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本編
剣舞祭(前日.1)
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いよいよ明日が祭本番、という時に問題が発生した。
明日の本番に向けて行う今日の練習は、衣装や小道具をつけて行うことになっていた。その為倉庫にしまっていたのを取り出しに数人の生徒と先生達で来たら、ほんの少し蓋が開いている箱があって、不審に思ってその場で開けたら全員絶句した。
直すにはとてもじゃないけど、間に合わないくらいボロボロな衣装がそこにあった。幸い被害は私の物だけで済んだけど、私以上に先生や講師が顔を青ざめてる。
犯人は知らずにやったのだろうけど、この衣装は新しく作られたものじゃなくて、先輩達が代々着ていたものの一つ。それも、これは後で先生が教えてくれたのだけど、壊された装飾品の一部は現在だととても高価な技術となってしまった、伝統技術製品と呼ばれるものがあって、これも今から手配するとなると最短で数ヶ月かかる。
中々、嫌がらせにしては的確なものだと思う。
「これは、どうしたものか」
「辞めることは、出来ませんかね」
「斬り結ぶ演舞があるからな。相手の子も辞めるように君は言えるか?」
グッと言葉に詰まる。真剣を持たされながら稽古をするうちに、問題集団はいつの間にかしっかりとやるようになって、それまで真面目にやっていた人達も今まで以上に頑張るようになった。
その努力を、その人が悪いわけじゃないのに無駄にするなんてしたくなかった。
私が辞め、相方も辞退することが一番手っ取り早い解決方法だと先生達も理解してる分、どうしようもないと苦い吐息を吐き出した。
せめて修復魔法がこの世界にあれば、まだ何とかなったのに。そこまで浮かんで、ふとした疑問を先生に聞いてみた。
「あの、治癒魔法は物に対しても効くのですか?」
は? と呆けた声を出した後、唸るように言葉を続けた。
「前例がないから分からないな。出来るのかもしれないが、人間や動物みたいに中から直せるわけじゃない」
ということは、当て布と同じように外から塞ぐようにすればいけるかもしれない。まだ日は高いし、お店は開いてるはずだ。
周りにいる皆に衣装と同じ色、同じ生地を用意してほしいと頼むと、凄い怖い顔で頷いて部屋を出ていった。自分がされたわけでもないだろうに、その怒気は迫力があった。
っと、あてられて動けなくなったのも数秒。すぐに教室へ走った。今日一日準備に費やしてるから、全員いるはず。
慌ててドアを開けると、一斉に顔が私へ向けられる。中にはクスクスと笑い声が聞こえるけど、今は気にするだけ無駄。というか、時間が足りない。
「マリ! お願い、ちょっときて!」
「は、はい?」
きょとんと状況が分からないだろうマリへ、手短に説明すると急いで行きましょう! と私の手を引いて教室を出てくれた。布を切ることも考えて、その手にはハサミが握られてる。
はたから見るとこの光景は怖いだろうなと思っていると、いつの間にいたのかアランもついてきていた。
「多少になるけど、僕も治癒魔法が使えなくはないからね。出来ることがあればするよ」
「本当!? ありがとう、助かる!」
いないよりいた方が良いし、私は治癒が使えないから二人いるならその分出来ることも増える。マリの負担も減らせるだろうし、本当にありがたい。
戻った倉庫には、まだ先生達は戻ってなかったけど幾人かいて、その手に布を持っていた。
「先生は小道具に使ってた材料を買いに行ってるよ。時間がかかるからやるならやれだって」
「そっか。うん、ありがとう」
ポケットの中にあったハンカチを破くと、ハサミで小さめに切った布を当てる。意図を察したのか、マリはその上に手を当て、聞いたことのない詠唱をした。
明日の本番に向けて行う今日の練習は、衣装や小道具をつけて行うことになっていた。その為倉庫にしまっていたのを取り出しに数人の生徒と先生達で来たら、ほんの少し蓋が開いている箱があって、不審に思ってその場で開けたら全員絶句した。
直すにはとてもじゃないけど、間に合わないくらいボロボロな衣装がそこにあった。幸い被害は私の物だけで済んだけど、私以上に先生や講師が顔を青ざめてる。
犯人は知らずにやったのだろうけど、この衣装は新しく作られたものじゃなくて、先輩達が代々着ていたものの一つ。それも、これは後で先生が教えてくれたのだけど、壊された装飾品の一部は現在だととても高価な技術となってしまった、伝統技術製品と呼ばれるものがあって、これも今から手配するとなると最短で数ヶ月かかる。
中々、嫌がらせにしては的確なものだと思う。
「これは、どうしたものか」
「辞めることは、出来ませんかね」
「斬り結ぶ演舞があるからな。相手の子も辞めるように君は言えるか?」
グッと言葉に詰まる。真剣を持たされながら稽古をするうちに、問題集団はいつの間にかしっかりとやるようになって、それまで真面目にやっていた人達も今まで以上に頑張るようになった。
その努力を、その人が悪いわけじゃないのに無駄にするなんてしたくなかった。
私が辞め、相方も辞退することが一番手っ取り早い解決方法だと先生達も理解してる分、どうしようもないと苦い吐息を吐き出した。
せめて修復魔法がこの世界にあれば、まだ何とかなったのに。そこまで浮かんで、ふとした疑問を先生に聞いてみた。
「あの、治癒魔法は物に対しても効くのですか?」
は? と呆けた声を出した後、唸るように言葉を続けた。
「前例がないから分からないな。出来るのかもしれないが、人間や動物みたいに中から直せるわけじゃない」
ということは、当て布と同じように外から塞ぐようにすればいけるかもしれない。まだ日は高いし、お店は開いてるはずだ。
周りにいる皆に衣装と同じ色、同じ生地を用意してほしいと頼むと、凄い怖い顔で頷いて部屋を出ていった。自分がされたわけでもないだろうに、その怒気は迫力があった。
っと、あてられて動けなくなったのも数秒。すぐに教室へ走った。今日一日準備に費やしてるから、全員いるはず。
慌ててドアを開けると、一斉に顔が私へ向けられる。中にはクスクスと笑い声が聞こえるけど、今は気にするだけ無駄。というか、時間が足りない。
「マリ! お願い、ちょっときて!」
「は、はい?」
きょとんと状況が分からないだろうマリへ、手短に説明すると急いで行きましょう! と私の手を引いて教室を出てくれた。布を切ることも考えて、その手にはハサミが握られてる。
はたから見るとこの光景は怖いだろうなと思っていると、いつの間にいたのかアランもついてきていた。
「多少になるけど、僕も治癒魔法が使えなくはないからね。出来ることがあればするよ」
「本当!? ありがとう、助かる!」
いないよりいた方が良いし、私は治癒が使えないから二人いるならその分出来ることも増える。マリの負担も減らせるだろうし、本当にありがたい。
戻った倉庫には、まだ先生達は戻ってなかったけど幾人かいて、その手に布を持っていた。
「先生は小道具に使ってた材料を買いに行ってるよ。時間がかかるからやるならやれだって」
「そっか。うん、ありがとう」
ポケットの中にあったハンカチを破くと、ハサミで小さめに切った布を当てる。意図を察したのか、マリはその上に手を当て、聞いたことのない詠唱をした。
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