歪んだ愛、だが助ける愛 ──孤独を埋め合う二人──

星野 夜空

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本編

6 限界

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 堪忍袋っつうのが人間、あるんだとすりゃ。
 俺は間違いなく、キレてた。
 会うたびにフェアリーがやつれてる。
 本人はやつれてねえっつうか、疲れてねえって雰囲気を出しやがってるから、尚更。

「おい、フェアリー。お前、休めてるか? 飯、食ってんだよな?」

 あれから俺と会う時、喫茶店へ行くことを拒むことはなくなった。
 だから珈琲一杯飲み終わるまでが、俺達の会う時間、語り合う時間になったが。結局、俺が話してフェアリーは時折頷く。
 フェアリー自身から話すなんざ、……まだ、俺は聞いたことがねえ。

「──休んでますよ。最低六時間は寝てます。食事もしてます」
「何食ってる」
「飲むゼリーにカロリーバーを」

 それは食事じゃねえ。軽食だ。間食だ。補食だ。
 ……こいつ、いっつもそんな飯しか食ってねえのか? いやそもそも、自炊どころかコンビニのおにぎりにすら手を出さねえのか?

「……そんなに、稼げてねえのかよ」

 皮肉のつもりだった。

「ええ。平均年収から見れば貰えていない方ですね。区分的には貧困層になるのではないでしょうか」

 淡々と。事実として、当たり前のように伝えられた。
 ブラック企業にでもいるのか? それともやっぱ、何か病気を抱えて稼げねえとかか?
 ……分からねえことだらけだ。何もかも。

 だけどな。
 知った以上は、見過ごせねえよ。
 明らかに、栄養が足りてねえって分かる。自分を適当に扱ってる。
 惚れたヤツがそんなことしてるって思ってみろ──耐えがたいだろ。

「今すぐ、何か、食え」

 喫茶店のメニュー表をフェアリーへ差し出す。それが、お前にとっての分かれ道だ。
 食わねえなら、……ずっと頭にだけ考えては止めてきたこと。
 家へ誘い込むこと。囲うこと。
 それを俺は、しちまいそうなんだよ。
 フェアリー。
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