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本編
親の本音
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長話になるだろうと思い、ソファで寛いで話すことにした。私とマリは並んで、アランはその正面、私達の間にあたる場所に座って、真ん中のテーブルにはいつの間にかお茶が用意されてる。
これも魔法かと一瞬思ったけど、そんな便利なものは、少なくともこの国にはない。ふと見ればヤコさんがテキパキと音を立てず動いていた。かと思えば壁の花となって気配がなくなる。これか! とカラクリは分かったけど、その能力の高さに驚いた。
この人が敵として現れたら……とか考えちゃうのは流石に末期というか、勉強しすぎということで。うん。そういうことにしとこう。
場の用意が出来たところで、おもむろにアランの口が動いた。
「さて、まず二人が出てからだよね。僕と夫妻も広間を出たからその辺りは分からないけど、パーティ自体は問題なく続いたらしいから心配は無用だよ」
そもそも、マリとアランの両親は既知であるから、今回の半分家出のようなマリの状態をアランから聞いて、騒ぎが起きることも覚悟していたらしい。だからお咎めはないだろう、とのことで少し安心した。
隣で息を吐くマリも、同じ心境なのかもしれない。
「それで、部屋を移して二人と話したんだけど。……マリ、君にとって酷なことを言う。聞きたくなかったら部屋を出てほしい」
「いえ、大丈夫です。……聞かなければ、ならないことですから」
隣にいるからこそ、それが強がりだと分かる。手が震えてるから、怖いだろうに。聞く義務があるからと、残る決意を即決めたマリは強い。
私もいると覚えていてほしくて手へそっと触れる。震えは、気のせいだと思うけれどほんの少し治ったように感じた。
様子を見て大丈夫と判断したのか、アランは続きを述べ始めた。
「二人に今まで、どうして僕の言葉を聞き入れず、友人のラナにあそこまで言われないと気づかなかったのか聞いたんだ。自分達の行動等が、他者にどう見られ、マリを悲しませていたのか。傷つけていたのか分からなかったのかと」
「……両親は、何と?」
『気づいていなかった、といえば嘘になりましょう。薄々私達も感じておりましたから。けれど歳も歳、子どもは望めないと思った頃に授かり、問題なく成長していくマリを見て、心底嬉しかった。そして同時に、清らかでいてほしかった。私達の理想を、そのまま崩してほしくなかった。……綺麗な物で、囲っていたかったんです』
それは紛れもなく本心。子どもにはずっと綺麗な心を持ち、汚れてほしくないという気持ちがあるのだろう。だから現実的な学園に入れたくなかったのだろう。
人が多くなればなるほど、人の良い面も増える反面、悪い面を見る機会も増えるのだから。
結果的に、それはマリの自由を、意思を奪うことになってしまった。けれどマリの親からしたら、親の理想を乗せたものだったのかもしれない。
……私には理解できないものだけど、子どもが出来たら分かるのかな。
「本当は、家族の問題だから介入しちゃいけないと分かってる。その上で、あそこまで言われないと分からないのかって思ったら、今また三人が暮らすことは良いことじゃないと僕は思うんだ」
これも魔法かと一瞬思ったけど、そんな便利なものは、少なくともこの国にはない。ふと見ればヤコさんがテキパキと音を立てず動いていた。かと思えば壁の花となって気配がなくなる。これか! とカラクリは分かったけど、その能力の高さに驚いた。
この人が敵として現れたら……とか考えちゃうのは流石に末期というか、勉強しすぎということで。うん。そういうことにしとこう。
場の用意が出来たところで、おもむろにアランの口が動いた。
「さて、まず二人が出てからだよね。僕と夫妻も広間を出たからその辺りは分からないけど、パーティ自体は問題なく続いたらしいから心配は無用だよ」
そもそも、マリとアランの両親は既知であるから、今回の半分家出のようなマリの状態をアランから聞いて、騒ぎが起きることも覚悟していたらしい。だからお咎めはないだろう、とのことで少し安心した。
隣で息を吐くマリも、同じ心境なのかもしれない。
「それで、部屋を移して二人と話したんだけど。……マリ、君にとって酷なことを言う。聞きたくなかったら部屋を出てほしい」
「いえ、大丈夫です。……聞かなければ、ならないことですから」
隣にいるからこそ、それが強がりだと分かる。手が震えてるから、怖いだろうに。聞く義務があるからと、残る決意を即決めたマリは強い。
私もいると覚えていてほしくて手へそっと触れる。震えは、気のせいだと思うけれどほんの少し治ったように感じた。
様子を見て大丈夫と判断したのか、アランは続きを述べ始めた。
「二人に今まで、どうして僕の言葉を聞き入れず、友人のラナにあそこまで言われないと気づかなかったのか聞いたんだ。自分達の行動等が、他者にどう見られ、マリを悲しませていたのか。傷つけていたのか分からなかったのかと」
「……両親は、何と?」
『気づいていなかった、といえば嘘になりましょう。薄々私達も感じておりましたから。けれど歳も歳、子どもは望めないと思った頃に授かり、問題なく成長していくマリを見て、心底嬉しかった。そして同時に、清らかでいてほしかった。私達の理想を、そのまま崩してほしくなかった。……綺麗な物で、囲っていたかったんです』
それは紛れもなく本心。子どもにはずっと綺麗な心を持ち、汚れてほしくないという気持ちがあるのだろう。だから現実的な学園に入れたくなかったのだろう。
人が多くなればなるほど、人の良い面も増える反面、悪い面を見る機会も増えるのだから。
結果的に、それはマリの自由を、意思を奪うことになってしまった。けれどマリの親からしたら、親の理想を乗せたものだったのかもしれない。
……私には理解できないものだけど、子どもが出来たら分かるのかな。
「本当は、家族の問題だから介入しちゃいけないと分かってる。その上で、あそこまで言われないと分からないのかって思ったら、今また三人が暮らすことは良いことじゃないと僕は思うんだ」
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