女剣士の道は険しい?

星野 夜空

文字の大きさ
5 / 81
本編

お約束の出来事?

しおりを挟む
 入学式だというこの日、目の前にある重厚な扉を開けなければならないと思うと憂鬱だった。
 事の発端は昼間の入学式の途中。体調が悪かったのだろう子が目の前で倒れ、騒然とし始めた時、先生が駆け寄る前におんぶして保健室へ連れていった。今思うと薄情でも先生に任せれば良かったことに気づいた。これは失敗した。
 だけど、それだけならここ、理事長室へ呼ばれるなんてことはない。
 あの時私は、魔法を使った。身体強化をして病人を迅速に運びつつ、身体補助を使ってその子がずれ落ちないようにした。街で怪我をした子を運ぶ時やっていたことを、学園でもうっかりしてしまったのだ。
 女性が攻撃系統に属する魔法を使えることは稀中の稀だということを忘れてね。故郷じゃ当たり前に受け入れてもらっていたから、本当に抜けていた。
 深呼吸して腹をくくると、二、三度ノックした。中からはついさっきまで聞いていた、壮年の男声。失礼します、と同時に勢いをつけて開けた。
 で、入ったは良いものの、早数分。予想通り理事長が座っていたのは良かったけど、その後何も話さない。私から何か言うのも失礼なことだし、さて、どうしたものか。

「先程はどうもありがとう。すまないが、名前を教えてもらっても良いかな?」
「あ、え、と、はい。ラナと申します。咄嗟にしたことですが、お役に立てたようで」

 唐突にその沈黙を破られてびっくりした。どもってしまったのは許してほしい。

「ラナ君は、足が速かったり、バランス能力に長けていたりするのかい?」
「い、いえ、そんなことは……」
「ふむ。だとするとあの時感じた魔法発生は、君のもので間違いないと認めるね?」
「……はい。祭典中に使用してしまい、申し訳ありません」
「ああいや、あれは仕方ない。誰もが非難しないよ」

 行事中に魔法を使うなんて、精々祭りの際に起こる騒ぎや、急病者の発生時に発動するものくらいだ。今回のように、常に悪意がない使い方をされるわけじゃない。
 その為暗黙の了解ルールとして、かしこまった場所において魔法を使用することは非常によろしくないとされている。たまたま事情が事情で許されたけど、本来責任者(この場合先生)に頼れば良かったわけで。つくづく判断ミスしたことが悔やまれる。

「だが、本題はそこにないということを分かっているだろう?」

 思わず、ですよねーと声が漏れそうになった。ええ勿論、心当たりは別にありますよ。

「単刀直入に言う。君の魔法系統はどれにあたるんだ?」
「……攻撃、及びそれにあたる補助系統だと告げられております」

 誤魔化したところで意味はないだろう。そのメリットも特にない。むしろデメリットしか浮かばない。なら、素直に話した方が良い。
 理事長はというと、案の定、難しい顔をして唸り始めた。おそらく学園初、下手をしたらこの国初となる存在が私なのだ。その扱いをどうしたものかと思っているのかもしれない。

「君が正直に明かしてくれたから、私も言おう。攻撃系統に適性がある者は心身に問題がある場合を除いて、軍に属することとなる。しかしこの国では、女性で攻撃系統に適性がある者など君が初めてだ」
「つまり、その為の設備は勿論のこと、制度もないということで合っていますか?」
「あぁ、そういうことだよ」

 君は聡い子だ、と静かに笑うその目に、一種の哀れみが見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...