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本編
7 逃走
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──フェアリーを家へ連れ込んだ。そんで。……電子ロックでしか開けられない部屋に、解除方法を教えないまま閉じ込めた。
後悔してないかと問われたら、していると言いそうな自分がいる。
言い訳になるが。あの日、フェアリーは飯を食わなかった。
喫茶店っつう飯を、拒んだ。この後ちゃんと食べるのか聞けば、家にカロリーバーのストックがあるからそれを食うと言われた。
だからそれはメシじゃねえ、って心の中でキレた俺は、いつもの時間を終えてフェアリーがこの近くに住んでる、と言ってた住所まで送り届けた。
だが、その夜はそれで終わりにしなかった。
フェアリーが分かれようとしたところで、腕を掴んで俺の家へ引っ張った。毎度毎度、俺がフェアリーへ何かする時は腕を掴んでるな、とか思いながら。
俺の家を見て不思議そうにしてるフェアリーに、どうかしたかと聞けば。
「……家、近かったんですね」
と呟かれた。まあ、俺も言ってなかったからな。
「伝えてお前、俺の家に来る気あったか?」
「──……ないですね」
だろうな。だから言わなかったんだよ。
お前、俺どころか他人に興味ねえ顔や態度、してるだろが。
その他人に興味ねえって態度が、お前自身にも向いてるとは思ってなかったけどな。
家の中に入れば、少しは何か反応を示すかと思った。
これでも俺は稼いでる方で、まあ、大っぴらにはしてねえが亡くなった両親が隠れ資産家ってやつだったからな。ちょっとした絵だとか、そこらにある家具だとかは、分かるやつには滅茶苦茶に良い品、らしい。
それでなくてもここらの地価を考えりゃ、見た目にそぐわない家の中の広さで驚くヤツは多い。
……だというのに。フェアリーは相変わらずだ。
感嘆の声も、表情もしない。ただ静かに、冷めたような、達観したような。見る者が見れば、諦観の瞳で家の中を連れ回す俺と、その部屋を見てる。
だから、その日の夜は普通に客室っつうか。空き部屋で寝てもらった。あ、もちろん飯は食わせたぞ。そこが理由の一つでもあったんだからな、当たり前だろ。
けど、やっぱりというべき、なんだろうな。
ホテルに泊まった時と同じように、フェアリーに朝飯が出来たところで呼びに行ったら、いなかった。
『闇刃さんへ。ありがとうございました。フェアリー』
ご丁寧にメモと、……宿代と飯代だろう金を置いて、だ。
あの時と違うのは、俺の名前が書いてあること、だろうな。
だがな。フェアリー。
俺はもう決めたんだよ。お前を囲うって。この家に住まわせるって。
お前があの時選んだ道が、俺に歩く道を決めさせたんだ。
責任転嫁だって言われても構わねえ。
お前を守れるなら。お前を、手放さねえためなら。
俺はもう──手段を選ばねえって決めたんだよ。
だから次に会った時、問答無用で俺の家へ連れて行った。
唯一ある電子ロック付の部屋を、お前の部屋にした。
……なのによ。
何で部屋にいねえんだ。フェアリー。
リモートの仕事で必要だからって渡した、必要最低限しかねえ、このご時世じゃ化石と言われそうな低スペックパソコンが、電子ロックとケーブルで繋がれてるのが目の端で見えた。
機械音とともに画面に映ってるのは、俺には分からねえ数字と文字の羅列。コード、ってやつか?
「……あいつ、エンジニアだったのか?」
皮肉なことに、俺があいつの業種、仕事を知ったのは。
この部屋から逃げ出したから、だった。
後悔してないかと問われたら、していると言いそうな自分がいる。
言い訳になるが。あの日、フェアリーは飯を食わなかった。
喫茶店っつう飯を、拒んだ。この後ちゃんと食べるのか聞けば、家にカロリーバーのストックがあるからそれを食うと言われた。
だからそれはメシじゃねえ、って心の中でキレた俺は、いつもの時間を終えてフェアリーがこの近くに住んでる、と言ってた住所まで送り届けた。
だが、その夜はそれで終わりにしなかった。
フェアリーが分かれようとしたところで、腕を掴んで俺の家へ引っ張った。毎度毎度、俺がフェアリーへ何かする時は腕を掴んでるな、とか思いながら。
俺の家を見て不思議そうにしてるフェアリーに、どうかしたかと聞けば。
「……家、近かったんですね」
と呟かれた。まあ、俺も言ってなかったからな。
「伝えてお前、俺の家に来る気あったか?」
「──……ないですね」
だろうな。だから言わなかったんだよ。
お前、俺どころか他人に興味ねえ顔や態度、してるだろが。
その他人に興味ねえって態度が、お前自身にも向いてるとは思ってなかったけどな。
家の中に入れば、少しは何か反応を示すかと思った。
これでも俺は稼いでる方で、まあ、大っぴらにはしてねえが亡くなった両親が隠れ資産家ってやつだったからな。ちょっとした絵だとか、そこらにある家具だとかは、分かるやつには滅茶苦茶に良い品、らしい。
それでなくてもここらの地価を考えりゃ、見た目にそぐわない家の中の広さで驚くヤツは多い。
……だというのに。フェアリーは相変わらずだ。
感嘆の声も、表情もしない。ただ静かに、冷めたような、達観したような。見る者が見れば、諦観の瞳で家の中を連れ回す俺と、その部屋を見てる。
だから、その日の夜は普通に客室っつうか。空き部屋で寝てもらった。あ、もちろん飯は食わせたぞ。そこが理由の一つでもあったんだからな、当たり前だろ。
けど、やっぱりというべき、なんだろうな。
ホテルに泊まった時と同じように、フェアリーに朝飯が出来たところで呼びに行ったら、いなかった。
『闇刃さんへ。ありがとうございました。フェアリー』
ご丁寧にメモと、……宿代と飯代だろう金を置いて、だ。
あの時と違うのは、俺の名前が書いてあること、だろうな。
だがな。フェアリー。
俺はもう決めたんだよ。お前を囲うって。この家に住まわせるって。
お前があの時選んだ道が、俺に歩く道を決めさせたんだ。
責任転嫁だって言われても構わねえ。
お前を守れるなら。お前を、手放さねえためなら。
俺はもう──手段を選ばねえって決めたんだよ。
だから次に会った時、問答無用で俺の家へ連れて行った。
唯一ある電子ロック付の部屋を、お前の部屋にした。
……なのによ。
何で部屋にいねえんだ。フェアリー。
リモートの仕事で必要だからって渡した、必要最低限しかねえ、このご時世じゃ化石と言われそうな低スペックパソコンが、電子ロックとケーブルで繋がれてるのが目の端で見えた。
機械音とともに画面に映ってるのは、俺には分からねえ数字と文字の羅列。コード、ってやつか?
「……あいつ、エンジニアだったのか?」
皮肉なことに、俺があいつの業種、仕事を知ったのは。
この部屋から逃げ出したから、だった。
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