魔王ゲームのその先で

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プロローグ

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「せ、世界の半分をやろう」。

魔王アークディザスター──全ての闇に住まう者達の王、ありとあらゆる生物の頂点に座する者、名を聞けば誰もが震え上がり頭を垂れる。

そんな魔王が一人の青年に情けなくもたじろいいだ。

乱気流の様に乱れた前髪とシャチホコのように跳ねる後ろ髪、眠そうな三白眼と目元には徹夜4日連続にも及ぶたまりに溜まった疲労による隈が出来ていた。

右手には深紅の剣だけ、重そうな鎧も立派な兜も身に着けては居ない。

「──え、まじで?半分もくれるの?」。

「いや、揺れないでくださいよ、欲丸出しじゃないですか」。

一人でに喋りだす深紅の剣、剣の言う事を聞き流すかの様に頭をポリポリとかき大あくびを一つ。

「ちょ、汚い汚い触らないで下さい童貞が伝染る」。

「伝染らねぇよ、何だよ童貞が伝染るって」。

「もう少し勇者の自覚を持って下さい、と言うか最終決戦なんですからもう少しムードを大切にしてください」。

「何だよぉ童貞が伝染るってぇ!!」。

地味に傷ついた青年は不貞腐れた様に嘆いた。

「コンディションは大丈夫なんですか?これから魔王と戦うんですよ?」

「安心しろ元気になる薬飲んで来た」。

「ドーピングじゃないですか、ですね」。

空気に耐え兼ねたのか魔王アークディザスターは戦闘体制に入る。
そんな魔王を見る気もせず未だに痴話喧嘩を続ける男と剣。

「──死ね憐れな勇者よ』。

禍々しい瘴気を放つ大剣を男の背後から振り下ろす。

「だァからァ、俺は───



───じゃねェェェェェエ!!!!」。

眩い光は世界を包む。暗雲を振り払い闇を晴らす。

この日人類史にまた一人勇者の名前が刻まれた。

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