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五杯目:大人のラテ
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その日は地元の大学(とはいえ中々に遠い距離にあるのだが)で何やらあったらしい。幾人かの若者が店へ訪れてきたことでマスターはそのことを知った。夜も頃合いの時間だ、もしかしたら二軒目にと来てくれたのかもしれない。
だとしたらとても嬉しいことだと、バーテンダーでもあるマスターは思った。
そうしてファーストドリンクのオーダーを受けていると、一人の女性が遠慮がちに聞いてきた。
「すみません、コーヒーリキュールを使った飲み物ってありますか?」
「はい、ございますよ」
にこやかにそう告げれば嬉しそうにそれを、と頼まれた。
コーヒーのリキュールがあることは成人している者では今やありふれた事実であり、また常識だろう。それほど「カルーアミルク」というカクテルは皆に受け入れられた。
しかし、だ。その作り方に凝るということはない。いや、なかった。
何故なら牛乳で割るだけで完成してしまうのだから、わざわざ凝る必要もない。精々ステア用にチョコレート・ポッキーを入れたり、牛乳とリキュールが綺麗に層として表れたりすることくらいだろうか。
けれどここ、Bar Leverは違う。あえて凝ってみた。元々「牛乳」を指す意味合いがあるものだ、ならばとシェイクしてみたら、既存のものをシェイカーを使用する目新しさと大人でしか飲めないラテ、そのまま「大人のラテ」とネーミングしたことで女性に人気となった。
分量は店によって様々だろうが、大体使用する量は変わりない。それら全てをシェイカーに入れ、ゆっくりと、徐々に速さを増して振っていけば氷の擦れる音が心地よく店を満たす。
頃合いを見てグラスへ移し替え、順番に提供していく。
大学生の集団である彼ら彼女らはシェイクした荒い泡をそのまま流し込んでいるためだろうか、それともやはり知っているカクテルが知らぬ形として供されたからだろうか。やけに盛り上がっていたことは印象深く、マスターの胸へ刻まれた。
だとしたらとても嬉しいことだと、バーテンダーでもあるマスターは思った。
そうしてファーストドリンクのオーダーを受けていると、一人の女性が遠慮がちに聞いてきた。
「すみません、コーヒーリキュールを使った飲み物ってありますか?」
「はい、ございますよ」
にこやかにそう告げれば嬉しそうにそれを、と頼まれた。
コーヒーのリキュールがあることは成人している者では今やありふれた事実であり、また常識だろう。それほど「カルーアミルク」というカクテルは皆に受け入れられた。
しかし、だ。その作り方に凝るということはない。いや、なかった。
何故なら牛乳で割るだけで完成してしまうのだから、わざわざ凝る必要もない。精々ステア用にチョコレート・ポッキーを入れたり、牛乳とリキュールが綺麗に層として表れたりすることくらいだろうか。
けれどここ、Bar Leverは違う。あえて凝ってみた。元々「牛乳」を指す意味合いがあるものだ、ならばとシェイクしてみたら、既存のものをシェイカーを使用する目新しさと大人でしか飲めないラテ、そのまま「大人のラテ」とネーミングしたことで女性に人気となった。
分量は店によって様々だろうが、大体使用する量は変わりない。それら全てをシェイカーに入れ、ゆっくりと、徐々に速さを増して振っていけば氷の擦れる音が心地よく店を満たす。
頃合いを見てグラスへ移し替え、順番に提供していく。
大学生の集団である彼ら彼女らはシェイクした荒い泡をそのまま流し込んでいるためだろうか、それともやはり知っているカクテルが知らぬ形として供されたからだろうか。やけに盛り上がっていたことは印象深く、マスターの胸へ刻まれた。
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