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episode:17
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とある豪邸のとある一室
静かな空気の中、男女の視線が重なる。
「…じゃあ、顔も見れたし、俺はそろそろ帰ろうかな。」
男子高校生は、視線を逸らしドアの方へと体の向きを変える。
「えっ!」
気が付いた時、梨々花は既に幸太郎の手をつかんでいた。
「?」
「待って!」
首をかしげる幸太郎に梨々花は慌てて言葉を続ける。
「せっかくケーキと紅茶もあるし…食べていってよ…。」
幸太郎はテーブルの上へと視線を移す。
「でも…」
「お願い。こういう時、一人で部屋にいたくないの。」
「わかった…。」
男女はテーブルを囲い、席に着く。
「ここのお店…タルトもおいしいから。」
そういうと幸太郎の前にケーキとティーカップを綺麗にそろえる。
「いただきます。」
「梨々花こそ…プリンいただきます。」
2人の間には再び沈黙が流れた。
「梨々花ねプリン好きなの!」
「俺も、タルト好きかな…。」
“ドキッ”
(まただ…心臓がドキドキする…なにこの胸騒ぎ…。)
“好き”の単語を幸太郎の口から聞くたびに梨々花の心臓はうるさく動いていた。
「どうした?」
「なんか…脈も速いし…顔も熱くなってきちゃって…。」
「やっぱり、調子が悪くなるから、早く帰ろうかと思ったのに…。」
「調子はだいぶ良いもん。」
ふーん。と幸太郎は心配そうに梨々花の顔を覗き込む。
そして梨々花の額に手を伸ばす。
「なっ?!なに?!」
「ほんとだ…結構熱いな。顔も真っ赤だし…。」
幸太郎の行動に胸が飛び上がる。
「フッ顔が赤くて、ゆでタコみたいだな!」
幸太郎の口元が緩み、笑みがこぼれる。
“キュンッ”
梨々花の心臓は既に爆発寸前であった。
「ひひひ人の顔で面白がらないでよね…!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時計を見ると既に18時半であった。
「じゃあ、そろそろ俺は帰るわ。」
そういうと幸太郎は椅子から立ち上がる。
「今日はありがとう…すごく嬉しかった。」
照れ笑いをする梨々花の頭に幸太郎は手をのせる。
“ポンッ”
「お見送りはいいから、梨々花はしっかり休んで。」
そういうと幸太郎はドアを開けて去っていった。
頭をなでられた梨々花は顔を真っ赤にして、その場に座り込んだのだった。
(なんか…フワフワして…おかしい…なにこれ…。)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
梨々花の部屋を後にした幸太郎は長い廊下を進んでいた。
「あらま?こんな時間にお客様がいたの?」
急に話をかけられた視線の先には一人の婦人が立っていた。
「こんばんは。梨々花さんのお見舞いに来ていました。佐々木幸太郎といいます。」
幸太郎はペコッと会釈をしてもう一度、婦人へ視線を向ける。
(どことなく、梨々花に似ている気がする…。)
「あの子にお見舞い?ふーん…」
夫人はもの珍しそうに幸太郎を上から下まで見た。
「はじめまして。私は梨々花の母親です。」
そう伝えると、ニコッと口だけ笑って見せた。
「いつもお世話になっています…。」
「そう。あの子にもこんな素敵な彼氏がいたのね…。」
「いえ。彼氏ではなく…」
“友人です。”と幸太郎は後につなげる。
「あら。そうだったの。ごめんなさいね。男性のお客様なんて初めてだから。」
「では、失礼します。」
そう伝えると幸太郎はその場を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“コンコン”
「幸太郎君?」
リズムよく鳴ったドアが開く。
「残念だったわね。お友達は帰ったわよ。」
「お母様?!」
そこに現れたのは、母親であった。
「あら、随分調子が悪そうね…顔が真っ赤よ?」
母親に痛いところをつかれ、急いで顔を隠す。
「これは、熱とは関係がないわ。」
「なんだかあなた…変わったわね。」
「そうですか?まぁ、久しぶりにお会いしますから…。」
梨々花の両親は常にアメリカで仕事をしており、帰国するのは数か月に一回であった。
「さっきあなたのお友達にあったわよ。」
「幸太郎君に?変な事言ってないわよね?」
そういうと梨々花は眉をひそめた。
「お見舞いに来るなんて、相当仲がいいのかしら。」
「お母様には関係ありません。」
梨々花はキッパリと言い放った。
「まぁいいわ。そんな熱、早く治す事ね。あなたに会ってほしい人もいるし。じゃあ。」
それだけ伝えると母親は部屋から出ていった。
(本当に何を考えているか分からない人だわ…それに嫌な予感もするし。)
梨々花は険しい表情のまま、ベッドへと戻った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(梨々花のあの様子…あの反応…。)
「これは、面白いことになりそうね…。」
“パンパンッ”
梨々花の母親が二回手を鳴らすと奥から使用人が現れた。
「奥様、お呼びでしょうか?」
「マイケル、例の彼を私の部屋へ呼んでちょうだい。そろそろ動いてほしいと。」
「かしこまりました。」
「手遅れになる前に事を進めないとね…。」
梨々花の母親はニコッと笑ったのであった。
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とある豪邸のとある一室
静かな空気の中、男女の視線が重なる。
「…じゃあ、顔も見れたし、俺はそろそろ帰ろうかな。」
男子高校生は、視線を逸らしドアの方へと体の向きを変える。
「えっ!」
気が付いた時、梨々花は既に幸太郎の手をつかんでいた。
「?」
「待って!」
首をかしげる幸太郎に梨々花は慌てて言葉を続ける。
「せっかくケーキと紅茶もあるし…食べていってよ…。」
幸太郎はテーブルの上へと視線を移す。
「でも…」
「お願い。こういう時、一人で部屋にいたくないの。」
「わかった…。」
男女はテーブルを囲い、席に着く。
「ここのお店…タルトもおいしいから。」
そういうと幸太郎の前にケーキとティーカップを綺麗にそろえる。
「いただきます。」
「梨々花こそ…プリンいただきます。」
2人の間には再び沈黙が流れた。
「梨々花ねプリン好きなの!」
「俺も、タルト好きかな…。」
“ドキッ”
(まただ…心臓がドキドキする…なにこの胸騒ぎ…。)
“好き”の単語を幸太郎の口から聞くたびに梨々花の心臓はうるさく動いていた。
「どうした?」
「なんか…脈も速いし…顔も熱くなってきちゃって…。」
「やっぱり、調子が悪くなるから、早く帰ろうかと思ったのに…。」
「調子はだいぶ良いもん。」
ふーん。と幸太郎は心配そうに梨々花の顔を覗き込む。
そして梨々花の額に手を伸ばす。
「なっ?!なに?!」
「ほんとだ…結構熱いな。顔も真っ赤だし…。」
幸太郎の行動に胸が飛び上がる。
「フッ顔が赤くて、ゆでタコみたいだな!」
幸太郎の口元が緩み、笑みがこぼれる。
“キュンッ”
梨々花の心臓は既に爆発寸前であった。
「ひひひ人の顔で面白がらないでよね…!!」
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時計を見ると既に18時半であった。
「じゃあ、そろそろ俺は帰るわ。」
そういうと幸太郎は椅子から立ち上がる。
「今日はありがとう…すごく嬉しかった。」
照れ笑いをする梨々花の頭に幸太郎は手をのせる。
“ポンッ”
「お見送りはいいから、梨々花はしっかり休んで。」
そういうと幸太郎はドアを開けて去っていった。
頭をなでられた梨々花は顔を真っ赤にして、その場に座り込んだのだった。
(なんか…フワフワして…おかしい…なにこれ…。)
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梨々花の部屋を後にした幸太郎は長い廊下を進んでいた。
「あらま?こんな時間にお客様がいたの?」
急に話をかけられた視線の先には一人の婦人が立っていた。
「こんばんは。梨々花さんのお見舞いに来ていました。佐々木幸太郎といいます。」
幸太郎はペコッと会釈をしてもう一度、婦人へ視線を向ける。
(どことなく、梨々花に似ている気がする…。)
「あの子にお見舞い?ふーん…」
夫人はもの珍しそうに幸太郎を上から下まで見た。
「はじめまして。私は梨々花の母親です。」
そう伝えると、ニコッと口だけ笑って見せた。
「いつもお世話になっています…。」
「そう。あの子にもこんな素敵な彼氏がいたのね…。」
「いえ。彼氏ではなく…」
“友人です。”と幸太郎は後につなげる。
「あら。そうだったの。ごめんなさいね。男性のお客様なんて初めてだから。」
「では、失礼します。」
そう伝えると幸太郎はその場を後にした。
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“コンコン”
「幸太郎君?」
リズムよく鳴ったドアが開く。
「残念だったわね。お友達は帰ったわよ。」
「お母様?!」
そこに現れたのは、母親であった。
「あら、随分調子が悪そうね…顔が真っ赤よ?」
母親に痛いところをつかれ、急いで顔を隠す。
「これは、熱とは関係がないわ。」
「なんだかあなた…変わったわね。」
「そうですか?まぁ、久しぶりにお会いしますから…。」
梨々花の両親は常にアメリカで仕事をしており、帰国するのは数か月に一回であった。
「さっきあなたのお友達にあったわよ。」
「幸太郎君に?変な事言ってないわよね?」
そういうと梨々花は眉をひそめた。
「お見舞いに来るなんて、相当仲がいいのかしら。」
「お母様には関係ありません。」
梨々花はキッパリと言い放った。
「まぁいいわ。そんな熱、早く治す事ね。あなたに会ってほしい人もいるし。じゃあ。」
それだけ伝えると母親は部屋から出ていった。
(本当に何を考えているか分からない人だわ…それに嫌な予感もするし。)
梨々花は険しい表情のまま、ベッドへと戻った。
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(梨々花のあの様子…あの反応…。)
「これは、面白いことになりそうね…。」
“パンパンッ”
梨々花の母親が二回手を鳴らすと奥から使用人が現れた。
「奥様、お呼びでしょうか?」
「マイケル、例の彼を私の部屋へ呼んでちょうだい。そろそろ動いてほしいと。」
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