女剣士の道は険しい?

星野 夜空

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本編

そろそろやつがくる

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 なんやかんやで二人はうまくいったらしい。ドーレなんか、その夜浮ついた様子に皆からかっていた、と別の人経由で聞いた。これで厄介ごとも今年中に片付いた、よかったよかった。
 とならないのが学び舎にいる身の辛いところ。そろそろ例の時期だ。
 何がって?
 それじゃ聞こう。長期休みに入る前には何がある?
 そう、テストである。あの地獄のテスト勉強がまた始まるのだ。
 本当勘弁してほしい。年に一回で良いじゃん、何で時々やるのさ。よってたかって難しいしさ! ……いや、一回しかやらないってなったら範囲が広すぎて、それはそれで大変なことになりそうだから嫌だけど。

「わーかーるーかぁぁ!」

 自室で頭を搔き毟りつつ叫ぶ。変人だといわれようがこの部屋は今私しかいないんだから好きにしていいはずだ。目の前にあるノートにやつ当たらないだけマシだと思う。
 ていうか何で陣なんか習う必要あるのよ。長期的封印や保存をかけるためだとか危険魔獣ターナーをはじめとした魔獣と契約するためとか分かるけどさ、正直どっちも縁がない(予定の)軍所属だよ? 危険魔獣なんてほぼ出てこなくて、珍しさでいうなら神獣とか聖獣並みだよ? てか使い魔興味あるけど、生き物飼うなんてことしたくないよ。たとえ国命令でも。
 なんて現実逃避しても、鎮座している事実から逃げられるわけない。でも集中力も切れてしまった。
 お茶でも飲むかと席を立つと、誰かが部屋をノックしてきた。
 私の部屋に訪れてくれる人は、現在二人。リンとマリだけ。ということは1/2の確率。
 加えて今、テスト前であることを考えれば……。

「こんにちは、ラナ。実は少し、教えてほしいことがあって……今、大丈夫ですか?」

 うん、ですよね。
 予想通りの相手を部屋に招き入れて、当初の目的であるお茶を二人分用意した。

「んで、分からないことって? マリ、苦手科目なかったような気がするんだけど」

 というか私に聞くようなものはアランに聞けば良いと思うんだけど。教え方上手いし。

「えーと。その。攻撃系統についてなんです。アランに先に聞いたら、それはラナじゃないと分からないんじゃないかって、言われまして」

 うん? どういうことだろう。攻撃系統わたしにしか分からないこと? そんな特別な何かってあったっけ?
 心当たりがなくて首を傾げていると、続けられた言葉に納得した。

「攻撃系統に対して、治癒系統が医療魔法を行う際の注意事項を調べてきなさい、と先生からレポートを出されたのですが……。攻撃系統を含めた、どの本を探してもそんな記述はなくて、困ってるのです」
「あー……なるほどねー……」

 先生もそれは意地悪し過ぎじゃないかな。いや、大事なことではあるけど。調べても出てこないはずだよ。
 それは、当たり前なことが当たり前でないとなった時でしかならないものだから。

「戦争や内乱といった場に行くこととなった場合、自己防衛を心身含めて確立すること。また、防御系統に適性がない者が医療魔法を行う際、万一を考えて手足を固定すること。……これじゃないかな」
「前半の内容は分かるのですが……何故固定するのですか?」
「倒れて治療された。でも、治療された場所が味方であるとは限らない。だから最悪、状況判断をする前に斬りかかってくる可能性があるから」

 そんなことになってほしくないけど、ね。念のためってやつ。保険は大事。

「それでさ、私からも聞いて良い? 陣についてなんだけど」
「……今回の範囲は狭く深くなのでそんなに難しくはないと思うのですが……」

 うぐ。
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