女剣士の道は険しい?

星野 夜空

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本編

いざ行かん

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 たかが誕生日パーティと思っていたけど、お金持ちかつ身分のある者が行うそれを、私は改めて感じた。
 うん、場違い。私何でここにいるの?
 隣にいるマリが行きたいというから来たけど、やっぱり元から来なければ良かった。キラキラしたこの空間、超気まずい。それに、元の世界でも絹のドレスなんて着たことなかったから、恐れ多い気持ちが強い。もう帰りたい。
 あ、主役が私達の到着に気がついてこっちに向かって来た。逃げたいのに逃げたら後々何されるか分からないからいるこの気持ち、誰か名前を教えてください。切実に。

「マリ、久しぶり」
「アランも。もうすぐ学校で会えますけどね」
「そうだね。……で、ラナ? 君はどうしてそんな顔になってるの?」

 そんな顔ってどんな顔。お祝い事に顔をしかめるほど腐ってはいないけど。もしかして眉間に皺がよってた?

「ま、まあ! そんなことより! アラン、誕生日おめでとう!」
「おめでとうございます。今日この日が良い日となりますように」
「ありがとう二人とも。今日はゆっくり楽しんでよ」

 和やかに会話をしている時、やはりというかなんというか。ものすっごい早さで寄ってくる夫婦がいた。
 多分、というか絶対あの二人は。

「マリ! 貴方一体どこにいたのですか、心配しましたよ!」
「本当に、無事で良かった。アラン様への挨拶はすんだろ? もう学校が始まるし、うちへ帰っておいで」

 予想的中、マリのご両親だった。話に聞く以上に過保護な様子が見られるから、本人も自立させてと訴えるわけだ。納得する。
 それにしても、自分の住む街を治安が良くないような印象を持たれるって、あんまりいい気持ちはしないな。そりゃ王都に比べたらよろしくはないけどさ。代わりに大きな事件という事件もないんだよ?
 アランも自分がオマケ扱いされたからか、それとも楽しく話していたのを邪魔されたからか、何となく機嫌が悪そう。
 瞬時になくしてにっこりと笑ったのがいい証拠。チクチクと言葉で説明する合図だ。

「お待ちください、トラクル夫妻。子どもとはいえ、マリも社交界へ出るようになる年頃。本人の意向を聞いた方がいいと思いますが」
「いいえ、聞かずとも分かりますわ。私達は親なので。遠い街まで行き、過ごし、今日などパーティですよ? 疲れて早く帰りたいに決まっておりますわ」
「ですが、親子とて分かり合えぬこともあります。一応という言葉もありますから、聞いてから判断した方が良いのでは?」
「アラン様のお心遣い、感謝致します。しかしながらいつも、彼女は私達がすることに嫌がることはなかった。それはつまり、私達がこの子にとって正しいことをしたということでしょう?」

 あ。やばい。切れる。
 私が。

「ねえマリ。あんな風に貴方のことを「お人形」としか思えない親、何ていうか知ってる? 私の地域ではね、毒親っていうんだよ」

 何事か言おうとしていたアランも、悲しそうな雰囲気を出して俯いていたマリも、今の今まで談笑しつつこっちを伺っていた周りも、一瞬だけざわめきを消して私を見た気がした。

「な、な、何を申すのですか貴方は! 侮辱も良いとこですよ!」

 まあすぐに甲高い声に静寂は破られたけど。
 あー。嫌なこと思い出しちゃったじゃん。最悪。
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