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エピローグ
今も、そしてこれからも
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「ラナ、何でマリが冒険者になろうって言ってるか分かる?」
唐突にそんなこと言われても、浮かぶのは剣舞祭の祝福しか心当たりがない。素直にそう告げると分かってるじゃん、と笑みを深くした。
悪役が似合わなそうで似合う彼も中々よね。
「君は神様から祝福を受けた。ということは経験はどうあれ、誰でもなれるノーマルランクに付随してプラチナランクであることも付け足される。身分証明として心強いことこの上ないし、君の系統でいえば箔がつくようなものだよ」
それは頭では理解してる。現状なれるとされてる最上位ランクの更に上なんて、前衛職に携わる者なら憧れなんてものじゃないくらい欲しい称号だ。現に系統別授業の時、剣舞祭に出ていた人は私含め気合いの入れ方が違ったもの。
「でも、今は限られた人しか祝福ってないんでしょ?」
「だからだよ。その限られた人に君は入ってる。ってことは必然、冒険者に限らず依頼する方にもその話は流れるはずだ。年月が過ぎて腕前を披露していけば指名依頼っていうんだっけ? そういうのも出てくると思うよ」
「そりゃ、まあそうだけど。そんなにうまくいく?」
「君が辞めた学園はこの国の頂点ともいえる場所だよ? そこで剣を修めた君が適当な人に負けると僕は思えないな」
いやいや、あくまで勉強だから実戦とはわけが違うよ。命のやり取りなんてもってのほか。そう簡単にことが運ぶなんて思えない。
それでもアランの不敵な笑みは変わっていないから、勝算はかなり高めなのだろう。
「更にいうと冒険者っていうのは国々から独立した国際機関でもあるんだ。犯罪の温床だとか言われるけどそれは本当に初期の話で、今は犯罪を犯したらなれないし犯したら即お縄の世界。身辺調査もされる」
あ、思ったよりきちんとしたものなんだね。国際機関って表現に違和感はあるけど、その通りではある。
ん? てことは、もしや。
「それ、下手に国が介入してきたら面倒なことになるやつ?」
「うん。引き抜きはなくもないけど本人の意思が最優先。勧誘を断られたのに強引に進めたとしたらその国から冒険者は消える。
となれば様々な人々が盗賊や獣を恐れながら街の外へ、例えば鉱石や薬草を採取するのは至難であるから、成立できない商売が生まれる。そうなれば経済は滞り、発展は停滞する。ここまで言えば分かるよね?」
とどのつまり、冒険者が様々な雑用というなのお使いをしてくれるから作れる物がその国では作れなくなり、場合によっては輸入に頼らざるを得なくなる。その輸入も冒険者ではなく国の兵士がやるとなればお金は国が出すわけで、輸出が上回ってない限りは借金は徐々に徐々に、雪だるま式に増えていくようなもの。
もちろん日雇いの傭兵という手もあるけど、あくまでそれは民間の話。輸入・輸出での重要性が高い物や民間では賄いきれなくなった品物類は国が行なっていくことになるだろうから、運搬する人々も合わせた護衛の仕事は基本的に兵士の役目になっていくはずだ。冒険者がいなくなればその品物の数も運搬者の人数も増え、その分お金はかかっていく、というわけだ。
となれば返済のために税金を上げなきゃいけなくなる。国民にはきちんと説明した上で行ったとしても、やっぱり国内消費にも限度があるわけでそのうち行き詰まっていく。
たった一人のために将来国が破綻するかもしれないリスクを負うなんて馬鹿らしいって思うのが普通かな?
何が言いたいかというと、今後、この国どころか諸国から一切の介入がこなくなると考えればいいわけだ。国というか貴族なわけだけど。あんまり意味は変わらないでしょ。
今のところその気配はないけど、それは学園という守られる場所があったから。むしろこれから先はあの手この手でくると思った方が妥当か。
なるほどそう考えると確かに冒険者は良い。賃金を始めとした細かな問題についてはまだ不安が残るけど、それはどの職も変わりないか。たとえ稼げなくても、最悪酒場の店員になって稼げば良い。
何よりここまで説得されたのになりたくないなんて言えるほどの欠点がないのだから仕方ない。立場はどうあれ、剣士として生きていけそうなら文句は言うまい。
「分かった、やってみよっか」
晴れやかな笑顔で頷く二人。私と違ってその身分柄、家に相談しなくても良いのかなんて聞いた方が良いのかもしれないけど、この二人のことだ、手は打ってそうな気がする。
「なら、まずは冒険者の登録が必要だね。機関に顔を出さないと」
「ドキドキしますね。これからどうなるんでしょうか」
「さぁ……悪い結果にならないことだけを祈るしかないかな」
街へ向かって歩き出す。初めて三人で街に行くのが退学後っていう皮肉じみた状況に苦笑いしそうになる。悪いこととも言えないからなんとも言えない気持ちだ。
ああ、でも不謹慎ながら嬉しいかな。国人になったらいくら元チームメイトとの行動が多くても、私は軍人として働くだろうから二人とは中々一緒にいられないだろうって思ってた。
まだまだ共にいられる。それがいつまでかは分からないけども喜ばしいと思ってしまう。
できれば、ずっと傍にいたいな。
唐突にそんなこと言われても、浮かぶのは剣舞祭の祝福しか心当たりがない。素直にそう告げると分かってるじゃん、と笑みを深くした。
悪役が似合わなそうで似合う彼も中々よね。
「君は神様から祝福を受けた。ということは経験はどうあれ、誰でもなれるノーマルランクに付随してプラチナランクであることも付け足される。身分証明として心強いことこの上ないし、君の系統でいえば箔がつくようなものだよ」
それは頭では理解してる。現状なれるとされてる最上位ランクの更に上なんて、前衛職に携わる者なら憧れなんてものじゃないくらい欲しい称号だ。現に系統別授業の時、剣舞祭に出ていた人は私含め気合いの入れ方が違ったもの。
「でも、今は限られた人しか祝福ってないんでしょ?」
「だからだよ。その限られた人に君は入ってる。ってことは必然、冒険者に限らず依頼する方にもその話は流れるはずだ。年月が過ぎて腕前を披露していけば指名依頼っていうんだっけ? そういうのも出てくると思うよ」
「そりゃ、まあそうだけど。そんなにうまくいく?」
「君が辞めた学園はこの国の頂点ともいえる場所だよ? そこで剣を修めた君が適当な人に負けると僕は思えないな」
いやいや、あくまで勉強だから実戦とはわけが違うよ。命のやり取りなんてもってのほか。そう簡単にことが運ぶなんて思えない。
それでもアランの不敵な笑みは変わっていないから、勝算はかなり高めなのだろう。
「更にいうと冒険者っていうのは国々から独立した国際機関でもあるんだ。犯罪の温床だとか言われるけどそれは本当に初期の話で、今は犯罪を犯したらなれないし犯したら即お縄の世界。身辺調査もされる」
あ、思ったよりきちんとしたものなんだね。国際機関って表現に違和感はあるけど、その通りではある。
ん? てことは、もしや。
「それ、下手に国が介入してきたら面倒なことになるやつ?」
「うん。引き抜きはなくもないけど本人の意思が最優先。勧誘を断られたのに強引に進めたとしたらその国から冒険者は消える。
となれば様々な人々が盗賊や獣を恐れながら街の外へ、例えば鉱石や薬草を採取するのは至難であるから、成立できない商売が生まれる。そうなれば経済は滞り、発展は停滞する。ここまで言えば分かるよね?」
とどのつまり、冒険者が様々な雑用というなのお使いをしてくれるから作れる物がその国では作れなくなり、場合によっては輸入に頼らざるを得なくなる。その輸入も冒険者ではなく国の兵士がやるとなればお金は国が出すわけで、輸出が上回ってない限りは借金は徐々に徐々に、雪だるま式に増えていくようなもの。
もちろん日雇いの傭兵という手もあるけど、あくまでそれは民間の話。輸入・輸出での重要性が高い物や民間では賄いきれなくなった品物類は国が行なっていくことになるだろうから、運搬する人々も合わせた護衛の仕事は基本的に兵士の役目になっていくはずだ。冒険者がいなくなればその品物の数も運搬者の人数も増え、その分お金はかかっていく、というわけだ。
となれば返済のために税金を上げなきゃいけなくなる。国民にはきちんと説明した上で行ったとしても、やっぱり国内消費にも限度があるわけでそのうち行き詰まっていく。
たった一人のために将来国が破綻するかもしれないリスクを負うなんて馬鹿らしいって思うのが普通かな?
何が言いたいかというと、今後、この国どころか諸国から一切の介入がこなくなると考えればいいわけだ。国というか貴族なわけだけど。あんまり意味は変わらないでしょ。
今のところその気配はないけど、それは学園という守られる場所があったから。むしろこれから先はあの手この手でくると思った方が妥当か。
なるほどそう考えると確かに冒険者は良い。賃金を始めとした細かな問題についてはまだ不安が残るけど、それはどの職も変わりないか。たとえ稼げなくても、最悪酒場の店員になって稼げば良い。
何よりここまで説得されたのになりたくないなんて言えるほどの欠点がないのだから仕方ない。立場はどうあれ、剣士として生きていけそうなら文句は言うまい。
「分かった、やってみよっか」
晴れやかな笑顔で頷く二人。私と違ってその身分柄、家に相談しなくても良いのかなんて聞いた方が良いのかもしれないけど、この二人のことだ、手は打ってそうな気がする。
「なら、まずは冒険者の登録が必要だね。機関に顔を出さないと」
「ドキドキしますね。これからどうなるんでしょうか」
「さぁ……悪い結果にならないことだけを祈るしかないかな」
街へ向かって歩き出す。初めて三人で街に行くのが退学後っていう皮肉じみた状況に苦笑いしそうになる。悪いこととも言えないからなんとも言えない気持ちだ。
ああ、でも不謹慎ながら嬉しいかな。国人になったらいくら元チームメイトとの行動が多くても、私は軍人として働くだろうから二人とは中々一緒にいられないだろうって思ってた。
まだまだ共にいられる。それがいつまでかは分からないけども喜ばしいと思ってしまう。
できれば、ずっと傍にいたいな。
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