夏は短し、恋せよ乙女

ぽんず

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「ねぇ、あなたの子分…じゃなくてさちかちゃんは元気?」
 
 
「ッ…子分って…。元気だよ。あの後もずっと水族館の話してたな。」
 
 
「小さい子と関わることが無いから、初めてだったけど悪くなかったわ。」
 
 
“キーンコーンカーンコーン”
 
 
「「あっ。」」
体育館に授業の開始を伝えるチャイムが鳴り響いた。
 
「授業は始まったけど…。」
「だな…。」
 
 
「梨々花はいつもそんなに授業出てるわけじゃないから…別にいいわ。」
 
「えっ?!そうなのか?!」
 
真面目かと思っていた相手がサボり常習犯であることに驚く。
 
「自由がいいじゃない?別に勉強に困ってるわけじゃないし…。」
 
「それは頭のいい奴の考えだろ。」
 
 
はぁ…と幸太郎はため息をついた。
 
 
 
「佐々木君は勉強ができなさそうね…。」
 
 
「はっ?!おいおい、勝手なイメージ付けるなよ。」
平均は超えてるから。ととっさにフォローを入れた。
 
 
「教室…大丈夫かしら…。」
 
「教室?」
 
 
「ほら…梨々花なにも考えずに佐々木君のクラスにいちゃったし…。」
 
(そういえば…状況が変わりすぎてそんなこと忘れてたな…。)
 
 
「まぁ、俺別にそういうタイプじゃないし…。大丈夫だろ…。」
 
 
「なによ。そういうタイプじゃないって。」
 
 
「恋愛とか、女性とか興味が無いし。」
 
「確かに、それはなさそうね。」
 
チラッと睨んできた幸太郎に
 
いい意味でね!と付け足した。
 
 
恋愛や男女交流が無い2人はこのころ教室、学校中がどれだけザワザワしていたか、まだ知らないのであった。
 
「佐々木君は戻らなくていいの?」
 
梨々花は刻一刻と進む時計に目を向けた。
すでに授業が開始となり10分程度は経っていた。
 
 
「今日の1限は実習だから…。」
 
「それなら別に大丈夫ね!」
 
 
幸太郎は体育館に寝そべり天井をボーッと眺めていた。
 
「なんかさ、女友達とかいないから知らないけど。たまにはいいもんだな。」
 
「女友達?!梨々花が?いつから友達になったのよ。」
 
 
「あっ。ごめん、馴れ馴れしかったわ。」
 
 
「まぁ…水族館も行ったわけだし。名前も知ってるし。別に顔見知りにならなってあげてもいいわね。」
 
 
「…そりゃどうも。」
 
幸太郎はどうでもよさそうにそっぽを向いたまま答えた。
 
 
「名前ね…」
 
 
「?」
 
「名前よ!昨日もらったシロイルカのぬいぐるみの!」
 
 
少し考えてから
 
あぁ…帰りに渡したあれか!
 
 
と思い出した幸太郎に梨々花は不機嫌そうに答える。
 
 
「受けっとてほしいっていうから梨々花は受け取ったのよ!なによ、忘れてたの?」
 
「さちかがだろ!俺がプレゼントしたみたいに言うなよ…。」
顔を真っ赤にする幸太郎は気にせず話を続けた。
 
 
「昨日、お風呂の中でも考えて…」
 
「シロマロにしようと思ってるの!」
 
どうよ!かわいいでしょ!っと梨々花は得意げに話している。
 
「し…しろまろ?」
 
ネーミングのよし悪しは置いといて、普段偉そうにいる梨々花がお風呂の中でずっと考えていた姿を想像するとなんだか幸太郎は笑えてきた。
 
 
「フッ…夏目さん。結構面白いんだな。」
 
少し笑った顔を梨々花は眺めていた。
 
 
そして胸の奥がなにやらキュッとしていたのであった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
「梨々花ちゃん…。やっと戻ってきたのね…。」
 
教室では1限目が終わりクラスメイトはそれぞれの休み時間を過ごしてた。
 
梨々花が戻るまでは。
 
 
梨々花の姿を見つけるなり、周りはわかりやすくザワザワとし始めたのであった。
 
「麗…周りの視線がいつにもまして…気になるわね。無礼だわ。」
 
 
「そりゃ…あの後大変だったもん!無理もないよ!」
 
 
「あんなことで盛り上がるなんて…愉快だわ。」
 
 
「梨々花ちゃん…顔怖い~!」
 
一方幸太郎のクラスでも同じことが起きており、さらに視線は突き刺さっていた。
 
 
「おい、幸太郎…お前は仲間だと信じていたのに…。」
 
目の前で泣くふりをする幼馴染の亮に冷たい視線を送りつつため息をもらす。
 
 
「はぁ…いちいちこんなのじゃあ…あいつも可愛そうだな。」
 
 
「なんかいったか?」
 
「いや。なにも。俺はこのまま寝るから。」
 
そう言い残すとまた、幸太郎は机へ伏せたのであった。
 
 
その後しばらくは2人の事で学校の中は騒がしい毎日となった。
 
 
・・・・・・・・・・・・・・
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