ピンクスライムさんは○○○が欲しい

楢山幕府

文字の大きさ
15 / 26

015

しおりを挟む
 シドのいる魔族領までの道のりは長かったが、オレの働きによって行程は順調に進んでいた。
 今は道中の林で、テントを張って一息ついているところだ。
 しかし我ながら見事な働きぶりだった。
 ときには、山中で襲いかかってきた盗賊を、アッサムが攻撃を弾いた隙を突いてイカせたり。

「あひんっ! こんなのはじめてぇぇぇえん!!!」

 ときには、オレを盗もうとした村人をイカせたり。

「のぉぉおっ、おら、おらぁぁ! いぐぅぅううう!」

 いやぁ、犯す人材には困らなかったぜ。
 しかしこれほど貢献しているオレを、アッサムはたき火越しに辟易とした表情で見てくる。

「レイ様、こいつ出発時より大きくなってませんか……?」
「あぁ、彼は異能種なのもあって、分裂しないようだな」
「どれだけ精気吸ったら満足するんだよ……」

 町につけば、ちゃんと用意された小瓶に体を分けてやってるというのに、何という言い草だろうか。
 旅費に困らず、旅を続けられているのは誰のおかげだ?
 何だ? 最近じっくり構ってやれてなかったから、妬いてるのか?

「やめろ! にじり寄ってくるな!」
「ははっ、すっかり仲がよくなったな」
「これのどこがですか!? ……だから、来るなって! お前、俺がイヤがってるの分かるだろう!?」

 分かってるよ、イヤよイヤよも好きの内、だろ?
 ゼリー状の体を伸ばしてアッサムの褐色の肌に触れる。

「うわっ! ばかっ、場所を考えろ……!」

 それは場所を替えればいいってことか。
 アッサムも随分素直になったもんだ。
 しかしシドの魔族領に近づき、魔族や魔物がいつ現れても不思議ではない状況なので、これ以上の接触は素直に控える。

「……本当にこういうところは、聞き分けいいよな、お前」

 いいところで邪魔が入るのはイヤだからな!
 そんなことよりオレはアッサムに聞きたいことがあった。
 じっとアッサムの腕を見つめる。

「な、何だよ……」

 あれは盗賊と相対したときだった。
 剣戟けんげきの最中、アッサムは確かに身を守るため硬化魔法を使い、盗賊の攻撃に耐えたのだ。
 オレは是が非でもその魔法が知りたい!
 だって自分の体を硬化できたら、もうヘビとか刀剣の柄に頼らなくて済むんだ! 上手く想像通りに固められるかは、試してみないと分からないけど! いいや、そこは死ぬ気で作り上げてみせるから!
 しかしどうやって硬化魔法のことを伝えればいいものか……。
 オレは試しにゼリー状の体を伸ばして剣の形を象った。角が丸くなってしまうのはご愛敬だ。
 どうしてもゼリー状だと、形を固定するのが難しい。

「何か私たちに伝えようとしているのか? こんな風に形を作るのは、はじめてだな」

 すぐに意図を察してくれるレイ大好き。

「ろくでもないことのように思えますが……」

 それに反してアッサムはどうか。まだまだ調教が足りてないようだな。
 ギリギリ剣の形に見える体をアッサムの腕に向ける。
 咄嗟にアッサムは腕を遠ざけるが、オレは腕に弾かれたように反対側へ体を動かした。
 腕に剣を向けては、弾かれる動作を何度も繰り返す。
 その意味に気づいてくれたのは、やはりレイだった。

「アッサムの腕に、剣が弾かれているのを表現したいのか?」

 そうそう。
 試しにレイが自分の腕を前に差しだしてくるが、オレは体を左右に揺らして違うと告げる。

「やはりアッサムの腕に意味があるようだな」
「ですが……俺の腕が何だっていうんです? 盾がなければ剣を弾くことなんてできませんよ」

 そうなんだけど! そうなんだけど……!
 例え硬化魔法を自分にかけたところで、剣筋を防げるわけではない。
 実際に体で剣を弾けるのは、ゴーレムや硬い鱗を持つドラゴンぐらいだ。
 それでも硬化魔法を使うことで、アッサムのいう通り盾越しに弾けるようになる。オレが伝えたいのはそこ……!
 助けて、レイ!
 どうにか意図を汲んでもらえないかと頼みの綱であるレイに視線を集中させる。
 レイは顎に手を置いて考え込んでいる様子だった。

「ふむ、攻撃を弾く動きか……もしかして、硬化魔法か?」

 レイ愛してるぅぅううううう!!!!!
 頷くように縦に大きく体を揺らすと、レイも当たるとは思っていなかったらしく大きな声をあげて笑った。

「ははは! どうやら当たりらしい」
「硬化魔法ですか?」

 相変わらずアッサムはピンときていないようだ。
 どうでもいいから、今すぐオレに硬化魔法を教えろ。

「前に話したことがあっただろう? 私のゴーレムの魔法陣が改変されていたことを」
「はい……ですが本当に、このピンクスライムがやったんですか? 失礼ですが、レイ様の思い違いでは?」
「いや、ピンクスライムが家に来たとき、わざとゴーレムの横を通ったがピクリとも動かなかった。信じられん話だが、確かに彼に書き換えられたんだ。……もしかしたら戦いに備えて、硬化魔法を覚えたいのかもしれん」
「攻撃用にということですか? そんな……お前……」

 感激したように輝く瞳をアッサムが向けてくる。
 いや、オレはゼリー状の体を固めて肉棒を作りたいだけだ。
 第一、物理無効な上、相手の顔に取りついて呼吸をできなくすれば息の根を止められるピンクスライムが、わざわざ攻撃用に硬化魔法を覚える必要はないだろう。
 そりゃあドラゴンや大きい個体が相手では無理があるが、そんなのには硬化魔法を覚えたところで逆立ちしたって勝てねぇよ。
 しかしすっかり勘違いしているアッサムは、上機嫌で硬化魔法を教えてくれる。

「今までは単に腹が減ったから、盗賊相手にも取りついたと思ってたんだが、実は戦いに参加してくれてたんだな……。よし! そういうことなら硬化魔法を教えてやるぜ!」

 よしきたっ!!!
 遂に念願叶うのかと思えば、感慨深い。
 長かった……これで代用して物を使うこともなくなるんだ。
 あぁ、オレの強姦ライフが、やっと日の目を見る。

「――どうだ? 分かったか?」

 アッサムが懇切丁寧に魔力の流れまで説明してくれたおかげで、すぐに硬化魔法を理解することができた。
 喜んで体を弾ますオレに、アッサムも満足げに頷く。

「今まで金づるだなんて言って悪かったな。今日からは、お前も俺らの仲間だ!」

 次からは存分にオレの肉棒で犯してやるからな! 期待しててくれ!
 記憶が確かなら、ここからシドの魔族領に入る手前にも、人間の町があったはずだ。
 二人のことだからきっとそこで最後の宿泊をするだろう。
 くっくっく、楽しみにしてろよ。

「……しかし最近野宿が続いてるせいか、背筋に寒気が走りますね」
「疲れが溜まっているのだろう。ピンクスライムのおかげで金はある。次の町では、ゆっくり休もうではないか」
「そうですね」

 思惑通りの会話をする二人に笑いが止まらない。
 折角だから肉棒を作る練習はこっそりして、宿屋で二人を驚かせてやろう。
 心なしかヘビが残念そうにしてるように思えるが。
 もうキミは十分に役立ってくれた。次からは好きなときにオレの体に潜り込んでいいから……。
 そうヘビに語りかけると、即行でヘビはオレのゼリー状の体に潜った。こいつも大概現金だな。

「すっかりあのヘビは、ピンクスライムに懐いてますね」
「ピンクスライムは他の生物に懐かれやすい性質らしい。私たちの馬も彼に懐いているだろう?」
「……一回犯されてましたしね」

 体で語り合っただけさ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました

藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。 (あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。 ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。 しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。 気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は── 異世界転生ラブラブコメディです。 ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

処理中です...