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「昔、『怨』の巨大化を危惧した先祖が、その身に取り込むことによって防いだのだ。そして自身が『怨の化身』、即ち『闇の化身』となり、ロングバード王家の光剣に切られることによって滅した」
語られた顛末には、ゲームと共通点があった。
僕はこれから「闇の化身」になるのだと考えていたけど、そうじゃなくて昔から関係があったんだ。
ゲームの僕だけじゃなく、ご先祖様も「闇の化身」になっていた。
「当主はそのとき落命したものの、息子が後を継いだ。『闇の化身』の種と一緒にな。我が家のエンブレムには国を守ることはもちろん、切られても終わらない意味が込められている」
父上の視線が僕の胸元に下りたのを見て、無意識の内にペンダントを握っていたことに気付く。
手の平にある盾のエンブレム。
ずっと僕は「闇の化身」に関するものを身につけていたんだ。
「父上、種とは何ですか?」
「人の悪意がなくなることはない。だから『怨』がまた巨大化することのないよう対応したのだ。『怨』が種に集まるようにな。種は血脈によって受け継がれ、我々は受け継がれた魔力によって、種が芽吹くのを防いでいる」
「闇の化身」の種は、父上にも、僕にも受け継がれているということだった。
ゲームの僕は、その種を発芽させてしまった?
「我々の魔力が少ないのは、無意識下で種を封じるために使われているからだ。ここまではいいか?」
「はい。僕も意識しない内に、種を魔力で封じているのですね」
「そうだ。『怨』について知識がなくとも、我々は封じ続けることができる。だが、知らないままではいられない」
もし、知らなければ?
もし、何も知らないまま種を発芽させてしまったら?
ゲームの僕になる?
「王家にもこのことは伝えられている。過去に『怨』を滅した方法を失わないためだ。二家のどちらかでも伝わっていれば、種が発芽しても対処できる。お前の話では、奇しくも同様の手段が取られたようだが」
ゲームで伝承が語られることはなかった。
ということは、ゲームの僕も、アルフレッドも伝承を知らなかったのだ。
少なくともアルフレッドが知っていれば、ゲーム主人公に話したはず。
「でもどうして秘匿にされているのです? 今の僕のように、前もって教えてもらっていれば……」
それか二家に限らず、広くこの伝承は共有されたほうがいいのでは?
僕の疑問に、父上は首を横に振って答える。
「ルーファス、人の心は弱い。特に子どもの頃はな。お前のように、前世の記憶があれば別かもしれないが」
確かに、僕は前世のおかげで、精神が成熟していた。
未熟さもまだ残ってはいるけれど、他の子どもと比べたら段違いだろう。
「私も子どもの頃は、よく魔力の少なさを嘆いたものだ。そのとき、実際は魔力があると知れば、どうしていただろうな」
種を封じるのをやめ、本来の魔力を取り戻す。
子どもが未熟な判断をしてしまう可能性は否定できない。
「そして我が家を失脚させたい者がこれを知り、伝承を改悪しないと言い切れるか? いくら王家が真実を知っていても、民衆の多くが改悪された情報を信じてしまえば、真実など脆く崩れ去ってしまう」
あぁ、そうか。
ウッドワード家は、政治的競争の激しい貴族社会に生きている。
伝承の秘匿は、二重の意味で身を守る術なんだ。
「だからこの話は、跡取りが分別のつく大人になってから伝えることにしている。王家もそうだ。お前なら大丈夫だろうと判断したが……ルーファス」
三白眼の瞳が僕をとらえる。
「はい」
「今後もし種を発芽させ、『闇の化身』となってしまったときは、理性がある内に自害しろ」
語られた顛末には、ゲームと共通点があった。
僕はこれから「闇の化身」になるのだと考えていたけど、そうじゃなくて昔から関係があったんだ。
ゲームの僕だけじゃなく、ご先祖様も「闇の化身」になっていた。
「当主はそのとき落命したものの、息子が後を継いだ。『闇の化身』の種と一緒にな。我が家のエンブレムには国を守ることはもちろん、切られても終わらない意味が込められている」
父上の視線が僕の胸元に下りたのを見て、無意識の内にペンダントを握っていたことに気付く。
手の平にある盾のエンブレム。
ずっと僕は「闇の化身」に関するものを身につけていたんだ。
「父上、種とは何ですか?」
「人の悪意がなくなることはない。だから『怨』がまた巨大化することのないよう対応したのだ。『怨』が種に集まるようにな。種は血脈によって受け継がれ、我々は受け継がれた魔力によって、種が芽吹くのを防いでいる」
「闇の化身」の種は、父上にも、僕にも受け継がれているということだった。
ゲームの僕は、その種を発芽させてしまった?
「我々の魔力が少ないのは、無意識下で種を封じるために使われているからだ。ここまではいいか?」
「はい。僕も意識しない内に、種を魔力で封じているのですね」
「そうだ。『怨』について知識がなくとも、我々は封じ続けることができる。だが、知らないままではいられない」
もし、知らなければ?
もし、何も知らないまま種を発芽させてしまったら?
ゲームの僕になる?
「王家にもこのことは伝えられている。過去に『怨』を滅した方法を失わないためだ。二家のどちらかでも伝わっていれば、種が発芽しても対処できる。お前の話では、奇しくも同様の手段が取られたようだが」
ゲームで伝承が語られることはなかった。
ということは、ゲームの僕も、アルフレッドも伝承を知らなかったのだ。
少なくともアルフレッドが知っていれば、ゲーム主人公に話したはず。
「でもどうして秘匿にされているのです? 今の僕のように、前もって教えてもらっていれば……」
それか二家に限らず、広くこの伝承は共有されたほうがいいのでは?
僕の疑問に、父上は首を横に振って答える。
「ルーファス、人の心は弱い。特に子どもの頃はな。お前のように、前世の記憶があれば別かもしれないが」
確かに、僕は前世のおかげで、精神が成熟していた。
未熟さもまだ残ってはいるけれど、他の子どもと比べたら段違いだろう。
「私も子どもの頃は、よく魔力の少なさを嘆いたものだ。そのとき、実際は魔力があると知れば、どうしていただろうな」
種を封じるのをやめ、本来の魔力を取り戻す。
子どもが未熟な判断をしてしまう可能性は否定できない。
「そして我が家を失脚させたい者がこれを知り、伝承を改悪しないと言い切れるか? いくら王家が真実を知っていても、民衆の多くが改悪された情報を信じてしまえば、真実など脆く崩れ去ってしまう」
あぁ、そうか。
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伝承の秘匿は、二重の意味で身を守る術なんだ。
「だからこの話は、跡取りが分別のつく大人になってから伝えることにしている。王家もそうだ。お前なら大丈夫だろうと判断したが……ルーファス」
三白眼の瞳が僕をとらえる。
「はい」
「今後もし種を発芽させ、『闇の化身』となってしまったときは、理性がある内に自害しろ」
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