女剣士の道は険しい?

星野 夜空

文字の大きさ
4 / 81
プロローグ(幼少時代)

さあ、都へ

しおりを挟む
 それから更に月日が経った。前世でいう中学三年生にあたる年、無事に入学試験を突破した私は、神父様と両親、それからレオを始めとした同い年の友人達に見送られようとしていた。冬空の下、それも早朝というより夜明け前だというのに。

「皆、わざわざありがとう」
「そんなの気にしなくて良いさ。俺達がしたいと思ったことをしてるだけなんだから」

 レオの言葉にうんうんと頷く皆。彼の成長を感じる口調や見た目の変化は、ここにいる友人全員に当てはまる。やっかみやら何やら言われるものの、最後には風邪引くなとか、道中気をつけろとか、暖かく優しい言葉が降り注いだ。こうした会話もしばらくは出来なくなると思うと潤みそうになる涙をグッとこらえ、十五年間育ててくれた両親へ向き直った。

「お父さん、お母さん、今までありがとう。向こうに着いたら手紙、ちゃんと書くから」
「ええ、楽しみにしているわ。無理だけはしないようにね」
「体には、くれぐれも気をつけろよ」

 いつかと同じように抱きしめあう。あの頃より身長も増えて、小柄なお母さんなんかすっぽり埋まってしまいそうなほど。今生の別れではないけど、学園を卒業した後は、一般人でも国の預かりになることが多い。学生のうちでも里帰りできないことがあると聞くから、今のうちにと言わんばかりに、心と体に刻み込むように、私達は長い間そうしていた。
 最後に向き合ったのは神父様。あの儀式から十年以上経ったというのに、昔と変わらない容姿の謎をいつか突き止めると誓った彼は、いつもと同じように柔らかな微笑みをたたえていた。

「魔力とはなんですか? ラナさん」
「己が身に流れる、血液とは別のものです」
「魔法とはなんですか?」
「魔力を練り直接的、間接的に放出する現象のことです」
「その二つを使うにあたって、気をつけるべきことは?」
「使うべき時と使わざる時を見極めること。使うべき時に躊躇しないこと。自身の命を守り、周りを助けることです」

 初歩の初歩、習い始めた日に教えられたことをそらんじると、笑みを深くして頷く。よく出来ましたと答える時の顔と一緒だった。

「今、貴方が答えたことを決して忘れないように。忘れた瞬間から、魔法は貴方を蝕む悪魔となります」

 強大な力は自我を狂わせる。そうでなくてもふとしたことでその力を使うと、取り返しのつかないことだって起こりうる。だからこそ、己を律し、常に制御できるようにしていないといけない。神父様の口癖だ。

「肝に命じて忘れません。もし忘れたら、叱りにきてください」

 一度だけレオと喧嘩して、魔力を暴走させた時のように。言葉にしなかったそれに答えることはせず、ただ静かに笑う神父様。それだけで私は十分だった。
 そうこうしている間に、朝日が昇ろうとする時間になっていたらしい。薄暗かった空が徐々に明るくなってきていた。
 きっと、どれだけ言葉を重ねても足りないし、触れ合っていれば離れがたくなる。王都までの足として両親が用意してくれた馬へ、いつまでもいたい気持ちを振り切るために跨った。

「……行ってきます!」
『行ってらっしゃい』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

悪役令嬢は断罪の舞台で笑う

由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。 しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。 聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。 だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。 追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。 冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。 そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。 暴かれる真実。崩壊する虚構。 “悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...