乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府

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 ゲームのアルフレッドは、乱暴な一面から他者と距離があった。
 既にイアンとは距離ができていたのか。
 上手くとりなすことができれば、少しでも運命を変えられるかもしれない。
 やれることは、何でもやろう。

「まず僕がイアンと友好を深められるかですが、ぜひお会いしたいとお伝えください」
「わかった、これもいい機会だ。先ほどまで、招待状を開けていたのだろう? 当主には私から口頭で伝えるが、お前もイアンに招待状を出しなさい」

 そういえば僕から誰かに招待状を送ったことはなかった。
 ヴィヴィアンはよくお茶会を開くから、送っているようだけど。

 ……。
 …………。
 …………僕って、友達いない?

 アルフレッドは、友達というより弟や親戚の子に近い感じがする。向こうもお兄様って呼んでくれるし。
 対等かつ、気軽に付き合える相手を条件にすると、思い浮かぶ顔は一つもなかった。
 たらりと冷や汗が伝う。

 これは流石にダメな気がする。

 イアンは侯爵家だから、家格は対等だ。
 年下ではあるけど、気が合いそうだったら、僕の友達候補としても仲良くしてもらおう……。
 そんな情けないことを考えていると、父上の口調が変わった。
 先ほどまで断定的だったものが、優しく揺らぐ。

「後は……そうだな、欲しいものはないか?」
「欲しいものですか?」
「ヴィヴィアンにはコサージュを贈る約束をした。ルーファスも欲しいものがあるなら言いなさい」

 ヴィヴィアンはすっかり花を模したコサージュがお気に入りのようだ。
 母上から、社交界で今流行っていると聞いたからだろうか。
 しかし僕はアクセサリーに興味がない。
 本も書架に揃っているし……。

「ものじゃなくてもいいですか?」
「抱っこか?」
「違います」

 元々あれはヴィヴィアンに向けたパフォーマンスだった。
 僕の即答に、何故か父上が項垂れる。

「お仕事は忙しいですか?」
「忙しいには、忙しいが……」
「お時間があるときは、夕食を家で食べてもらえたらと思います。家族が揃わないのは寂しいですから」

 無理を言っている自覚はある。
 母上に限らず、ウッドワード家の当主である父上は、他家との会食に呼ばれることが多い。
 外食ばかりになるのは当然だった。
 だから出来うる限りで、という条件でお願いする。

「わかった、善処しよう」
「ありがとうございます」

 父上としては兄妹平等にお願いを聞いておきたかったんだろう。
 僕の要望を聞いた父上は、頷くと部屋を後にした。
 そこまではよかったんだけど――。

「ルーは、あたしがいなくても寂しくないって言うの!?」

 どう話が伝わったのか、母上が部屋に駆け込んできた。
 勉強机に向かってイアンへの招待状をどう書こうか悩んでいた僕は、そのままの状態で母上の腕に抱かれる。
 柔らかく弾む胸に父上との違いを感じながら、何とか口を開いた。

「母上がいなくても寂しいですよ?」
「そうよね!? 旦那様ったら、ルーファスは私がいなくて寂しいようだって、これ見よがしに言うものだから」

 父上……。
 おかしい、僕はちゃんと家族が揃わないとって言ったはずなのに。

「でも母上もお忙しいでしょう? 無理はなさらないでください」
「いいえ、決めたわ。ルーは男の子だし、あまり母親が出しゃばらないほうがいいと思っていたけど、これからは気にせず思いっきり可愛がります」
「えぇ……」

 どうしてこうなった。
 思わず否定的な呟きが漏れると、母上に両手で顔を挟まれて持ち上げられる。

「嫌なの?」
「嫌、ではないですが……僕も成長していますし、恥ずかしいというか……」
「あら、そんなこと気にしなくていいのよ。何歳になっても、ルーはあたしの子どもなんですから」

 言い切る母上に、僕がどれだけ言葉を重ねても無駄だった。
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