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3話:都での流行病
12.挨拶回り(2)
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話をしていると、烏羽が戸の前で立ち止まった。部屋を指さし、ナビゲート終了の言葉を口にする。
「さて、召喚士殿。こちらには現在、2体の神使がいます。恐らく黄系の神使ではないかと。ええ、奴等がこんな普通の部屋にいるはずもありません」
「そうなんだ。ノックとかした方が――」
問いが完結するまでの一瞬で、全く配慮する様子の無い烏羽が戸を開け放つ。中には女性型の神使が2人、顔を突き合わせて話をしていたようだった。ただ、今烏羽が乗り込んだせいで驚きの表情を浮かべてはいるが。
全体的に白色で統一された少女の神使と、逆に黒色で統一された少女の神使。2人は全く似ていないようでいて、少しだけ似た雰囲気を放っていた。
烏羽が乱入した事により、硬直していた黒い神使がガタガタッと盛大な音を立てて座布団から立ち上がる。驚きの表情は一変し、幽霊にでも会ったかのような表情へ変わっていた。ここでも我が家の初期神使は盛大に嫌われているようで何よりだ。
裏返った声で黒い神使が言葉を紡ぐ。焦りがひしひしと伝わってきてしまい、申し訳無い気持ちで一杯だ。
「おっ、大兄様!? 何故、ここに!? え、あ、その、紫黒に何か不備でもありましたでしょうか……!?」
「いいえ。ただ、召喚士殿が黄都にいる神使と顔合わせがしたいと仰るので。ええ、まさか私に意見をするつもりですか?」
「ヒッ……! あ、いや、その、そういう訳では……」
怯えてしどろもどろに返事をする黒い神使。とても可哀相なので、そうやって詰めるのは止めて欲しいものだ。
彼女に代わり、抗議の声を上げようとしたが、他でもない烏羽の話題転換で不発に終わる。
「召喚士殿。こちらは紫黒。ええ、私と同じ黒系統ですので」
黒い少女の姿をした神使――名前は紫黒と言うらしい。言われてみれば紫がかっているような気がしないでもない長髪をツインテールにしている。勝ち気そうな瞳はしかし、烏羽の威圧ですっかりと覇気を失っていた。
「よろしくね?」
悪いのは烏羽だけなんです、とアピールするように花実はそう声を掛けた。紫黒は首を縦に振るのみだ。召喚士と銘打たれた小娘より、大兄が気になって仕方が無いと見える。
一方で事の成り行きを黙って見つめていたもう一人、白い方の神使は会話が途切れたタイミングを見計らい、華やかな笑みを浮かべてみせた。
「初めまして、召喚士様。私は白花。今は兄や紫黒と共に、この黄都に配属されております。どうぞ、よしなに」
ふんわりとした白っぽいセミロングの髪に、同じ色の双眸。柔らかな物腰で、意外にも背が高い。紫黒よりも数㎝は上の方に頭の天辺があった。というか――
「兄……?」
「はい。白菫は私の兄にして、対神。同じ都に配属されているのです。兄は少し、気難しい所がありますが、どうかあまり気になさらないで下さい」
白菫は妹に当たるはずの白花について何一つ話をしていなかったが、この2人はかなり関係深いようだ。ところで、神使に兄妹などの概念は無いと烏羽が以前に言っていた気がするのだが。
そんなプレイヤーの心理を読み取ったのか、件の初期神使が低い失笑のような音を漏らす。小馬鹿にしているようなニュアンスが非常に強い。
「何を言っているのです、白花。我々神使に兄妹などという関係性は存在しませんよ。ええ、ごっこ遊びでしたらお好きなようにして下さって構いませんが。しかし、いけませんねぇ。赤子と同程度の知識量しかお持ちではない、我等が召喚士殿が勘違いをしてしまいます故。言動には気を付けて頂かないと」
――うっざい人だコレ……!
要らん言い方ばかりしてしまう典型例の烏羽に戦々恐々とした感情すら抱く。コイツに人の心は無いのか。否、人ではなかった。彼は神使だ。
それはいいのですが、と紫黒が怯え切った表情で烏羽に声を掛ける。
「大兄様は、召喚士をここへ連れてきただけ、という事で本当に良いんですよね……?」
「ええ。同じ事を何度も言わせないで下さい」
「す、すいません」
独裁政治の片鱗が見え隠れしている。我が家の神使は間違いなく、自分の持ち都でも同じ振る舞いをしているに違いない。何て奴だ。
しかし、ここで紫黒はただ棒立ちしていたプレイヤーへとその黒い視線を向けた。烏羽を連れてきてしまったので、嫌な奴だと思われているかもしれない――
「ようこそ、召喚士様。えーっと、今はちょっと忙しいけれど、ゆっくりして行ってね。その為に私、黒都からここに配備されたのだし!」
普通に歓迎してくれるようだ。白菫があまり歓迎ムードではなかったので、黄都はそういうステージなのかと思っていたが、彼以外はそこそこ歓迎してくれているらしい。
そうだ、と白花が手を打つ。
「召喚士様も、ここでお茶をして行きますか? 今、私達も待機中で。もし、よろしければですけれど」
面倒臭そうな顔をするのは烏羽だ。確かに奴は神使同士で仲良く茶をしばいたりはしないだろう。そういう訳で、空気が悪くなるのは明白だってので丁重にお断りする。
「ごめん、次の神使に会って来ないといけないから」
「そうですか? 私達はこの部屋にまだ一時はいると思いますので、何かあればすぐにお申し付け下さいね」
「ありがとう」
待機中の少女型神使2人と別れた。
「さて、召喚士殿。こちらには現在、2体の神使がいます。恐らく黄系の神使ではないかと。ええ、奴等がこんな普通の部屋にいるはずもありません」
「そうなんだ。ノックとかした方が――」
問いが完結するまでの一瞬で、全く配慮する様子の無い烏羽が戸を開け放つ。中には女性型の神使が2人、顔を突き合わせて話をしていたようだった。ただ、今烏羽が乗り込んだせいで驚きの表情を浮かべてはいるが。
全体的に白色で統一された少女の神使と、逆に黒色で統一された少女の神使。2人は全く似ていないようでいて、少しだけ似た雰囲気を放っていた。
烏羽が乱入した事により、硬直していた黒い神使がガタガタッと盛大な音を立てて座布団から立ち上がる。驚きの表情は一変し、幽霊にでも会ったかのような表情へ変わっていた。ここでも我が家の初期神使は盛大に嫌われているようで何よりだ。
裏返った声で黒い神使が言葉を紡ぐ。焦りがひしひしと伝わってきてしまい、申し訳無い気持ちで一杯だ。
「おっ、大兄様!? 何故、ここに!? え、あ、その、紫黒に何か不備でもありましたでしょうか……!?」
「いいえ。ただ、召喚士殿が黄都にいる神使と顔合わせがしたいと仰るので。ええ、まさか私に意見をするつもりですか?」
「ヒッ……! あ、いや、その、そういう訳では……」
怯えてしどろもどろに返事をする黒い神使。とても可哀相なので、そうやって詰めるのは止めて欲しいものだ。
彼女に代わり、抗議の声を上げようとしたが、他でもない烏羽の話題転換で不発に終わる。
「召喚士殿。こちらは紫黒。ええ、私と同じ黒系統ですので」
黒い少女の姿をした神使――名前は紫黒と言うらしい。言われてみれば紫がかっているような気がしないでもない長髪をツインテールにしている。勝ち気そうな瞳はしかし、烏羽の威圧ですっかりと覇気を失っていた。
「よろしくね?」
悪いのは烏羽だけなんです、とアピールするように花実はそう声を掛けた。紫黒は首を縦に振るのみだ。召喚士と銘打たれた小娘より、大兄が気になって仕方が無いと見える。
一方で事の成り行きを黙って見つめていたもう一人、白い方の神使は会話が途切れたタイミングを見計らい、華やかな笑みを浮かべてみせた。
「初めまして、召喚士様。私は白花。今は兄や紫黒と共に、この黄都に配属されております。どうぞ、よしなに」
ふんわりとした白っぽいセミロングの髪に、同じ色の双眸。柔らかな物腰で、意外にも背が高い。紫黒よりも数㎝は上の方に頭の天辺があった。というか――
「兄……?」
「はい。白菫は私の兄にして、対神。同じ都に配属されているのです。兄は少し、気難しい所がありますが、どうかあまり気になさらないで下さい」
白菫は妹に当たるはずの白花について何一つ話をしていなかったが、この2人はかなり関係深いようだ。ところで、神使に兄妹などの概念は無いと烏羽が以前に言っていた気がするのだが。
そんなプレイヤーの心理を読み取ったのか、件の初期神使が低い失笑のような音を漏らす。小馬鹿にしているようなニュアンスが非常に強い。
「何を言っているのです、白花。我々神使に兄妹などという関係性は存在しませんよ。ええ、ごっこ遊びでしたらお好きなようにして下さって構いませんが。しかし、いけませんねぇ。赤子と同程度の知識量しかお持ちではない、我等が召喚士殿が勘違いをしてしまいます故。言動には気を付けて頂かないと」
――うっざい人だコレ……!
要らん言い方ばかりしてしまう典型例の烏羽に戦々恐々とした感情すら抱く。コイツに人の心は無いのか。否、人ではなかった。彼は神使だ。
それはいいのですが、と紫黒が怯え切った表情で烏羽に声を掛ける。
「大兄様は、召喚士をここへ連れてきただけ、という事で本当に良いんですよね……?」
「ええ。同じ事を何度も言わせないで下さい」
「す、すいません」
独裁政治の片鱗が見え隠れしている。我が家の神使は間違いなく、自分の持ち都でも同じ振る舞いをしているに違いない。何て奴だ。
しかし、ここで紫黒はただ棒立ちしていたプレイヤーへとその黒い視線を向けた。烏羽を連れてきてしまったので、嫌な奴だと思われているかもしれない――
「ようこそ、召喚士様。えーっと、今はちょっと忙しいけれど、ゆっくりして行ってね。その為に私、黒都からここに配備されたのだし!」
普通に歓迎してくれるようだ。白菫があまり歓迎ムードではなかったので、黄都はそういうステージなのかと思っていたが、彼以外はそこそこ歓迎してくれているらしい。
そうだ、と白花が手を打つ。
「召喚士様も、ここでお茶をして行きますか? 今、私達も待機中で。もし、よろしければですけれど」
面倒臭そうな顔をするのは烏羽だ。確かに奴は神使同士で仲良く茶をしばいたりはしないだろう。そういう訳で、空気が悪くなるのは明白だってので丁重にお断りする。
「ごめん、次の神使に会って来ないといけないから」
「そうですか? 私達はこの部屋にまだ一時はいると思いますので、何かあればすぐにお申し付け下さいね」
「ありがとう」
待機中の少女型神使2人と別れた。
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