女剣士の道は険しい?

星野 夜空

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本編

模擬実践.1

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 昨日案内された訓練所は、こうして見ると寒々しいと感じるほど広い。クラス一つ分の人数が暴れ回るから、広めに作るのは分かってるけど、それにしたってこれは広い。体育館二個ほどの面積があるんじゃないかな。

「昨日も話したが、今日は組んでもらったチームで前半、後半と分けた総当たり戦を行う! 特に成績に反映されるわけじゃないが、チームメイトの動き方を知るにはこれが一番だ、しっかりやっていけ!」

 声を張り上げた訳でもないのに先生の声は響き、空間を揺らす。窓や壁は勿論、私達の体さえ。何か魔法を使った気配もない。まるで声自体に意思が宿っているかのようだ。
 模擬戦とはいえ、当たれば死ぬことだってある。その場合は先生から止めが入るなり防御魔法で壁を作るなりしてくれるとのこと。その代わり本気で動け、手抜きは許さないと言われた。どう考えても脅しだよねこれ。
 そうは言っても、どんな動き方をしてどんな魔法スタイルなのか知るには、バーチャルな物がないこの世界では対人戦が最も有効的手段だ。先生が言うことも間違いじゃないのが憎たらしい。

「いよいよですね! ワクワクします!」
「僕も、どこまで通用するのか心躍るよ」

 チームメイトの二人はというとずっとこんな感じだ。アランは分かるけど、マリまで好戦的なのは意外だった。体を動かすことが嬉しいのだという。浮かれているのは不安で、怪我だけはしないようにと口酸っぱく言ってる気がする。
 かくいう私はというと、模擬戦で使う木刀を時間ギリギリまで、手に馴染ませるように動かしてきた。目立たないようにはしたけど、どこかで見ていた人もいたらしく、ヒソヒソと私を見て話してる。
 あんまり良い気分はしないと思っていると、前半に戦うチーム番号が次々と呼ばれる。私達も呼ばれて、前に進み出た。

「それでは、始め!」

 先手必勝とばかりに動き出すチームもあれば、様子見するように防御へ徹するチームもある。私達はいうと開始同時に壁際で静観を決めた。
 途端後半に戦う人達からブーイングが起きるけど、これが私達の作戦だった。マリの体力がどれほどなのか分からない今、交戦はなるべく避けたい。無理をさせて後衛が破綻するのは、戦闘ではまず負けになる。
 休み休みならやれると本人は言うけど、アランに後で確認すればそれは危険だろうと助言を受けた。私も同意見のため、振り分けが行われるだろう序盤は温存することに決めた。
 結果、先生にも事前説明というなの根回しをしたから分かっているという風に頷き、何も知らない他チームは叩き潰すのは最後だと今は戦いに集中している。外からの罵声は相変わらずだけど、マリの体の弱さを知っている人もいるのか、何やらそれとは別の視線を受けている気がしてきた。

「そろそろ、良いかな」

 口の中で呟いた言葉は打撃やら爆発やらで聞こえづらかったかと思ったが、幸い聴力の強化をしていた二人には分かったようだ。並ぶように立っていた顔を見ると同時に頷かれた。
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