺を頼りにするのは止めといた方がいッスね。ま、感知云々の得手不得手は都守に及びません」
「都守って5人しかいないんだよね? ガチで高レアじゃん、烏羽……」
そうですとも、と烏羽が整った顔に笑みを浮かべる。イキっちゃうキャラクターは嫌煙しがちなのだが、これまでの功績が謎の説得感を生んでしまい、思った程の嫌悪感はない。ある意味これは凄い才能だな、と花実は変な所で感心した。
「やっと私の価値に気付いたのですか、召喚士殿。前々かられあきゃらくたー、だと申告していたと言うのに」
「初期に来られてもなあ……。星の数とかで示して貰わないと……。そうだ、烏羽の感知能力って、結局は何をどこまで感知できるの? 前回、できない事とか色々あったよね」
「それはそうですねぇ。ええ、まあ移動しながらお話しましょう」
既に建物内にいる神使が、だいたいどの辺にいるのか見当が付いているらしい烏羽は迷いの無い足取りで部屋を出る。花実と薄群青もまた、その背を追った。
「私に限らず、全ての神使にはある程度、同業者がどこにいるのかを感知する機能が備わっております。ええ、基本性能というヤツですねぇ」
「ふむふむ」
「結論から申し上げますと、『隠れるつもりのない神使』であれば各々の有する範囲内にいれば、どの辺に位置取っているのか分かります。ええ」
「隠れるつもりがなければ、分かる……」
「はい。故に輪力の遮断処理などを施して、感知を疎外すればどの神使でもある程度見つからずにいられる、という訳です」
「ああ、そういえば薄藍は宿に潜んでたのに、前回誰も気付かなかったよね」
あれは、と僅かに烏羽が顔をしかめた。
「奴のそれは個人的な特殊能力ですので、肉眼で姿を捉えない限りは誰に感知される事もありません。まあ、雑魚の小細工程度の鬱陶しさですが。ええ」
「あ、そうなの?」
「ええ。感知を遮断している神使もまた、もっと近い範囲に入って来られれば分かってしまいますが。ええ。薄藍のソレは特別性ですので、混同なされぬよう」
――そういえば、特殊能力みたいなのがあるんだっけ?
結局、烏羽のそれは何だったのか聞いていない。ついでと言わんばかりに、例の件について訊ねた。
「烏羽達の特殊能力って何? あれ、使った事あったっけ?」
「何を寝惚けた事を仰っているのです。ええ、まだ解禁されておりませんよ。まさか、もう先程のちゅーとりあるの内容をお忘れに?」
「余分な罵倒が多いんだよなあ……。え、強化で解禁しないと使えないの?」
「そうですけど」
ばっと薄群青を見やる。烏羽は嘘を吐いていなかったが、レア度が低い方に分類されている薄色シリーズもそうなのかを確認したかったのだ。
ある意味、期待を裏切らず薄群青は首を横に振る。
「勿論、俺の能力も解禁されるまでは使えないッス」
「ええ!? うそ、そんな状態でストーリー進めてたの、私」
「ま、まあ、余程ヤバい神使が裏切者とかじゃない限り大丈夫でしょ。烏羽サン、いるし」
そうは言っても、最近の戦闘では強化メニューが無かったが故の強化不足が目に見えて明らかになってきている。キリの良い所で一旦切り上げて、強化素材が貯まるのを待った方が良い気がしてきた。
それに、時間が経てばガチャを回せる可能性だって出てくる。APだの何だのは存在しないタイプのソーシャルゲームだが、相応に時間を掛けて進めるようにできているのだろう。
退室した白菫を見送った後。ポツリと薄群青がそう溢した。花実の社には白菫がいないので何とも言えないが、同僚から見ると変な様子らしい。そうですね、と心底面白おかしそうな顔をした烏羽が同意を示す。
「ええ、ええ。奴はなかなかに面白い御仁ですが、それに輪を掛けて今は面白そうですねぇ」
「はあ……。主サンは白菫サンと初対面だと思うんスけど、本来はもっと積極的な神使なんですよ。トラブルは自分から解決するタイプッスね。だからこそ、今の煮え切らない態度は、まあ有り体に言えば変です」
ガンガン行くタイプが元の性格のようだ。確かに薄群青の言う通り、花実から見た彼の第一印象は活発そうな性格には見えなかったので、薄群青の言葉が正しければ設定と乖離している状況という事になる。
「普段はもっとこう、ハキハキしてるって感じかな?」
「ええ、そうですねぇ。やかましい方ですよ。からかい甲斐――おっと失礼、お話のしがいがあって愉快な方ですとも!」
「玩具扱いじゃん……」
烏羽は打てば響く相手を好むので、真面目な性格で優秀な人材こそ、彼に弄ばれるに違いなかった。残念な事に、初期神使は頭の切れる嫌な奴だからだ。この情報だけを見ても、現実世界ではお近づきになりたくない手合いである。
「白菫サンは熱血漢で、俺にとっては割と付き合い辛い対象ッスわ」
「ああ、薄群青は暑苦しいのダメそう。いや、白菫には今の所、熱血漢っぽい一面は皆無な訳だけれど」
情報は一通り揃ったようだ。珍しく誰も嘘を吐いていないので、白菫の振る舞いが不審なのは明白である。後で重要になってくるのは確実なので、頭の中にメモを残しておく。
ところで、という烏羽の声で我に返った。
「これからどうされますか、召喚士殿。ええ、まだ会っていない4名の神使は2名ずつに別れて、2カ所に陣取っているようです」
「それじゃあ、挨拶回りにでも行こうかな。顔合わせみたいな」
「おやおや、貴方様が自ら出向かれるので? ええ、不敬だと言って全員をこの部屋に集めるのも一つの手ですよ」
「いやいいよ……」
建物がどうなっているのかも知りたいし、何より都マップ――要は外に出たい。招集を掛ける方が時間が掛かりそうなので、自分の足で向かうのが効率的だろう。
「神使達に会ってみたいから、案内してよ。烏羽」
「ええ、承知致しました。近場から回られるので?」
「うん。……というか、その、神使がどの辺にいるのか感知する能力って薄群青は使えないの?」
別に誰が案内してくれてもいいのだが、手持ちキャラクターの性能は把握しておきたい。そういう意味を以て訊ねると、薄群青は肩を竦めた。
「使えますよ。ただまあ、俺は感知出来る範囲が狭いので。あまり俺を頼りにするのは止めといた方がいッスね。ま、感知云々の得手不得手は都守に及びません」
「都守って5人しかいないんだよね? ガチで高レアじゃん、烏羽……」
そうですとも、と烏羽が整った顔に笑みを浮かべる。イキっちゃうキャラクターは嫌煙しがちなのだが、これまでの功績が謎の説得感を生んでしまい、思った程の嫌悪感はない。ある意味これは凄い才能だな、と花実は変な所で感心した。
「やっと私の価値に気付いたのですか、召喚士殿。前々かられあきゃらくたー、だと申告していたと言うのに」
「初期に来られてもなあ……。星の数とかで示して貰わないと……。そうだ、烏羽の感知能力って、結局は何をどこまで感知できるの? 前回、できない事とか色々あったよね」
「それはそうですねぇ。ええ、まあ移動しながらお話しましょう」
既に建物内にいる神使が、だいたいどの辺にいるのか見当が付いているらしい烏羽は迷いの無い足取りで部屋を出る。花実と薄群青もまた、その背を追った。
「私に限らず、全ての神使にはある程度、同業者がどこにいるのかを感知する機能が備わっております。ええ、基本性能というヤツですねぇ」
「ふむふむ」
「結論から申し上げますと、『隠れるつもりのない神使』であれば各々の有する範囲内にいれば、どの辺に位置取っているのか分かります。ええ」
「隠れるつもりがなければ、分かる……」
「はい。故に輪力の遮断処理などを施して、感知を疎外すればどの神使でもある程度見つからずにいられる、という訳です」
「ああ、そういえば薄藍は宿に潜んでたのに、前回誰も気付かなかったよね」
あれは、と僅かに烏羽が顔をしかめた。
「奴のそれは個人的な特殊能力ですので、肉眼で姿を捉えない限りは誰に感知される事もありません。まあ、雑魚の小細工程度の鬱陶しさですが。ええ」
「あ、そうなの?」
「ええ。感知を遮断している神使もまた、もっと近い範囲に入って来られれば分かってしまいますが。ええ。薄藍のソレは特別性ですので、混同なされぬよう」
――そういえば、特殊能力みたいなのがあるんだっけ?
結局、烏羽のそれは何だったのか聞いていない。ついでと言わんばかりに、例の件について訊ねた。
「烏羽達の特殊能力って何? あれ、使った事あったっけ?」
「何を寝惚けた事を仰っているのです。ええ、まだ解禁されておりませんよ。まさか、もう先程のちゅーとりあるの内容をお忘れに?」
「余分な罵倒が多いんだよなあ……。え、強化で解禁しないと使えないの?」
「そうですけど」
ばっと薄群青を見やる。烏羽は嘘を吐いていなかったが、レア度が低い方に分類されている薄色シリーズもそうなのかを確認したかったのだ。
ある意味、期待を裏切らず薄群青は首を横に振る。
「勿論、俺の能力も解禁されるまでは使えないッス」
「ええ!? うそ、そんな状態でストーリー進めてたの、私」
「ま、まあ、余程ヤバい神使が裏切者とかじゃない限り大丈夫でしょ。烏羽サン、いるし」
そうは言っても、最近の戦闘では強化メニューが無かったが故の強化不足が目に見えて明らかになってきている。キリの良い所で一旦切り上げて、強化素材が貯まるのを待った方が良い気がしてきた。
それに、時間が経てばガチャを回せる可能性だって出てくる。APだの何だのは存在しないタイプのソーシャルゲームだが、相応に時間を掛けて進めるようにできているのだろう。
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