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悲劇の始まり
第十二話 駒姫編:海の向こうの自由
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運命の文禄四年、そして令和へ――
令和7年8月16日
神様、お願です。もう1日だけこの世界にいさせてください。
私は慎と海が見たい。
お願です。目を開けたら慎の写真が見えますように。
「神様、ありがとう。願いをお聞き届けくださったのですね。」
私は人生で恐らく、最初で最後の海をみることができます。
朝食を食べている私の表情を見たお母さんから言われました。
「駒凛。やっと駒凛らしい優しい表情に戻ったね。」
「そうかな?」
「だって、インターハイから帰って来てから、駒凛おかしかったもん。
他人行儀と言うか、人の顔色ばっかり伺って、
自分の気持ちを隠している感じだったよ。」
「そんなことないよ。」
「今朝はさあ、慎ちゃんに会えるから嬉しいって、顔に書いてあるよ
いつもの、恋する乙女に戻ったね。」
「やめてよ~」
澪とのお出掛け、プール、慎と花火やお城デート
この世界に来て時が経つにつれて、私は心の奥底にある感情が
自然と表情に出るようになったようです。
隠すことなく。
そして、朝8時に山形駅で慎と待合わせて、電車で仙台へと向かいました。
「二人で遠出するのは初めてだね。」
「うん、早く海を見てみたい。」
「なんか、生まれて初めて見るみたいな言い方だね。」
「だって、初めてだもん。」
「なわけ、ないっしょ。」
「だよね。」
こんな冗談も私は言えるようになっていました。
でも、初めてなのは本当です。
仙台駅で電車を乗り換えて松島へ向かい、
松島海岸駅で電車を降りると、
海の匂いと初めて聞く鳥の鳴き声が聞こえてきます。
これがカモメの声
海が近い。
幼い頃、初めてお城の外へ出た時に抱いた
ときめいた感情を思い出しました。
涼しい海風が心地よく、私と慎は深呼吸をして、海を感じました。
雄島に向かう途中、海が見えてきて点在する島々が見えます。
渡月橋を渡り、雄島へ行きました。
松島は伊達 政宗様に縁深い地であることが分かりました。
観光船に乗ると、海をより近くに感じることができ、
遠くの海まで見渡せます。
果てしなく広がる海は、ずっと遠くで空と一つに結ばれています。
「この海の向こうには、自由の国アメリカがあるんだよね。
」
「自由の国?そんな世界があるなら行ってみたいな~」
「いつか行けるよ」
「その時が来れば慎。一緒に来てくれる。」
「もちろん。」
遮るものが無くどこまでも続く海
海の匂い、吹き抜ける爽やかな海風
私の心の声が自然とこぼれ落ちた。
「本当にそんな世界があるなら、すべてを捨てて慎と二人行きたい。」
「行けるさ。」
私の中から感情が堰を切ったように溢れ出て来ました。
『私はこのまま駒凛様になって、ずっと慎のそばにいたい。』
『大坂なんか行きたくない。』
『好きでもない人に嫁ぎたくない。』
『父上、母上、お許しください。』
『でも・・・そうしたら駒凛様は・・・最上家は・・・』
やはり、私は自分の気持ちを殺さないといけないのですね。
そして、松島を後にした私たちは仙台へ戻りました。
山形の穏やかな雰囲気や松島の海の絶景とは異なり、
仙台はビルが幾つも立ち並ぶ都会でした。
人が多く、車が多く、巨大な仙台駅
ここが過去に父上と対立した伊達様の街。
私と慎は駅前の商業施設で少し遊んでお土産を買って、
山形行きの電車に乗りました。
私は仙台、いえ都会は合わないようです。
穏やかな雰囲気の山形が好きです。
噂で聞く『華やかな都』や『にぎやかな大坂』より山形が好きです。
「慎、今度は仙台で歴史巡りをしようよ。」
「そうだね。でも、お金も貯めないと。」
そうだ、私は駒凛様のお金を少しばかり拝借しておりました。
その後、慎は疲れて赤子のように寝てしまいました。
寝ている慎を見つめながら、わたしは決意しました。
こうして、あまりにも自由で幸せな時を私は過ごせました。
神様、ありがとうございます。
もう、十分です。
早く元の世界に戻らないと、
最上家、山形にどのような禍が降り掛かるか分かりません。
私をお戻しください。
私は意を決して、六椹八幡宮で聞こえたように、
静かに瞳を閉じました。
『慎、ありがとう。さようなら。駒凛様が帰って来ます。』
家に着いたのは夜の8時過ぎでしょうか。
その夜、私は祖母に電話しました。
「おばあ様、わたくしは覚悟ができました。
元の世界に戻りとうございます。」
「駒凛ちゃん・・・」
「先日、六椹八幡宮へ行ったときに、
神様が『瞳を閉じなさい』とおっしゃった気がして、
やってみたのですが、戻れませんでした。
おばあ様であれば、何か分かると思って・・・」
「駒凛ちゃん、それはね。今はその時じゃないんだよ。
神様は『まだこの世界にいなさい』って言っているの。
まだ、この世界にいていいんだよ。
安心してまだこの世界にいなさい。」
「おばあ様・・・ありがとう・・・」
私は嬉しいのになぜ、涙が流れるのでしょうか。
悲しみ以外の感情でも涙は流れるのですね。
令和7年8月16日
神様、お願です。もう1日だけこの世界にいさせてください。
私は慎と海が見たい。
お願です。目を開けたら慎の写真が見えますように。
「神様、ありがとう。願いをお聞き届けくださったのですね。」
私は人生で恐らく、最初で最後の海をみることができます。
朝食を食べている私の表情を見たお母さんから言われました。
「駒凛。やっと駒凛らしい優しい表情に戻ったね。」
「そうかな?」
「だって、インターハイから帰って来てから、駒凛おかしかったもん。
他人行儀と言うか、人の顔色ばっかり伺って、
自分の気持ちを隠している感じだったよ。」
「そんなことないよ。」
「今朝はさあ、慎ちゃんに会えるから嬉しいって、顔に書いてあるよ
いつもの、恋する乙女に戻ったね。」
「やめてよ~」
澪とのお出掛け、プール、慎と花火やお城デート
この世界に来て時が経つにつれて、私は心の奥底にある感情が
自然と表情に出るようになったようです。
隠すことなく。
そして、朝8時に山形駅で慎と待合わせて、電車で仙台へと向かいました。
「二人で遠出するのは初めてだね。」
「うん、早く海を見てみたい。」
「なんか、生まれて初めて見るみたいな言い方だね。」
「だって、初めてだもん。」
「なわけ、ないっしょ。」
「だよね。」
こんな冗談も私は言えるようになっていました。
でも、初めてなのは本当です。
仙台駅で電車を乗り換えて松島へ向かい、
松島海岸駅で電車を降りると、
海の匂いと初めて聞く鳥の鳴き声が聞こえてきます。
これがカモメの声
海が近い。
幼い頃、初めてお城の外へ出た時に抱いた
ときめいた感情を思い出しました。
涼しい海風が心地よく、私と慎は深呼吸をして、海を感じました。
雄島に向かう途中、海が見えてきて点在する島々が見えます。
渡月橋を渡り、雄島へ行きました。
松島は伊達 政宗様に縁深い地であることが分かりました。
観光船に乗ると、海をより近くに感じることができ、
遠くの海まで見渡せます。
果てしなく広がる海は、ずっと遠くで空と一つに結ばれています。
「この海の向こうには、自由の国アメリカがあるんだよね。
」
「自由の国?そんな世界があるなら行ってみたいな~」
「いつか行けるよ」
「その時が来れば慎。一緒に来てくれる。」
「もちろん。」
遮るものが無くどこまでも続く海
海の匂い、吹き抜ける爽やかな海風
私の心の声が自然とこぼれ落ちた。
「本当にそんな世界があるなら、すべてを捨てて慎と二人行きたい。」
「行けるさ。」
私の中から感情が堰を切ったように溢れ出て来ました。
『私はこのまま駒凛様になって、ずっと慎のそばにいたい。』
『大坂なんか行きたくない。』
『好きでもない人に嫁ぎたくない。』
『父上、母上、お許しください。』
『でも・・・そうしたら駒凛様は・・・最上家は・・・』
やはり、私は自分の気持ちを殺さないといけないのですね。
そして、松島を後にした私たちは仙台へ戻りました。
山形の穏やかな雰囲気や松島の海の絶景とは異なり、
仙台はビルが幾つも立ち並ぶ都会でした。
人が多く、車が多く、巨大な仙台駅
ここが過去に父上と対立した伊達様の街。
私と慎は駅前の商業施設で少し遊んでお土産を買って、
山形行きの電車に乗りました。
私は仙台、いえ都会は合わないようです。
穏やかな雰囲気の山形が好きです。
噂で聞く『華やかな都』や『にぎやかな大坂』より山形が好きです。
「慎、今度は仙台で歴史巡りをしようよ。」
「そうだね。でも、お金も貯めないと。」
そうだ、私は駒凛様のお金を少しばかり拝借しておりました。
その後、慎は疲れて赤子のように寝てしまいました。
寝ている慎を見つめながら、わたしは決意しました。
こうして、あまりにも自由で幸せな時を私は過ごせました。
神様、ありがとうございます。
もう、十分です。
早く元の世界に戻らないと、
最上家、山形にどのような禍が降り掛かるか分かりません。
私をお戻しください。
私は意を決して、六椹八幡宮で聞こえたように、
静かに瞳を閉じました。
『慎、ありがとう。さようなら。駒凛様が帰って来ます。』
家に着いたのは夜の8時過ぎでしょうか。
その夜、私は祖母に電話しました。
「おばあ様、わたくしは覚悟ができました。
元の世界に戻りとうございます。」
「駒凛ちゃん・・・」
「先日、六椹八幡宮へ行ったときに、
神様が『瞳を閉じなさい』とおっしゃった気がして、
やってみたのですが、戻れませんでした。
おばあ様であれば、何か分かると思って・・・」
「駒凛ちゃん、それはね。今はその時じゃないんだよ。
神様は『まだこの世界にいなさい』って言っているの。
まだ、この世界にいていいんだよ。
安心してまだこの世界にいなさい。」
「おばあ様・・・ありがとう・・・」
私は嬉しいのになぜ、涙が流れるのでしょうか。
悲しみ以外の感情でも涙は流れるのですね。
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