80 / 81
番外編
やっちゃったよ(後編)
しおりを挟む
あちらこちらから攻められる状況というのは、中々体験も経験も出来ない。と言いたいところだったけど、学園時代の総当たり戦を思い出すほどには余裕あるものだった。
そもそも普段の仕事と違って、今日のは命の危険がない。お互い手加減して魔力を行使するし、武器だって刃を潰した、ギルドが貸し出す訓練用のもの。だからというわけじゃないけど、周りを見て戦う冷静さを保つことが出来た。
「いやー、魔獣達の方が本能的に動くからいなすのは人間の方が難しいね」
「そりゃまあ、そうだよ」
前衛はもちろん私が動き回って攻撃を防いだり、逆にしかけたりするけど、アランもしないわけじゃない。本人いわく器用貧乏だって言ってるけど、闘える人が一人いるだけで話は大分違ってくる。
まして要ともいえる後衛はマリ一人で、この状況ならマリを先に潰した方が後は消耗戦へ持ち込める。そう考えると防ぎやすいからあえて囮にさせちゃってて申し訳ない。もちろんそれを見越してる人は逆に私達二人を潰してから、と考えるから気が抜けない。
怒涛。まさにその言葉がふさわしい攻撃の嵐。一部観戦者となっている冒険者から、その様子は乱舞だったと後に教えてもらうほどだったらしい。
一通りの相手をし終わる頃には、昼をとうに過ぎまもなく夕方という空模様だった。ほぼ一日中対戦してたことになる上に、昼ご飯……ともいえない軽食しか食べてないからお腹がペッコペコだ。もう今なら魔獣肉の塩焼き──美味しいともマズイとも言えないやつ。値段が安いので新人冒険者が受ける食事の通過儀礼と称されてる料理──でも構わないから胃に入れたい。
ふはあ、とその場に気を抜いた息を一つ吐くと、アランやマリも各々体を伸ばしたり楽な格好をしたりして気を抜いていた。連戦に連戦を重ねたもんね、そりゃ誰だってそうなるか。見渡せば周りの人皆同じような様子だしね。
「……お前ら、いつ旅立つんだ?」
近くにいた冒険者の一人がその質問をした瞬間、周りの空気が変わる。そば耳立ててるのを承知で、アランが代表して答えてくれた。
「早ければ二日、遅くても十日以内にはここを出るつもりだよ」
「そうか。お前らがきて、俺達の意識も随分変わったよ。新人向けの依頼だからって避けてたらそいつらに熟練顔負けのことされたんだからな」
「そんなことはないよ。僕らは一人でやってるわけじゃない。三人だからやれてこれたんだ」
「……いいチームだな。大事にしろよ」
「言われなくても」
二人が拳を合わせると、周りがやんややんやと騒ぎ出した。話を合わせると「私達の門出を祝う宴会するぞ!」とのこと。要するに人をダシにして飲みたいだけでしょうに。
それでも嬉しいと笑ってしまうのは、私もこのギルドで受け入れられていたと思うから、なのかな。
そもそも普段の仕事と違って、今日のは命の危険がない。お互い手加減して魔力を行使するし、武器だって刃を潰した、ギルドが貸し出す訓練用のもの。だからというわけじゃないけど、周りを見て戦う冷静さを保つことが出来た。
「いやー、魔獣達の方が本能的に動くからいなすのは人間の方が難しいね」
「そりゃまあ、そうだよ」
前衛はもちろん私が動き回って攻撃を防いだり、逆にしかけたりするけど、アランもしないわけじゃない。本人いわく器用貧乏だって言ってるけど、闘える人が一人いるだけで話は大分違ってくる。
まして要ともいえる後衛はマリ一人で、この状況ならマリを先に潰した方が後は消耗戦へ持ち込める。そう考えると防ぎやすいからあえて囮にさせちゃってて申し訳ない。もちろんそれを見越してる人は逆に私達二人を潰してから、と考えるから気が抜けない。
怒涛。まさにその言葉がふさわしい攻撃の嵐。一部観戦者となっている冒険者から、その様子は乱舞だったと後に教えてもらうほどだったらしい。
一通りの相手をし終わる頃には、昼をとうに過ぎまもなく夕方という空模様だった。ほぼ一日中対戦してたことになる上に、昼ご飯……ともいえない軽食しか食べてないからお腹がペッコペコだ。もう今なら魔獣肉の塩焼き──美味しいともマズイとも言えないやつ。値段が安いので新人冒険者が受ける食事の通過儀礼と称されてる料理──でも構わないから胃に入れたい。
ふはあ、とその場に気を抜いた息を一つ吐くと、アランやマリも各々体を伸ばしたり楽な格好をしたりして気を抜いていた。連戦に連戦を重ねたもんね、そりゃ誰だってそうなるか。見渡せば周りの人皆同じような様子だしね。
「……お前ら、いつ旅立つんだ?」
近くにいた冒険者の一人がその質問をした瞬間、周りの空気が変わる。そば耳立ててるのを承知で、アランが代表して答えてくれた。
「早ければ二日、遅くても十日以内にはここを出るつもりだよ」
「そうか。お前らがきて、俺達の意識も随分変わったよ。新人向けの依頼だからって避けてたらそいつらに熟練顔負けのことされたんだからな」
「そんなことはないよ。僕らは一人でやってるわけじゃない。三人だからやれてこれたんだ」
「……いいチームだな。大事にしろよ」
「言われなくても」
二人が拳を合わせると、周りがやんややんやと騒ぎ出した。話を合わせると「私達の門出を祝う宴会するぞ!」とのこと。要するに人をダシにして飲みたいだけでしょうに。
それでも嬉しいと笑ってしまうのは、私もこのギルドで受け入れられていたと思うから、なのかな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
56
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる