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悲劇の始まり
第四話 駒姫編:慎之介様の面影、慎の微笑み
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運命の文禄四年、そして令和へ――。
令和7年8月12日
私は山形市立高校剣道部の仲間、慎次と慶、
そして親友の澪と4人でプールに行きました。
慎次と慶は2年生、私と澪は1年生です。
待ち合わせの山形駅に着くと、
写真で見た慎之介様にそっくりな男性がいました。
しかし、この世界に慎之介様がいるはずがありません。
その方は、駒凛様の彼氏 慎次です。
緊張している私を、慎次は笑顔で迎えてくれました。
一方、慶は「澪、駒凛、遅いよ!早く行こうぜ!」
待ちきれない様子でした。
「ごめん!」と澪が謝ると、
私は癖で「申し訳ございません」と口にしてしまいました。
「なんだよ、今日は駒凛まで変な感じだな!
慎もだけど、堅っ苦しい話し方はやめろよな。」
と慶は少し戸惑っていますした。
すると澪がまた助けてくれました。
「二人は歴史オタクだから、また影響されたんじゃない。
それより、早くプールに行こうよ。」
この世界にまだ慣れない私が堅い話し方をすると、
いつも澪が私を助けてくれます。
プールまではバスで15分ほどです。
バスの中では、慎次と体が触れるほどの近さで座りました。
私の緊張が伝わったのか、慎次は何も話さず、
会話のないままプールに到着しました。
バスを降りるとき、慎次が優しく手を差し出してくれました。
私は初めて異性と手をつなぎました。
「ありがとう、慎」
「どういたしまして、駒凛様」
その言葉を聞いた瞬間、私は「慎之介様!」と叫んでしまいました。
慎は「誰それ?俺は慎次だよ」と笑っていましたが、
その笑顔は慎之介様そのものです。
「神様、駒凛様、お許しください。
今、この世界にいる時間だけは、心のままに慎と過ごさせてください。」
と私は心の中で願いました。
私たちのやりとりを見ていた慶は、
「お~、付き合って2か月半にもなると、お熱いことでいいね~」
と冷やかしました。
澪は「慶は慎を見習いなさいよ~」と頬を膨らませて可愛らしく言いました。
そんな澪が、私は少し羨ましいです。
更衣室で、澪が心配そうにと声を掛けてくれました。
「駒凛、大丈夫?私がフォローするから今日は楽しもうよ!」
私は意を決して、澪に打ち明けました。
「ねえ、澪。慎は、私がいた世界の佐川慎之介様に似ているの。
お顔立ちや雰囲気がそっくり。」
「彼氏ってこと?」
「私が好きだった人。
ただ、私は嫁ぎ先が決まっていて、身分もあって、
心の中で勝手に好きになっていた人」
すると澪は、私の目をまっすぐ見て言いました。
「この世界では駒凛と慎は付き合ってるんだからさ、
そんなの関係ないじゃない!
もし、あなたがこの世界の慎を好きになったなら、
本当に付き合っちゃえばいいじゃん!」
その言葉に、私は救われた気がしました。
この世界では私は自由なのだと。
しかし、澪の表情にはどこか影があるようにも見え、
何かを隠しているように感じました。
水着に着替えた私たちは、最初に造波プールで遊びました。
プールは初めてでしたが、肌を露出することへの恥ずかしさも忘れ、
幼い頃のように無邪気に遊びました。
慎は、微笑みながら優しい瞳で私を見つめていました。
私の笑顔を見た慶は「駒凛もこんなに笑うんだ~」と少し驚き、
澪は優しく微笑んでくれました。
私の笑顔は慎にはどう映っていたのでしょうか。
その後、ウォータースライダーへ向かいました。
澪が「一緒に滑った男女は必ず結ばれる伝説があるんだって」と言うと、
慶は「もう俺たちは結ばれちゃってるけどな~」と得意げに言いました。
私は違います。慎之介様への片思いです。
そして、この世界の慎と結ばれているのは、「駒凛様」です。
澪と慶が体を密着させて乗っているのを見て、
私は最高潮の緊張に襲われました。
「駒凛、大丈夫か?高い所はダメだったよな、やめとくか?」
と慎次が気遣ってくれます。
「いえ、大丈夫です。行きましょう。」
いつも遠くから見ていた慎之介様が、今はこんなにも近くにいる。
慎の優しい眼差しに、私は慎之介様の面影を重ねていました。
それは、私を警護してくださっていたあの頃の、慎之介様の眼差しです。
「あなたは本当は慎之介様ではありませんか?」という思いが、
私の心の中をぐるぐる巡ります。
その夜、慎から電話がありました。
「駒凛、今日のプール楽しかったな。」
「うん、また行きたいね。」
「行けるよ、今度は二人で行こうか。」
「うん」
元の世界では考えられない「二人で」という言葉に、
私の心は揺れ動きました。
「でもさ、今日の駒凛は元気が無かったっていうか、
いつもと違って様子が変だった気がするけど、大丈夫か?」
と慎は心配そうな声で尋ねてくれました。
「疲れていただけだよ。」
「インターハイの後だもんな、無理はするなよ。
明日は家族でお墓参りだろ。うちもだから明日は会えないな。」
「うん」
「14日の花火は行くだろ。」
「花火?う、うん、行く。」
「早めに行ってさ、屋台とか行こうよ。」
「うん、いいよ。初めて二人で見る花火だもんね。」
「じゃあ、また明日夜に電話する。おやすみ、駒凛」
「おやすみ、慎」
この世界の話し方にまだぎこちない私とは違う、慎の自然な言葉。
やはりあなたは慎之介様ではなく、この世界の慎次なのですね。
令和7年8月12日
私は山形市立高校剣道部の仲間、慎次と慶、
そして親友の澪と4人でプールに行きました。
慎次と慶は2年生、私と澪は1年生です。
待ち合わせの山形駅に着くと、
写真で見た慎之介様にそっくりな男性がいました。
しかし、この世界に慎之介様がいるはずがありません。
その方は、駒凛様の彼氏 慎次です。
緊張している私を、慎次は笑顔で迎えてくれました。
一方、慶は「澪、駒凛、遅いよ!早く行こうぜ!」
待ちきれない様子でした。
「ごめん!」と澪が謝ると、
私は癖で「申し訳ございません」と口にしてしまいました。
「なんだよ、今日は駒凛まで変な感じだな!
慎もだけど、堅っ苦しい話し方はやめろよな。」
と慶は少し戸惑っていますした。
すると澪がまた助けてくれました。
「二人は歴史オタクだから、また影響されたんじゃない。
それより、早くプールに行こうよ。」
この世界にまだ慣れない私が堅い話し方をすると、
いつも澪が私を助けてくれます。
プールまではバスで15分ほどです。
バスの中では、慎次と体が触れるほどの近さで座りました。
私の緊張が伝わったのか、慎次は何も話さず、
会話のないままプールに到着しました。
バスを降りるとき、慎次が優しく手を差し出してくれました。
私は初めて異性と手をつなぎました。
「ありがとう、慎」
「どういたしまして、駒凛様」
その言葉を聞いた瞬間、私は「慎之介様!」と叫んでしまいました。
慎は「誰それ?俺は慎次だよ」と笑っていましたが、
その笑顔は慎之介様そのものです。
「神様、駒凛様、お許しください。
今、この世界にいる時間だけは、心のままに慎と過ごさせてください。」
と私は心の中で願いました。
私たちのやりとりを見ていた慶は、
「お~、付き合って2か月半にもなると、お熱いことでいいね~」
と冷やかしました。
澪は「慶は慎を見習いなさいよ~」と頬を膨らませて可愛らしく言いました。
そんな澪が、私は少し羨ましいです。
更衣室で、澪が心配そうにと声を掛けてくれました。
「駒凛、大丈夫?私がフォローするから今日は楽しもうよ!」
私は意を決して、澪に打ち明けました。
「ねえ、澪。慎は、私がいた世界の佐川慎之介様に似ているの。
お顔立ちや雰囲気がそっくり。」
「彼氏ってこと?」
「私が好きだった人。
ただ、私は嫁ぎ先が決まっていて、身分もあって、
心の中で勝手に好きになっていた人」
すると澪は、私の目をまっすぐ見て言いました。
「この世界では駒凛と慎は付き合ってるんだからさ、
そんなの関係ないじゃない!
もし、あなたがこの世界の慎を好きになったなら、
本当に付き合っちゃえばいいじゃん!」
その言葉に、私は救われた気がしました。
この世界では私は自由なのだと。
しかし、澪の表情にはどこか影があるようにも見え、
何かを隠しているように感じました。
水着に着替えた私たちは、最初に造波プールで遊びました。
プールは初めてでしたが、肌を露出することへの恥ずかしさも忘れ、
幼い頃のように無邪気に遊びました。
慎は、微笑みながら優しい瞳で私を見つめていました。
私の笑顔を見た慶は「駒凛もこんなに笑うんだ~」と少し驚き、
澪は優しく微笑んでくれました。
私の笑顔は慎にはどう映っていたのでしょうか。
その後、ウォータースライダーへ向かいました。
澪が「一緒に滑った男女は必ず結ばれる伝説があるんだって」と言うと、
慶は「もう俺たちは結ばれちゃってるけどな~」と得意げに言いました。
私は違います。慎之介様への片思いです。
そして、この世界の慎と結ばれているのは、「駒凛様」です。
澪と慶が体を密着させて乗っているのを見て、
私は最高潮の緊張に襲われました。
「駒凛、大丈夫か?高い所はダメだったよな、やめとくか?」
と慎次が気遣ってくれます。
「いえ、大丈夫です。行きましょう。」
いつも遠くから見ていた慎之介様が、今はこんなにも近くにいる。
慎の優しい眼差しに、私は慎之介様の面影を重ねていました。
それは、私を警護してくださっていたあの頃の、慎之介様の眼差しです。
「あなたは本当は慎之介様ではありませんか?」という思いが、
私の心の中をぐるぐる巡ります。
その夜、慎から電話がありました。
「駒凛、今日のプール楽しかったな。」
「うん、また行きたいね。」
「行けるよ、今度は二人で行こうか。」
「うん」
元の世界では考えられない「二人で」という言葉に、
私の心は揺れ動きました。
「でもさ、今日の駒凛は元気が無かったっていうか、
いつもと違って様子が変だった気がするけど、大丈夫か?」
と慎は心配そうな声で尋ねてくれました。
「疲れていただけだよ。」
「インターハイの後だもんな、無理はするなよ。
明日は家族でお墓参りだろ。うちもだから明日は会えないな。」
「うん」
「14日の花火は行くだろ。」
「花火?う、うん、行く。」
「早めに行ってさ、屋台とか行こうよ。」
「うん、いいよ。初めて二人で見る花火だもんね。」
「じゃあ、また明日夜に電話する。おやすみ、駒凛」
「おやすみ、慎」
この世界の話し方にまだぎこちない私とは違う、慎の自然な言葉。
やはりあなたは慎之介様ではなく、この世界の慎次なのですね。
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