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第3話 思い出
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彼女の名前はルイナ・アナスタシア。
貧しい生まれであったが女神からの天啓を授かり名門貴族 ルイナ家へと引き取られる事になる。
本当の親はアナスタシアをお金で売り、ルイナ家は自身の家系から勇者が出ることを望んだ。
誰が悪いわけでもない。そういう時代なのだ。
貴族は血を重んじる。
血縁関係のないアナスタシアは常に蔑まれ、虐げられ、まともな教育など受けさせてもらえず日々勇者としての訓練を強制された。
愛なき教育を受け続けたアナスタシアが人一倍に愛の深い人へ成長したのは奇跡と呼べるものだったのかもしれない。
本人のたゆまぬ努力もあってアナスタシアは国でも有数の勇者へと成長していく。
数々のダンジョンを攻略し、彼女を慕う人たちも増え始めた。
ルイナ家ではなく彼女自身が脚光を浴びていく。
それを快く思わないルイナ家は彼女に【ユグドラシル】攻略を命じることになる。
生きて出ることができないと呼ばれるダンジョン。それは死罪と同義の事と理解した。
逆らうことのできない時代だったのだ。
それでも心の救いだった事は今まで命を共にした仲間がだれ一人かけることなく【ユグドラシル】へついていくと言ってくれたことだ。
もちろん彼女は反対したがそれでも仲間たちの意志は固かった。
「「「「死ある時まで心は一つに。」」」」
みんなで誓い合った。
仲間が一人かけ、また一人......そして最後の一人になってもアナスタシアは剣を振るい続けた。
仲間たちの思いを背負い、彼女は戦い続けた。
そして今――
「最後にこんな化け物に出会うとは......私らしい滑稽な最後だったな......。」
初めから生き残るという可能性がなかったことがわかり笑うしかないアナスタシア。
「みんなにはすまない事をしたな。あっちで出会えた時には謝ろう。許してくれるかな? 許してくれたその時は、またみんなでテーブルを囲み、尽きることのない話で夜を明かしたいものだ......。」
あぁ.....じき夜も明ける。ほら空が次第に白み明るくなってきているぞ.......見ているかみんな......あぁ......ひか......りが......。
光がまぶしくてなかなか目が開かない。
ぼんやりする視界の中、アナスタシアは今置かれている状況を理解するまで時間がかかっていた。
(ここは......どこだ?.......神殿......?)
辺りを見回すがここまで大きい神殿などアナスタシアは見たことがない。
天井は雲が届きそうなほど高く、壁から壁までは村が一つすっぽりと入ってしまうのではないかという程距離がある。
アナスタシアが寝ていたところは巨大な魔法陣の中心だった。
そこはポカポカと温かく、自然と心も落ち着くような気がした。
「いったいここは......私はどうしてしまったのだろうか......?」
すると、神殿のこれまた大きな柱から何か大きな影が飛び出してきた。
「あれぇ~起きたの? おはよう。いまね、ひとりかくれんぼっていうのをしてたんだよ。キミも一緒にする?」
それはドシン!ドシン!と大地を揺らしながらものすごいスピードでアナスタシアの元へ走ってくる。
「ひぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!!」
恐怖映像だ。
それは巨大な黒いドラゴンが恐ろしい速度で自身を捕食しようと走ってくる姿。そう見てしまうのが普通である。
怯えながらもとっさに剣を抜こうとするアナスタシアだが――
「剣がない!!!?」
剣はここへ入ってきたときに自分で捨ててしまっている。
そんな事も忘れ慌てて探している間に巨大なドラゴンはもう目の前まで迫っていた。
(もうダメだ!!!!)
そう思って目をつむるアナスタシアであったが.......
一向に何も起こる気配がない。
体はこわばり硬直していて動きはしない。
勇気を振り絞って閉じた目をゆっくり開けてみると――
「あれ? また起きた。キミすぐ寝るし すぐ起きるんだね。フンフン。」
巨大なドラゴンの顔が目の前にあり、荒い鼻息がフンフンとアナスタシアにかけられていた。
アナスタシアはまた意識が遠くなり、そのままコテンと横に倒れ気絶してしまうのだった。
ーーーーーーーー
思い出した。
私はこの最難関のダンジョン【ユグドラシル】を攻略中にあの漆黒のドラゴンに出くわしたんだった。
眠ったふりをしながら薄目で辺りを見回すアナスタシア。
先ほどのドラゴンはまた柱の影に隠れてジッとしている。
隠れているつもりなのだろうが、尻尾が柱の影から出ているのですぐどこにいるのかわかっってしまう。
いったいこれは何の儀式なのだ? 私は何をされているのだ?
生死の境をさまよいながらやっとたどり着いたこの場所。
奴を見た瞬間、私は情けないながら生きることを諦めてしまった。
だがなぜか私はまだ生かされている。
私を生かして何になるというのか? 今すぐあのドラゴンに問いただしたいが......正直怖い。
あんな化け物を見たのは初めてだった。
その姿を見た瞬間、私の強さへの価値観が変わってしまうほどのものだった。
あの化け物がこのダンジョンからもし外界へ出れば、それこそ王国どころか世界は火の海になるだろう事は容易に想像できた。
私はどうすればよいのだろう?
ここで命を懸けて奴と戦ったとしても結果は目に見えている。
そうだとしても戦わなくてはいけないのだろうが......無理だ。
「情けない私を許してくれ......。」
つい漏れてしまった声、慌てて自分の口をふさぐアナスタシア。
ゆっくりとさっきまでそこにあった飛び出ていた尻尾を確認すると――
ついさっきまでユラユラしていた尻尾が見えなくなっている。
(しまった!! 起きているのがバレてしまったか!?)
急いで立ち上がり周囲を確認するが奴の姿がどこにもない。
ゴクリ.....息を呑むアナスタシア。
ゆっくり魔法陣の端へ移動し大きな柱の一つに背中を預ける。
あの巨体でそうやすやすと身を隠せるはずがない。
どこへ隠れたというのだ!?
アナスタシアは全身全霊をもって敵の気配を探っていく。
ふと......頭の上からパラパラと砂のようなものが落ちていることに気づく。
あまりに集中していたからすぐには気づかなかったがそれは断続的にパラパラと落ちてくるようにも感じた。
「まさか!!!」
とっさに頭上を見上げたその時、ドラゴンは柱をトカゲのようにはい登り、すでにアナスタシアの目の前まで顔を寄せていた。
「ひぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!!」
アナスタシアの恐怖の叫びにそのドラゴンは丸い目をクリクリとさせながら――
「ありゃ、見つかっちゃった。」
と蛇のような舌を出しチロチロとアナスタシアの前で動かして見せた。
アナスタシアはその舌を目で追いながらグルンと白目に移り変わり、またしてもあっけなく意識を飛ばされ再び夢の中へ旅立つのであった。
貧しい生まれであったが女神からの天啓を授かり名門貴族 ルイナ家へと引き取られる事になる。
本当の親はアナスタシアをお金で売り、ルイナ家は自身の家系から勇者が出ることを望んだ。
誰が悪いわけでもない。そういう時代なのだ。
貴族は血を重んじる。
血縁関係のないアナスタシアは常に蔑まれ、虐げられ、まともな教育など受けさせてもらえず日々勇者としての訓練を強制された。
愛なき教育を受け続けたアナスタシアが人一倍に愛の深い人へ成長したのは奇跡と呼べるものだったのかもしれない。
本人のたゆまぬ努力もあってアナスタシアは国でも有数の勇者へと成長していく。
数々のダンジョンを攻略し、彼女を慕う人たちも増え始めた。
ルイナ家ではなく彼女自身が脚光を浴びていく。
それを快く思わないルイナ家は彼女に【ユグドラシル】攻略を命じることになる。
生きて出ることができないと呼ばれるダンジョン。それは死罪と同義の事と理解した。
逆らうことのできない時代だったのだ。
それでも心の救いだった事は今まで命を共にした仲間がだれ一人かけることなく【ユグドラシル】へついていくと言ってくれたことだ。
もちろん彼女は反対したがそれでも仲間たちの意志は固かった。
「「「「死ある時まで心は一つに。」」」」
みんなで誓い合った。
仲間が一人かけ、また一人......そして最後の一人になってもアナスタシアは剣を振るい続けた。
仲間たちの思いを背負い、彼女は戦い続けた。
そして今――
「最後にこんな化け物に出会うとは......私らしい滑稽な最後だったな......。」
初めから生き残るという可能性がなかったことがわかり笑うしかないアナスタシア。
「みんなにはすまない事をしたな。あっちで出会えた時には謝ろう。許してくれるかな? 許してくれたその時は、またみんなでテーブルを囲み、尽きることのない話で夜を明かしたいものだ......。」
あぁ.....じき夜も明ける。ほら空が次第に白み明るくなってきているぞ.......見ているかみんな......あぁ......ひか......りが......。
光がまぶしくてなかなか目が開かない。
ぼんやりする視界の中、アナスタシアは今置かれている状況を理解するまで時間がかかっていた。
(ここは......どこだ?.......神殿......?)
辺りを見回すがここまで大きい神殿などアナスタシアは見たことがない。
天井は雲が届きそうなほど高く、壁から壁までは村が一つすっぽりと入ってしまうのではないかという程距離がある。
アナスタシアが寝ていたところは巨大な魔法陣の中心だった。
そこはポカポカと温かく、自然と心も落ち着くような気がした。
「いったいここは......私はどうしてしまったのだろうか......?」
すると、神殿のこれまた大きな柱から何か大きな影が飛び出してきた。
「あれぇ~起きたの? おはよう。いまね、ひとりかくれんぼっていうのをしてたんだよ。キミも一緒にする?」
それはドシン!ドシン!と大地を揺らしながらものすごいスピードでアナスタシアの元へ走ってくる。
「ひぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!!」
恐怖映像だ。
それは巨大な黒いドラゴンが恐ろしい速度で自身を捕食しようと走ってくる姿。そう見てしまうのが普通である。
怯えながらもとっさに剣を抜こうとするアナスタシアだが――
「剣がない!!!?」
剣はここへ入ってきたときに自分で捨ててしまっている。
そんな事も忘れ慌てて探している間に巨大なドラゴンはもう目の前まで迫っていた。
(もうダメだ!!!!)
そう思って目をつむるアナスタシアであったが.......
一向に何も起こる気配がない。
体はこわばり硬直していて動きはしない。
勇気を振り絞って閉じた目をゆっくり開けてみると――
「あれ? また起きた。キミすぐ寝るし すぐ起きるんだね。フンフン。」
巨大なドラゴンの顔が目の前にあり、荒い鼻息がフンフンとアナスタシアにかけられていた。
アナスタシアはまた意識が遠くなり、そのままコテンと横に倒れ気絶してしまうのだった。
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思い出した。
私はこの最難関のダンジョン【ユグドラシル】を攻略中にあの漆黒のドラゴンに出くわしたんだった。
眠ったふりをしながら薄目で辺りを見回すアナスタシア。
先ほどのドラゴンはまた柱の影に隠れてジッとしている。
隠れているつもりなのだろうが、尻尾が柱の影から出ているのですぐどこにいるのかわかっってしまう。
いったいこれは何の儀式なのだ? 私は何をされているのだ?
生死の境をさまよいながらやっとたどり着いたこの場所。
奴を見た瞬間、私は情けないながら生きることを諦めてしまった。
だがなぜか私はまだ生かされている。
私を生かして何になるというのか? 今すぐあのドラゴンに問いただしたいが......正直怖い。
あんな化け物を見たのは初めてだった。
その姿を見た瞬間、私の強さへの価値観が変わってしまうほどのものだった。
あの化け物がこのダンジョンからもし外界へ出れば、それこそ王国どころか世界は火の海になるだろう事は容易に想像できた。
私はどうすればよいのだろう?
ここで命を懸けて奴と戦ったとしても結果は目に見えている。
そうだとしても戦わなくてはいけないのだろうが......無理だ。
「情けない私を許してくれ......。」
つい漏れてしまった声、慌てて自分の口をふさぐアナスタシア。
ゆっくりとさっきまでそこにあった飛び出ていた尻尾を確認すると――
ついさっきまでユラユラしていた尻尾が見えなくなっている。
(しまった!! 起きているのがバレてしまったか!?)
急いで立ち上がり周囲を確認するが奴の姿がどこにもない。
ゴクリ.....息を呑むアナスタシア。
ゆっくり魔法陣の端へ移動し大きな柱の一つに背中を預ける。
あの巨体でそうやすやすと身を隠せるはずがない。
どこへ隠れたというのだ!?
アナスタシアは全身全霊をもって敵の気配を探っていく。
ふと......頭の上からパラパラと砂のようなものが落ちていることに気づく。
あまりに集中していたからすぐには気づかなかったがそれは断続的にパラパラと落ちてくるようにも感じた。
「まさか!!!」
とっさに頭上を見上げたその時、ドラゴンは柱をトカゲのようにはい登り、すでにアナスタシアの目の前まで顔を寄せていた。
「ひぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!!」
アナスタシアの恐怖の叫びにそのドラゴンは丸い目をクリクリとさせながら――
「ありゃ、見つかっちゃった。」
と蛇のような舌を出しチロチロとアナスタシアの前で動かして見せた。
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