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「なぜお母様は急に帰ってきたのかしら…。」
「今回は日本で会議と聞いています。」
母親が梨々花の部屋を訪れた後、梨々花には疑問が残っていた。
「あと、会わせたい人って誰かしら…。」
嫌な予感だけがしていた。
「梨々花様、どうなさいますか?」
「今回も変なことをしてくるはず。桐、お母様の動きを調べて。」
「かしこまりました。」
桐は一礼をすると梨々花の部屋を後にした。
梨々花にとって、年に数回だけ帰国をしてくる両親は悩みの種であった。
(毎回変な事をしてくるのよね…。ちなみに半年前に帰ってきた時は、クレジットカードを止められたわね…。)
「親心ってわからないわ…。」
梨々花は重いため息をついた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「奥様、ディナーの用意が整いました。」
「マイケル、例の人とは連絡がついた?」
「はい、いつでも動くとの返事をいただいています。」
「この件は急を要するわ。すぐに呼びなさい。」
「かしこまりました。」
「今夜は楽しい晩餐よ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“コンコン”
「梨々花様、ご夕飯の準備が整いましたが」
“どうなさいますか?”
と心配そうに桐が問う。
「薬も効いてきたし、お母様もいるし…しょうがないわね。」
そう伝えるとベッドから体を起こした。
「あまり無理はなさらないでくださいね。」
桐はそういうと一足先にリビングへと戻っていった。
“ガチャ”
「あら、だいぶ顔色がいいみたいね。」
リビングには既に母親が待っていた。
「こうしてご飯を食べるのも、久しいわね…。」
「親子水入らず、ディナーを楽しみましょう。」
母親は笑っていた。
(お母様って昔から何を考えているのか分からないわ…。苦手分野…。)
梨々花も母親の笑顔に笑顔を返した。
「そうですね。」
「あなたは昔から私に硬いわね~。」
「そうですか?」
「そのしゃべり方と嘘くさい笑顔、どうにかならないの?」
「フッ、しゃべり方はしょうがなく丁寧に話してるだけよ。笑顔は誰に似たのかしらね。」
母親は急に爆笑をした。
「ははは!とんだ猫かぶりね~。本性は怖いわ~。」
「お母様には負けますわ。」
フンッと梨々花は言い放った。
「そのお母様っていうのもよ。昔みたいに呼んでくれないのかしら?」
「昔みたいに?」
“ママ”母親は口パクで伝えてくる。
「そんな幼稚な呼び方、梨々花には無理。」
「幼稚なんかじゃないわよ~かわいいじゃない!」
なにやら母親は楽しそうだ。と梨々花は思った。
「奥様。」
母親の耳元に使用人のマイケルが近づく。
「あら。随分早かったのね。通して頂戴。」
母親がさらに楽しそうな表情になったことを梨々花は見逃さなかった。
「今日はお客様を呼んでいるの。」
“ガチャ”
リビングの扉が開き、本日の客人が現れた。
(…誰?)
梨々花は状況に追いつけなくなっていた。
「こちら、東條君よ。東條グループの跡取りよ。」
「そして梨々花、あなたの婚約者よ。」
そう伝えると母親は今日最高の笑顔を向けた。
「お母様…まさか今回の目的はこれですか?」
“やられた。”
そう梨々花は心でつぶやいた。
「初めまして、夏目さん。東條 響です。」
そういうと紹介された、男性はさわやかな笑顔を向けた。
「こんな話は聞いていません。」
「だから今話したのよ。」
「勝手すぎるわ…。」
「別にいいじゃない。さぁ、東條君も一緒にディナーにしましょう。」
「お言葉に甘えさせていただきます。」
そういうと彼は席についた。
「なんだか、体調が悪くなりそうなので部屋に戻るわ。」
そう伝えると梨々花は席を立とうとした。
「部屋に逃げるつもり?」
「逃げるですって?」
「別に、部屋に逃げるのはいいけど。それなら勝手に話を進めるわね?」
いいのね?と母親が確認をしてくる。
(ぐッ…。)
梨々花はイラッとしながらも、仕方がなく大人しく席へ再び座った。
「フフフ。物分かりのいい娘を持ってママは嬉しいわ。」
「お二人は仲がよろしいのですね。」
(…お前の目は節穴か?)
梨々花は既に我慢の限界を超えており、心で東條にツッコミを放った。
「東條君~カッコいいでしょ?」
「男性にカッコいいなんて思ったことはありません。」
“ふ~ん。”母親は興味深そうに梨々花をジッとみつめた。
「じゃあ、今日会った佐々木幸太郎君にも?」
「?!」
急な名前に梨々花の心は揺れる。
「そんなにわかりやすく反応しなくても~。」
「早速、僕にもライバルがいるようですね。」
東條はそう言いながらも余裕の笑顔を見せていた。
「別に…幸太郎君にカッコいいなんて思ってないわよ。」
「幸太郎君ねぇ~。まぁいいわ。ご飯、食べましょう。」
「いただきます~。」
「いただきます。」
「…。いただきます。」
梨々花もそれ以上は何も言わず、静かにご飯を食べ進めた。
「梨々花さん、気分を悪くしましたか?」
「別に…。」
梨々花は東條には視線を向けずに、皿の上に乗っているハンバーグのみを見ていた。
「これから末永く、よろしくお願いしますね。」
「いえ、それは結構です。」
「フフフ、梨々花はね~照屋さんなのよ~。」
母親が首を突っ込む。
「違うわよ?!」
慌てて東條に伝え、2人の視線が重なる。
「やっと、目があいましたね。」
東條はニコッと優しく微笑んだ。
「…梨々花、もう食べたから。」
失礼するわ。と今度こそ席を立つ。
「愛らしい娘さんですね。」
「あら、本当に惚れちゃった?」
「さぁ。それはどうでしょう。」
「約束…わかっているでしょうね?」
東條は返事の代わりに爽やかな笑顔を向けたのであった。
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