61 / 81
本編
そろそろやつがくる
しおりを挟む
なんやかんやで二人はうまくいったらしい。ドーレなんか、その夜浮ついた様子に皆からかっていた、と別の人経由で聞いた。これで厄介ごとも今年中に片付いた、よかったよかった。
とならないのが学び舎にいる身の辛いところ。そろそろ例の時期だ。
何がって?
それじゃ聞こう。長期休みに入る前には何がある?
そう、テストである。あの地獄のテスト勉強がまた始まるのだ。
本当勘弁してほしい。年に一回で良いじゃん、何で時々やるのさ。よってたかって難しいしさ! ……いや、一回しかやらないってなったら範囲が広すぎて、それはそれで大変なことになりそうだから嫌だけど。
「わーかーるーかぁぁ!」
自室で頭を搔き毟りつつ叫ぶ。変人だといわれようがこの部屋は今私しかいないんだから好きにしていいはずだ。目の前にあるノートにやつ当たらないだけマシだと思う。
ていうか何で陣なんか習う必要あるのよ。長期的封印や保存をかけるためだとか危険魔獣をはじめとした魔獣と契約するためとか分かるけどさ、正直どっちも縁がない(予定の)軍所属だよ? 危険魔獣なんてほぼ出てこなくて、珍しさでいうなら神獣とか聖獣並みだよ? てか使い魔興味あるけど、生き物飼うなんて怖いことしたくないよ。たとえ国命令でも。
なんて現実逃避しても、鎮座している事実から逃げられるわけない。でも集中力も切れてしまった。
お茶でも飲むかと席を立つと、誰かが部屋をノックしてきた。
私の部屋に訪れてくれる人は、現在二人。リンとマリだけ。ということは1/2の確率。
加えて今、テスト前であることを考えれば……。
「こんにちは、ラナ。実は少し、教えてほしいことがあって……今、大丈夫ですか?」
うん、ですよね。
予想通りの相手を部屋に招き入れて、当初の目的であるお茶を二人分用意した。
「んで、分からないことって? マリ、苦手科目なかったような気がするんだけど」
というか私に聞くようなものはアランに聞けば良いと思うんだけど。教え方上手いし。
「えーと。その。攻撃系統についてなんです。アランに先に聞いたら、それはラナじゃないと分からないんじゃないかって、言われまして」
うん? どういうことだろう。攻撃系統にしか分からないこと? そんな特別な何かってあったっけ?
心当たりがなくて首を傾げていると、続けられた言葉に納得した。
「攻撃系統に対して、治癒系統が医療魔法を行う際の注意事項を調べてきなさい、と先生からレポートを出されたのですが……。攻撃系統を含めた、どの本を探してもそんな記述はなくて、困ってるのです」
「あー……なるほどねー……」
先生もそれは意地悪し過ぎじゃないかな。いや、大事なことではあるけど。調べても出てこないはずだよ。
それは、当たり前なことが当たり前でないとなった時でしかならないものだから。
「戦争や内乱といった場に行くこととなった場合、自己防衛を心身含めて確立すること。また、防御系統に適性がない者が医療魔法を行う際、万一を考えて手足を固定すること。……これじゃないかな」
「前半の内容は分かるのですが……何故固定するのですか?」
「倒れて治療された。でも、治療された場所が味方であるとは限らない。だから最悪、状況判断をする前に斬りかかってくる可能性があるから」
そんなことになってほしくないけど、ね。念のためってやつ。保険は大事。
「それでさ、私からも聞いて良い? 陣についてなんだけど」
「……今回の範囲は狭く深くなのでそんなに難しくはないと思うのですが……」
うぐ。
とならないのが学び舎にいる身の辛いところ。そろそろ例の時期だ。
何がって?
それじゃ聞こう。長期休みに入る前には何がある?
そう、テストである。あの地獄のテスト勉強がまた始まるのだ。
本当勘弁してほしい。年に一回で良いじゃん、何で時々やるのさ。よってたかって難しいしさ! ……いや、一回しかやらないってなったら範囲が広すぎて、それはそれで大変なことになりそうだから嫌だけど。
「わーかーるーかぁぁ!」
自室で頭を搔き毟りつつ叫ぶ。変人だといわれようがこの部屋は今私しかいないんだから好きにしていいはずだ。目の前にあるノートにやつ当たらないだけマシだと思う。
ていうか何で陣なんか習う必要あるのよ。長期的封印や保存をかけるためだとか危険魔獣をはじめとした魔獣と契約するためとか分かるけどさ、正直どっちも縁がない(予定の)軍所属だよ? 危険魔獣なんてほぼ出てこなくて、珍しさでいうなら神獣とか聖獣並みだよ? てか使い魔興味あるけど、生き物飼うなんて怖いことしたくないよ。たとえ国命令でも。
なんて現実逃避しても、鎮座している事実から逃げられるわけない。でも集中力も切れてしまった。
お茶でも飲むかと席を立つと、誰かが部屋をノックしてきた。
私の部屋に訪れてくれる人は、現在二人。リンとマリだけ。ということは1/2の確率。
加えて今、テスト前であることを考えれば……。
「こんにちは、ラナ。実は少し、教えてほしいことがあって……今、大丈夫ですか?」
うん、ですよね。
予想通りの相手を部屋に招き入れて、当初の目的であるお茶を二人分用意した。
「んで、分からないことって? マリ、苦手科目なかったような気がするんだけど」
というか私に聞くようなものはアランに聞けば良いと思うんだけど。教え方上手いし。
「えーと。その。攻撃系統についてなんです。アランに先に聞いたら、それはラナじゃないと分からないんじゃないかって、言われまして」
うん? どういうことだろう。攻撃系統にしか分からないこと? そんな特別な何かってあったっけ?
心当たりがなくて首を傾げていると、続けられた言葉に納得した。
「攻撃系統に対して、治癒系統が医療魔法を行う際の注意事項を調べてきなさい、と先生からレポートを出されたのですが……。攻撃系統を含めた、どの本を探してもそんな記述はなくて、困ってるのです」
「あー……なるほどねー……」
先生もそれは意地悪し過ぎじゃないかな。いや、大事なことではあるけど。調べても出てこないはずだよ。
それは、当たり前なことが当たり前でないとなった時でしかならないものだから。
「戦争や内乱といった場に行くこととなった場合、自己防衛を心身含めて確立すること。また、防御系統に適性がない者が医療魔法を行う際、万一を考えて手足を固定すること。……これじゃないかな」
「前半の内容は分かるのですが……何故固定するのですか?」
「倒れて治療された。でも、治療された場所が味方であるとは限らない。だから最悪、状況判断をする前に斬りかかってくる可能性があるから」
そんなことになってほしくないけど、ね。念のためってやつ。保険は大事。
「それでさ、私からも聞いて良い? 陣についてなんだけど」
「……今回の範囲は狭く深くなのでそんなに難しくはないと思うのですが……」
うぐ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる