女剣士の道は険しい？

本編

勉強させて……

　ふう。現実逃避はここまでにしようかな。さっきからこっちへの視線が剣呑となってきてるし、これ以上は見逃してもらえないか。

「ファーさん。申し訳ないけど、お喋りしたいなら明日にしてもらえる？　気が散って勉強に集中できないの」
「そう？　それだけの集中力しかないなら自分の部屋で勉強したら？」

　イラっとしたのは私だけじゃないはず。それだとサボるからここにいるということをこの子は理解したら良い。
　本人に悪気がないように見えるのがまた何とも言えない。ある種正論でもあるから指摘しようにもできないというのも一因だ。
　アランも凄い人に親しまれてるね。同情する。

「……そのくらいにしてもらえないかな。邪魔なんだよね、君」

　それまでずっとされるがままだったアランは、未だ目隠ししている手をやんわりと外し、ファーへ振り向いた。顔は見えないけど横に座ってるマリの様子と声で分かる。
　めっちゃ怒ってるぞこれ。普段の様子に騙されそうになるけど、こういう人ほど怒らせると怖いんだよね。冷静に伝えてくることがちくちくと刺すの。
　ここじゃ場所が悪い、と図書館から出る二人を見送りながらそう思った。悪いのは空気を読まなかったファーなのかもしれないけど、あれって日本人特有のものらしいし、どうなんだろ。
　とりあえず、ファーに合掌して勉強の続きをすることにした。どうせすぐ戻ってくるでしょ。

「それにしても、ここんとこアランへのアプローチする女の子多いね。何かあるの？」
「ええ、まあ。あるといえば、あるのですが……」

　どう言えば良いのか分からないと顔で伝えてくるマリにそっち方面か、と理解する。身分バレはご法度だけど、マリみたいに口調から何となく分かってしまうケースだってままある。いきなり変えるなんて出来ないし、学園生活のためだけに崩すなんて早々いないもの。
　何が言いたいかというと、最近の事情はアランの家、もしくはその身分に関することだから説明しにくいんだろうな。

「まあ、良いんだけど。こうも勉強中断させられるなら、ちょっと迷惑だよね」
「そう、ですね。周りの皆さんもお困りになりますから……だからと言って、どうにかなるものでもないのがまた困りものです」

　ほぼ同時にため息をついて、切り替えと言わんばかりにそこから集中する。赤点を取ってしまうと休みが半分消えるって聞いたから、絶対回避してやる！　って気持ちで。
　あー、でもどうしたら陣の見分けつけられるようになるかなぁ……。