11 / 58
真実の姿
しおりを挟む
「全く人騒がせな奴じゃ。」
アレンの頭を思いっきり杖で殴っておいての言葉とは思えない。
「で、いったい何なんじゃ。わしに用とは。」
こういう所は孫とそっくりだとアレンは思う。
「まさかニアとこの婆さんの血が繋がっているなんて、、、」
アレンは驚き、目を見開いている。
彼女はカレン。アレンを職業診断所で無能と診断した因縁の相手。
とはいえカレンはアレン本来の適性を占ったに過ぎないので何も悪くないのだが。
「お婆ちゃん、相談っていうのはこのスライムの事なの。」
ニアはスライムのヒールについて話はじめる。
「やはりそうか、なにかスキルがないとあの数の野犬相手にスライム1匹ではどうしようもないと思っておった。」
「わかっていたの?」
「わかっていたわけではないよ。ただ普通のスライムではないなと思ってはおった。」
再びアレンの頭の上でくつろぐスライムを顔を近づけて見ながら感心深くうなずくカレン。
顔のドアップをお見舞いされ整理的に嗚咽しそうになるアレン。
アレンのその様子にカレンは
「まったく失礼な奴じゃ。まぁよい、そのスライムをわしの部屋まで連れてきてくれ。」
アレンを睨んだカレンだがすぐにニアにそう指示する。
「なにをするんだ?」
まだカレンを完全に信用していないアレンは不信感のある目をカレンに向ける。
「全く本当に失敬なガキじゃ。礼儀というものがわかっとらん。
占ってやると言っておるんじゃ。そのスライムをな!!」
はやくせい。とカレンはすたこら部屋へ先に行ってしまった。
疑ってしまい悪いことをしたと思うアレンに
「気にしなくていいわ。あっちも気にしてないでしょうし。
いいおばあちゃんでしょ。」
そういうニアに
「いいおばあちゃんだな。」
そう返すアレンだった。
部屋に行くとカレンが水晶のある部屋でスライムを待っていた。
「モンスターでも占えるのか?」
「知らん。やったことはない。だが要領は同じじゃと思うわい。」
ニアはスライムをアレンの頭から持ち上げ水晶の前に置いた。
「キュイ。」
何かが始まると思いワクワクしているスライム。
カレンは水晶を掌でなでながら詠唱を始めた。
「空は赤、大地に芽吹き、風に移ろい、雨に流れる。
大地に御心よ、このスライムの真の姿を映しだもれー」
スライムの体が光に包まれ、その光はすぐに収まった。
カレンが紙に光った指で文字を映し出す。
書き終わったようでカレンがその紙を注視している。
「これは、、、」
目を見開くカレン、一同も横からそれを覗く。
☆ーーーーーーーーー
スライム
マスター : アレン
◆ステータス
Lv.6
力 21
体力 16
防御 19
素早さ 16
魔力 31
魔法防御 26
◆スキル
全武器,防具装備可能
黒魔法 Lv2
白魔法 Lv3
打撃耐性 Lv.3
自動修復 Lv.2
採取 Lv.15
人語理解
◆ユニークスキル
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
☆ーーーーーーーーーー
「なんだこりゃ。」
「こりゃたまげたわい。」
「うそ、これがスライム?!」
アレンは心の中でつぶやきまくる。
なんだよこれ。Lv.6でこのステータスはすごくはない。職業のボーナスもないから。
問題はスキルだ。この全武器,防具装備可能はスキル図鑑にも乗ってる。
どんな装備も装備可能、もちろんステータス制限はあるから現時点ではたいして役に立つスキルとは思えないけど
ステータスが上がるにつれて聖剣や神具も装備できるようになる上級者用のスキルだ。
スライムなので身体的に使えない武器も多くなってくるだろうけどこれはとんでもないスキルだ。
あと白魔法はわかる。実際ヒールを見ているのだから、しかし黒魔法とはなんだ?
こいつもしかして攻撃魔法まで唱えれるのか?だとしたら何が使えるんだ。気になる。
打撃耐性はこういう液状モンスターが比較的持っていることの多いスキルって聞くけど自己修復はダメだろ。
これボス級のモンスターしか持ってない能力なのに。
地味に採取のスキルが高い。だから俺じゃ見つけられない素材をいとも簡単に見つけてきたのか。
そして
「ユニークスキル、、、」
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
このマスターという表記、ステータス画面にも出ている
マスター : アレン
という文字。
「これって、、、」
ニアはこの不思議なユニークスキルの可能性を考え鼓動が早くなった。
「おいガキよ。すぐに座りなされ。おぬしも占わなければならん。」
カレンは少し興奮気味に話す。
「俺、、何なんだこれ、、、」
少し不安そうな表情のアレンにカレンは
「これだからこの仕事はやめられん。」
そう独り言のようにつぶやき急いでアレンを占う。
カレンも答えを知りたくてたまらないのだ。
アレンの体が光に包まれスライムの時と同じ工程を進める。
映し出された紙にアレンのステータスが映し出された。
☆ーーーーーーーーー
アレン
職業 : 魔物使い
◆ステータス
Lv.1
力 10
体力 9
防御 8
素早さ 9
魔力 14
魔法防御 12
◆スキル
魔を統べるもの
自身の心が届いたとき魔物に スキル:絶対の忠誠 を授けることができる。
◆ユニークスキル
・絶対者への資格
レベルアップにより自身のステータスが上がることはない。
そのかわりに自身のステータスは絶対の忠誠を付与したモンスターのステータスを一部引き継ぐ。
・王の所有物
絶対の忠誠を与えた魔物のスキルを自らも使用できる。
同時使用の場合は制限を超えて使用はできない。
☆ーーーーーーーーーー
「スキルが増えてる、、、ステータスが、、、」
「やはり覚醒条件か、、ここに出ている魔物とはモンスターの事じゃ。まさかこんなところで新種の職業に出会うとは。」
「そういえばアレンは、、わたしギルドの受付で何回も確認したけど料理人じゃ、、」
「天職じゃ。」
「天職、、、?どういう意味だ?」
「例えば勇者は勇者でしかない。戦士になろうと魔法使いになろうとそれは変わらん。
なろうと思ってなれるものではないのと同じことじゃ。まれに天職というものを持っているものが存在する。生まれたときから持ってるものもいれば
おぬしのように何かのきっかけで目覚めるものもいる。」
「俺の天職、、魔物使い、、」
「しかしモンスターを手なずけられる職業とは、、、恐れ入った。」
カレンはいいものを見せてもらったと言わんばかりに満足そうな顔をしている。
アレンは自分の手をしげしげと見る。
「俺、冒険者になれるのか?薬草摘みとかキノコ狩りじゃなくて。冒険できるのか?」
「知らん。それはわしの知るところではない。しかし、、」
カレンは少し考えたそぶりを見せこう答えた。
「そのスライムが強くなればなるほど、はたまた他にも複数モンスターを仲間に入れることが本当に可能なのであれば、おぬしは無限に強くなれるということじゃ。」
カレンのその言葉の意味の大きさにアレンもニアも言葉を失う。
スライムは不思議そうに一同の顔を見渡す。
人の言葉は理解できても内容まではまだ理解できないようだ。
しかしカレンはこの先待つであろう少年の困難を想像し、つくづく神とは悪戯なものだと嘆げいていた。
ーーーーーーーー
「これからおぬしが冒険から戻るたび、新たな仲間と出会うたびにわしのところへ来るのじゃ。
おぬしはほかの冒険者とは違う。自身の力の上昇を実感できん。それは即、死につながる危険なことじゃ。」
カレンは心配そうにアレンを見る。
「あぁ、わかってる。俺はダンジョンに入れるだけでもうれしいんだ。」
アレンはやっと自分の命を賭けた、すべてを賭けた冒険に出られることがうれしくてたまらない。
その姿を見てカレンは、今はこの喜びを祝福しようと説教をするのはあきらめた。
そんな時、横でただ聞いていたニアが小さな椅子から立ち上がり
「アレン。私もあなたと行くわ。」
「へ?」
「キュピ?」
突然のニアの宣言に間抜けな声を出してしまう。
「だって今日の出来事、すごいことよ。
新しい職業が発見されたんだもの。
それに私だって冒険者、ダンジョンの深層に何があるか見てみたいわ。」
深層とはダンジョンで人類が未だ到達していない階層の事。
具体的に何階というものではなく日々それは更新されている。
「はぁ?でもニア、お前は俺よりずっと強いし、第一ギルドの仕事はどうするんだよ。」
困るアレンにニアは
「今辞めるわ。もともとバイト感覚だったし。つまらないの、あの仕事。」
確かにニアのあの仕事ぶりと態度を見て、今のニアを知っているからこそわかるのだが、とても楽しそうには見えないとアレンは思った。
「それに、私わかるの。あなたはたぶん偉大な冒険者になるわ。」
「なに言ってんだよ、、こんなスキルじゃまだ何とも言えないだろ。実際ステータスは低いんだし。」
「ステータスの話じゃない。」
まっすぐニアはアレンを見つめる。
「だってあなた冒険をしたくてたまらない顔してるわ。
野心でもない、自尊心でもない、もちろんお金のためでもない、あなたは冒険がしたいのよ。」
ニアは 私と一緒。 と付け加えて腰に手を当てアレンにウインクする。
その姿は冒険者になってからずっと自分を恥じてきたアレンにとって、まるで女神のように映った。
「綺麗だ、、、」
あまりの美しさについ思っていることが言葉に出るアレン。
その言葉を聞きニアは顔を真っ赤にして言い返す。
「ちょっ、、アレン!!何言ってるのよ!!別にあんたの事なんて何とも思ってないんだからね!!あたしはただあんたとなら
ダンジョンの深層にたどり着けるんじゃないかって思ってるだけなんだからね!!」
慌てふためくニアにアレンもやっと自分が何を言っているのか理解して ごめん、、 と小さく謝罪した。
その言葉を聞きさらに顔を赤めるニアにカレンが
「若いのぉー。ほんにわしと爺さんの若いころにそっくりじゃ。」
ふぉふぉふぉっと高笑いながらカレンはお茶をすする。
げぇ!!とした顔でニアとカレンを交互に見るアレン。
ニアもいつかああなるのか?
そう思うと背筋がぶるっと震えた。
このことは考えないでおこう。
そう思うアレンだった。
「おばあちゃん、いいでしょ。アレンと行っても。」
「お前はもう冒険者じゃ。わしがお前の道を決めるようなことはあってはならん。
自分の道は自分で決めなされ。」
「おばあちゃん,,,」
カレンは最後にとニアに耳を貸せと手招きをする。
ニアは なに? とカレンの口元に耳を持って行った。
「小僧は死んだ爺さんにそっくりじゃ。待っておっても事は進まんぞ。押して押して押しまくるんじゃ。」
カレンの言葉に ボン っと頭から煙を出したニアは顔を真っ赤にしながらもカレンの目を見て コクコク と頷いた。
「お前の事なら何でもわかるよ。あぁかわいいニアよ。行っておいで。
世界は広い。体いっぱいそれを感じておいで。」
カレンは細い腕でニアを抱きしめる。
その胸からあふれて零れ落ちてしまうかのような大きな愛にニアは
「はい!行ってきます!」
と目に涙を浮かべ、年相応な少女の笑顔で答えた。
アレンの頭を思いっきり杖で殴っておいての言葉とは思えない。
「で、いったい何なんじゃ。わしに用とは。」
こういう所は孫とそっくりだとアレンは思う。
「まさかニアとこの婆さんの血が繋がっているなんて、、、」
アレンは驚き、目を見開いている。
彼女はカレン。アレンを職業診断所で無能と診断した因縁の相手。
とはいえカレンはアレン本来の適性を占ったに過ぎないので何も悪くないのだが。
「お婆ちゃん、相談っていうのはこのスライムの事なの。」
ニアはスライムのヒールについて話はじめる。
「やはりそうか、なにかスキルがないとあの数の野犬相手にスライム1匹ではどうしようもないと思っておった。」
「わかっていたの?」
「わかっていたわけではないよ。ただ普通のスライムではないなと思ってはおった。」
再びアレンの頭の上でくつろぐスライムを顔を近づけて見ながら感心深くうなずくカレン。
顔のドアップをお見舞いされ整理的に嗚咽しそうになるアレン。
アレンのその様子にカレンは
「まったく失礼な奴じゃ。まぁよい、そのスライムをわしの部屋まで連れてきてくれ。」
アレンを睨んだカレンだがすぐにニアにそう指示する。
「なにをするんだ?」
まだカレンを完全に信用していないアレンは不信感のある目をカレンに向ける。
「全く本当に失敬なガキじゃ。礼儀というものがわかっとらん。
占ってやると言っておるんじゃ。そのスライムをな!!」
はやくせい。とカレンはすたこら部屋へ先に行ってしまった。
疑ってしまい悪いことをしたと思うアレンに
「気にしなくていいわ。あっちも気にしてないでしょうし。
いいおばあちゃんでしょ。」
そういうニアに
「いいおばあちゃんだな。」
そう返すアレンだった。
部屋に行くとカレンが水晶のある部屋でスライムを待っていた。
「モンスターでも占えるのか?」
「知らん。やったことはない。だが要領は同じじゃと思うわい。」
ニアはスライムをアレンの頭から持ち上げ水晶の前に置いた。
「キュイ。」
何かが始まると思いワクワクしているスライム。
カレンは水晶を掌でなでながら詠唱を始めた。
「空は赤、大地に芽吹き、風に移ろい、雨に流れる。
大地に御心よ、このスライムの真の姿を映しだもれー」
スライムの体が光に包まれ、その光はすぐに収まった。
カレンが紙に光った指で文字を映し出す。
書き終わったようでカレンがその紙を注視している。
「これは、、、」
目を見開くカレン、一同も横からそれを覗く。
☆ーーーーーーーーー
スライム
マスター : アレン
◆ステータス
Lv.6
力 21
体力 16
防御 19
素早さ 16
魔力 31
魔法防御 26
◆スキル
全武器,防具装備可能
黒魔法 Lv2
白魔法 Lv3
打撃耐性 Lv.3
自動修復 Lv.2
採取 Lv.15
人語理解
◆ユニークスキル
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
☆ーーーーーーーーーー
「なんだこりゃ。」
「こりゃたまげたわい。」
「うそ、これがスライム?!」
アレンは心の中でつぶやきまくる。
なんだよこれ。Lv.6でこのステータスはすごくはない。職業のボーナスもないから。
問題はスキルだ。この全武器,防具装備可能はスキル図鑑にも乗ってる。
どんな装備も装備可能、もちろんステータス制限はあるから現時点ではたいして役に立つスキルとは思えないけど
ステータスが上がるにつれて聖剣や神具も装備できるようになる上級者用のスキルだ。
スライムなので身体的に使えない武器も多くなってくるだろうけどこれはとんでもないスキルだ。
あと白魔法はわかる。実際ヒールを見ているのだから、しかし黒魔法とはなんだ?
こいつもしかして攻撃魔法まで唱えれるのか?だとしたら何が使えるんだ。気になる。
打撃耐性はこういう液状モンスターが比較的持っていることの多いスキルって聞くけど自己修復はダメだろ。
これボス級のモンスターしか持ってない能力なのに。
地味に採取のスキルが高い。だから俺じゃ見つけられない素材をいとも簡単に見つけてきたのか。
そして
「ユニークスキル、、、」
・絶対の忠誠
マスターへの忠誠が高いほどステータスが飛躍的に上昇する。
このマスターという表記、ステータス画面にも出ている
マスター : アレン
という文字。
「これって、、、」
ニアはこの不思議なユニークスキルの可能性を考え鼓動が早くなった。
「おいガキよ。すぐに座りなされ。おぬしも占わなければならん。」
カレンは少し興奮気味に話す。
「俺、、何なんだこれ、、、」
少し不安そうな表情のアレンにカレンは
「これだからこの仕事はやめられん。」
そう独り言のようにつぶやき急いでアレンを占う。
カレンも答えを知りたくてたまらないのだ。
アレンの体が光に包まれスライムの時と同じ工程を進める。
映し出された紙にアレンのステータスが映し出された。
☆ーーーーーーーーー
アレン
職業 : 魔物使い
◆ステータス
Lv.1
力 10
体力 9
防御 8
素早さ 9
魔力 14
魔法防御 12
◆スキル
魔を統べるもの
自身の心が届いたとき魔物に スキル:絶対の忠誠 を授けることができる。
◆ユニークスキル
・絶対者への資格
レベルアップにより自身のステータスが上がることはない。
そのかわりに自身のステータスは絶対の忠誠を付与したモンスターのステータスを一部引き継ぐ。
・王の所有物
絶対の忠誠を与えた魔物のスキルを自らも使用できる。
同時使用の場合は制限を超えて使用はできない。
☆ーーーーーーーーーー
「スキルが増えてる、、、ステータスが、、、」
「やはり覚醒条件か、、ここに出ている魔物とはモンスターの事じゃ。まさかこんなところで新種の職業に出会うとは。」
「そういえばアレンは、、わたしギルドの受付で何回も確認したけど料理人じゃ、、」
「天職じゃ。」
「天職、、、?どういう意味だ?」
「例えば勇者は勇者でしかない。戦士になろうと魔法使いになろうとそれは変わらん。
なろうと思ってなれるものではないのと同じことじゃ。まれに天職というものを持っているものが存在する。生まれたときから持ってるものもいれば
おぬしのように何かのきっかけで目覚めるものもいる。」
「俺の天職、、魔物使い、、」
「しかしモンスターを手なずけられる職業とは、、、恐れ入った。」
カレンはいいものを見せてもらったと言わんばかりに満足そうな顔をしている。
アレンは自分の手をしげしげと見る。
「俺、冒険者になれるのか?薬草摘みとかキノコ狩りじゃなくて。冒険できるのか?」
「知らん。それはわしの知るところではない。しかし、、」
カレンは少し考えたそぶりを見せこう答えた。
「そのスライムが強くなればなるほど、はたまた他にも複数モンスターを仲間に入れることが本当に可能なのであれば、おぬしは無限に強くなれるということじゃ。」
カレンのその言葉の意味の大きさにアレンもニアも言葉を失う。
スライムは不思議そうに一同の顔を見渡す。
人の言葉は理解できても内容まではまだ理解できないようだ。
しかしカレンはこの先待つであろう少年の困難を想像し、つくづく神とは悪戯なものだと嘆げいていた。
ーーーーーーーー
「これからおぬしが冒険から戻るたび、新たな仲間と出会うたびにわしのところへ来るのじゃ。
おぬしはほかの冒険者とは違う。自身の力の上昇を実感できん。それは即、死につながる危険なことじゃ。」
カレンは心配そうにアレンを見る。
「あぁ、わかってる。俺はダンジョンに入れるだけでもうれしいんだ。」
アレンはやっと自分の命を賭けた、すべてを賭けた冒険に出られることがうれしくてたまらない。
その姿を見てカレンは、今はこの喜びを祝福しようと説教をするのはあきらめた。
そんな時、横でただ聞いていたニアが小さな椅子から立ち上がり
「アレン。私もあなたと行くわ。」
「へ?」
「キュピ?」
突然のニアの宣言に間抜けな声を出してしまう。
「だって今日の出来事、すごいことよ。
新しい職業が発見されたんだもの。
それに私だって冒険者、ダンジョンの深層に何があるか見てみたいわ。」
深層とはダンジョンで人類が未だ到達していない階層の事。
具体的に何階というものではなく日々それは更新されている。
「はぁ?でもニア、お前は俺よりずっと強いし、第一ギルドの仕事はどうするんだよ。」
困るアレンにニアは
「今辞めるわ。もともとバイト感覚だったし。つまらないの、あの仕事。」
確かにニアのあの仕事ぶりと態度を見て、今のニアを知っているからこそわかるのだが、とても楽しそうには見えないとアレンは思った。
「それに、私わかるの。あなたはたぶん偉大な冒険者になるわ。」
「なに言ってんだよ、、こんなスキルじゃまだ何とも言えないだろ。実際ステータスは低いんだし。」
「ステータスの話じゃない。」
まっすぐニアはアレンを見つめる。
「だってあなた冒険をしたくてたまらない顔してるわ。
野心でもない、自尊心でもない、もちろんお金のためでもない、あなたは冒険がしたいのよ。」
ニアは 私と一緒。 と付け加えて腰に手を当てアレンにウインクする。
その姿は冒険者になってからずっと自分を恥じてきたアレンにとって、まるで女神のように映った。
「綺麗だ、、、」
あまりの美しさについ思っていることが言葉に出るアレン。
その言葉を聞きニアは顔を真っ赤にして言い返す。
「ちょっ、、アレン!!何言ってるのよ!!別にあんたの事なんて何とも思ってないんだからね!!あたしはただあんたとなら
ダンジョンの深層にたどり着けるんじゃないかって思ってるだけなんだからね!!」
慌てふためくニアにアレンもやっと自分が何を言っているのか理解して ごめん、、 と小さく謝罪した。
その言葉を聞きさらに顔を赤めるニアにカレンが
「若いのぉー。ほんにわしと爺さんの若いころにそっくりじゃ。」
ふぉふぉふぉっと高笑いながらカレンはお茶をすする。
げぇ!!とした顔でニアとカレンを交互に見るアレン。
ニアもいつかああなるのか?
そう思うと背筋がぶるっと震えた。
このことは考えないでおこう。
そう思うアレンだった。
「おばあちゃん、いいでしょ。アレンと行っても。」
「お前はもう冒険者じゃ。わしがお前の道を決めるようなことはあってはならん。
自分の道は自分で決めなされ。」
「おばあちゃん,,,」
カレンは最後にとニアに耳を貸せと手招きをする。
ニアは なに? とカレンの口元に耳を持って行った。
「小僧は死んだ爺さんにそっくりじゃ。待っておっても事は進まんぞ。押して押して押しまくるんじゃ。」
カレンの言葉に ボン っと頭から煙を出したニアは顔を真っ赤にしながらもカレンの目を見て コクコク と頷いた。
「お前の事なら何でもわかるよ。あぁかわいいニアよ。行っておいで。
世界は広い。体いっぱいそれを感じておいで。」
カレンは細い腕でニアを抱きしめる。
その胸からあふれて零れ落ちてしまうかのような大きな愛にニアは
「はい!行ってきます!」
と目に涙を浮かべ、年相応な少女の笑顔で答えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる