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ダンジョンアタック

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 ・ダンジョンアタック 初日

 今日はアレンにとって初めてのダンジョンアタックの日。
 今回は脱出までの予定日数を3日と予定しているが命の危険が迫れば直ちに離脱することをニアはアレンに共有する。

 他の冒険者に見られてはまずいのでスライムはまだ魔晶石に入ったままだ。
 アレンは荷物用の魔晶石、スライムが入った魔晶石と新たな仲間用にもう2つの魔晶石を持ち歩いて合計4つの魔晶石を持っている。

「準備はいい?ここから1歩でも中に入ると外の世界の常識は通用しないわ。遊びはここまでよ。」

 決して厳しい言葉ではない。
 一つのミスが死に直結する険しい道だ。
 アレンの緊張がニアにも伝わる。
 そんな中、緊張させすぎたかなとアレンの緊張を少しでもほぐそうと思いニアはふとこんな言葉をかけた。

「今の気持ちはどう?ずっと憧れてたんでしょ。」

 ニアはアレンの顔を覗き込み問いかける。
 その言葉にアレンは昔の自分を思い出していた。
 小さいころからずっとここへ来るために準備をしてきた。
 何度も壁に跳ね返されたがあきらめず少しづつ前へ前へ信じて進んだ。

 一度は諦めかけたこともあった。
 自分の才能のなさを嘆くこともあった。
 薬草を集め、キノコを拾い自分をみじめに思うときもあった。
 彼は改めて冒険者という仕事を誇らしく思う。
 人という種族の探求心のため未知の領域に足を踏み入れる者。
 自分の血液が今冒険者の血になっていくのを感じる。
 ここから先は未知の領域、冒険者の世界だ。

 アレンはスーっと息を吸い込みフハーと大きく息を吐いた。

「ずっと準備はできてた。」

 そしてニアの方は見ずにダンジョンの奥を見つめそう答える。
 ニアは そう と一言声をかけると

「行くわよ。」

 とダンジョンの中へ進んでいった。
 アレンはニアの背中を見ながらもう一呼吸おき

「さぁ、冒険だ!!」

 そう言うと走ってニアの背中を追いかけた。
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