ダンジョンはモンスターでいっぱい!! ~スライムと成り上がる最弱冒険者の物語〜

なか

文字の大きさ
47 / 58

許せない

しおりを挟む
「どうです? 私の予想、当たってますか?」

 相変わらず凍り付くような悪寒をアレン達に与えながら話を続けるブルーノ。
 撤退しようにもこの空気、簡単には逃げられないだろう。
 誰もが戦闘もやむなしと考えた中、ニアがブルーノに質問し始めた。

「あなたのしていた実験というのは人間に魔素を無理やり与えてモンスター化させるというものなの?」

 いきなりの核心つく質問にさすがのブルーノも一瞬言葉に詰まったがすぐにクスクスと笑い出し答え始める。

「クスクス、あなたは嘘が嫌いなのですね。私と同じだ。」

 人を逆なでするような言葉。しかしニアは表情を変えない。

「質問に答えましょう。あなたの質問、大まかにいえば当たりです。ただ本当に大まかなものでしかないですが。本当の根本的な理由でいえばその意味は全く違うものになってくる。」

「どうしてそんなことをするの?」

「意味などたくさんありすぎて、ただ一つ言えることは好奇心。あなたもなぜダンジョンに入るかという理由を聞かれれば何と言いますか? 強くなりたいから、金が欲しい、名誉、そのすべては好奇心なのです。どうすればこうなる。こうしたらこうなる。そういった事を連想しながら何かの行動へ欲をまき散らす。それはすべて好奇心という言葉に置き換えることができます。私は言ってしまえば好奇心の従者、下部(しもべ)なのですよ。」

「そんなことを聞いてるんじゃないの。私は......どうしてこんなひどいことができるの? この子たちにも未来はあったはず。もちろんダンジョンの中で命を落とすこともある。仲間に騙されて命を落とした冒険者だっているわ。でもこれは......いくら何でもひどすぎる。人間の尊厳を壊す仕打ちだわ。」

 ニアは声を声をかすらせてそれでも強く言い放つ。今泣いてはいけない。それでもタヌキとリンの事を思えば瞳から涙が浮かび上がってきた。

「個人の感情で話されても困ります。私は今生物の歴史を変えるかもしれない実験に携わっているのです。とても崇高な行いなのです。あなたは神を信じますか? 神とは何か考えたことがありますか? 神とは人物ではない。神とは現象の事を指すのです。私は神を起こそうとしているのですよ!!」

「ひどい......そんな訳の分からないことのために......あなただけは許せない。」

 ニアは持っていた杖を強く握りしめる。

「わからない人はいつまでもわからないものです。どれだけ説明しても、どれだけ目の前で実演しても。己の身に降りかかってから初めて理解する。」

「その言葉、そっくりそのままお返しするわ。」

 アレン達も初めはニアの暴走に焦りを見せたが最早そんな感情はなくなった。
 一撃でもこいつをぶん殴らないと気が済まない。
 皆がその思いだった。

「お返し頂いてありがとうございます。それでどうしますか? 動けない体で私をどうするというのです?」

 その言葉と同時に全員の体がきつい縄で縛られたように身動きできなくなった。

「ぐっ、いつの間に.....」

 クラウスはもがきながら苦しい声を出す。

「今ですよ。たった今。知ってましたか? 地上では私は呪いのブルーノと呼ばれています。」
「これが呪術!? 一気に全員の動きを完全に封じるなんて。」

 ふざけたような呪術の力に圧倒されるアレン達。
 するとタヌキが

「これだけの力を一瞬で使う発動の速さ。ぐっ、呪術師の技は強力な分必ず術者に反動が降りかかる。証拠に今こいつは次の技をかけられないでいる。今耐えればすぐに魔力不足に陥って技が出せない状態になるぞ。」

「クククク、よくご存じじゃないですか? そうなんです呪術師というのは不便な職業でして、技の反動が大きすぎて一人では戦闘も満足にできないのですよ。ただ、私以外の呪術師はですが。」

 ブルーノはそのままタヌキに手をかざすとタヌキの目の前の空間が バン!! と弾けるように歪んでそのまま壁へ吹き飛ばされてしまった。ぶつかった壁は粉々に崩れタヌキはそのがれきの中で失神してしまっているようだ。

「そんな......予備動作なしで、しかも攻撃も目視できないであの威力......こんなのって。」

 ニアは瞬時に自分たちとブルーノとの戦力差を思い知ってしまう。
 しかしアレンは動けない体で暴れようともせずブルーノを見ながら

「おかしいとは思ってた。お前ウォーウルフと戦って呪印かけたんだろ? その反動も見せてない。そんな中で今の攻撃......お前、呪印の反動受けてないだろ?」

「ほう、ウォーウルフという言葉が出ますか? ますますあなたは面白い。いかにも、なぜあなたがそれを知っているかは知りませんが。とびきり強力な奴をね。本当はもっと試してみたかったんですがあまりにウォーウルフが強力だったのでその一つの呪術で【ストック】が切れてしまいましてね。」

 その言葉にニアは戦慄する。
【ストック】とはどういう意味か? いったい何の目的の実験をしていたのか? 魔素を人体に浴びせる実験? 今まで聞いたブルーノの言葉がニアの頭に一つの仮説を導き出した。

「まさか......呪印を肩代わりさせてる......。」

 その言葉にクラウスは

「そんなまさか!! そんな事できるはずがない。あれは職業についてまわる能力みたいなものだ!!」
「いや、たぶんそうだよクラウス。ニアの言うとおりだ。」

 アレンはクラウスにそういうとブルーノを見ろと顔をブルーの方へやった。
 ブルーノはおかしくてたまらない様子で腹を抱え笑っていた。
 おそらく今の話が的を得ていたという事なのだろう。

「面白い!! あなたたちは本当に面白い!! なぜなのですか!? なぜそんなに私を喜ばしてくれるのですか!? 今までだれ一人私の理解者などいなかった。ついに現れたのですね、私の理解者が!!」

 狂ったように言葉の語気を強めるブルーノ。仮面から覗く目は血走り強引なまでに見開かれている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...