女剣士の道は険しい?

星野 夜空

文字の大きさ
11 / 81
本編

模擬実践.2

しおりを挟む
 元々の参加チームが5つしかないこともあって、戦況は私達含め、既に3つになった。その2つはタッグを組み、私達を潰してから決勝? にするつもりなのか、6人でじわりじわりと距離を縮めてきていた。

「予想通りだね。いける? ラナ」
「いつでも」

 この展開は、正直アランが期待していたものだ。私が対一でしか今まで訓練してこなかったことを告げると、折角のこの機会だから対集団をしてみようという運びになった。
 本当言って、それは危険なことだと分かっている。けれど、戦場ではしんがりを務める時だってある。大体そういう時は少数で多数を相手にすることになるから、確かに慣れておくに越したことはない。怪我してもすぐに治るし、危険性も先生が排除してくれる。
 お膳立てされてるのなら、使わない手はない。そう断言されれば反対できるはずもなかった。
 ぶっちゃけ、緊張で今手の汗が沢山出てる自覚はあるけどね。

「カウントします。3、2」

 マリの掛け声が1になった瞬間、限界まで強化した脚を使って相手の前線に当たるだろう人へ向かって斬りつけた。と同時に、何かに阻まれる。おそらくこの手応えが、先生の出した壁だろう。
 今の一発が死亡判定を受けたのか、先生は退場、リタイアしなさいと告げた。
 向こうがそれに固まっているのを見逃さず、後衛二人も回し斬りの要領で斬る。これで1チーム潰した計算だ。出だしとしては順調だろう。

「舐めるなよ、ファイ!」

 後ろから聞こえた声と魔法発生。咄嗟に木刀で受け止めるものの、この短時間でも少々魔力を練り込んだのか、中々重たい。

「アランからラナへ、腕の身体補助!」

 唱えるアランの魔法が私へきたのが感覚として分かる。これならいけるかと打たれたそれを両断し、敵にあたる3人を見れば前衛に強化や補助を掛け合わせていた。

「アラン! マリ! 気をつけて!」

 急いで二人の近くへいき、守りの体勢へ移る。何が起きるか分からないためか、アランは防御壁にあたる展開魔法の詠唱を始めていた。マリはその詠唱稼ぎに、相手の補助魔法を阻害する付与阻害をかけていた。顔色は、傍目から見ると悪くないように見える。
 私も直接攻撃に備え、全身の強化を図る。自身にかけるなら無詠唱で済む。なるべく練って練って、練りまくってからかけると、ギシミシと体の中から音が聞こえた気がした。

「っせい!」
「展開、ホワイトウォール!」

 ガチンっ!! と金属がぶつかり合ったような音。おそらく魔力を込められた、強化された木刀を振って、その風圧での攻撃を展開魔法が反応した為だ。当の本人はというと、さっきの私がしたように素早くこちらへ来ていた。
 予想はしていたけど、思った以上に早い。後衛から付与される大きさに改めて驚いた。振るってきた木刀をギリギリ受け止められたのが奇跡のようだ。
 そのまましばらく膠着こうちゃくしていたが、先生から止めの掛け声がかかり、私達は魔法を解いた。

「そこまで、双方引き分けとする。後半のチームは速やかに準備するように!」

 あ、良かった無事に終わった。思わずその場で膝をつくように倒れると、後ろから駆け寄ってきた二人から満面の笑みで何か言われるけど聞こえない。相手から何か弊害でも受けたのかな?
 差し出された手を掴もうとして、それは宙を切った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...