ちっともファンタジーじゃない僕等の旅〜お家帰りたい〜

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1章 王国

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──それで……だ。

取り調べをする衛兵の声色が変わる。それは緊迫して強張ると言うには寧ろ逆で肩の荷を下ろしたような余裕な声だ。

後ろの衛兵は鍵を締める。

「お前──いくら払える?」。

慣れた口調で提案を持ちかける。この男が口にした言葉、その真意、理解するのに大した時間は要さなかった。何故かと言うならアブミ自身も出来るだけ甘い蜜を吸って生きたい、そういう人間であったからだ。

「なるほど……そういう……」。

今思えば、この衛兵達にはおかしな点が多々あった。
婆さんに話を掛けてからの対応が早すぎるし、見計らった様に無人の留置所、こいつ等は無為に人を捕まえては金を巻き上げているのだ。

「まぁ、茶でも飲めや、悪い様にはしねぇよ」。

給仕が熱い茶を出した、それを一口すする。

「何でこんな事を?」。

「何でってそりゃあ金になるからなぁ、へっへ、何もしてない奴から金搾り取ってるだけなのに、何も知らないババァ共は俺達をヒーロー扱いだ、たまんねぇよなぁ」。

男は笑った、下品な声で。腹の内側までドス黒く薄汚れたその男にアブミは──何も思わなかった。彼がそう言うのならそうなのだろう、きっとそれは真実で嘘偽りの無い真の事実なのだ。
    
それをどうしようとか叱るとかそんな正義感、そんな面倒くさそうなものをアブミは持ち合わせてなどいない。

アブミは淡々と喋り続ける男の話を只聞いていた。
大人しく聞いているアブミに気分を良くしたのかさらに饒舌になる。

「だから、あいつ等はさぁ────。」

「うん、話長ぇ」。  

刹那、アブミは机上にある湯呑に入った熱いお茶を衛兵に向かって勢い良く浴びせる。
熱い茶は綺麗なアーチを描き男の顔面にピシャリと掛かる。

余りの熱さに衛兵は床に転がり悶える。

アブミに正義感などは無い、良心なんかもっと無い。そこにあるのは圧倒的な自尊心と過剰なまでの自意識、ただそれだけであった。

衛兵の顔が真っ赤になる。それは怒りからかそれとも只の熱による火傷なのか定かでは無い。  

結論的に男はアブミを睨みつけこう言った。

「このクソ野郎を豚箱に放り込め!!」


1章〈完〉
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