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月夜桜

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第一章 忍び寄る影

7話 研修会初日 朝 その一

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 四月十三日。
 忠長は風紀委員長の呼び出しで集合時刻よりも早くに正門前駅に集まっていた。

「はい、皆、おはよう!」
「「「おはようございます!」」」
「うんうん、元気がいいね! それじゃあ、簡潔に用件を話すと、風紀委員──特に罰員はこの無線機を常に携帯してもらいます。なので、今からその説明をするね!」

 虹海はそう言いながら、人数分の説明書とハンディータイプ無線機を渡していく。

「そこの説明書に書いてあるのが君たちの呼出符号コールサインね。他の局の呼出符号も載ってるから確認しておいてね。因みに、私はCOだからね。……まぁ、説明書を読めば大体わかると思うけど、無線内容は絶対に漏らしたらだめだからね。……と、そろそろ始まるかな。みんな、無線機の電源を入れて、ダイアルを回して、えーと、風紀部はチャンネル六番。罰員は九番ね」

 その言葉通り、忠長とは慣れた手つきで無線機を設定していく。

「皆、準備できた?」

 各々頷く一年生たち。そんな彼らを後目に、虹海は「これから無線機の確認が行われるから、私の言葉をよく聞いといてね」と言う。
 ピー↑ロー↓、という注意喚起音が鳴らされ、梓紗の声が聞こえてくる。

『皆さん、おはようございます。風紀委員各局、此方は風紀委員本部。只今より、定時通話試験を行います。只今試験中。本日は晴天也、本日は晴天也、本日は晴天也。此方は風紀委員本部。風紀委員本部からCO、感明ありますか? どうぞ』
「COから風紀委員本部、感明良好だよ、おはよう。どうぞ」
『CO、風紀委員本部、感明良好、了解。おはようございます。続いてCP1、感明ありますか? どうぞ』
『CP1から風紀委員本部、感明良好。どうぞ』
『CP1、風紀委員本部、感明良好、了解。続いてPE1、感明ありますか? どうぞ』
『PE1から風紀委員本部、感明良好やで』

 段々と無線機確認の順番が近付いてくる。
 風紀部の一年、コールサインで言えばPE18にあたる生徒の番が回ってきた。

『──続いて、PE18、感明ありますか? どうぞ』
「えーっと」
『風紀委員本部からPE18、感明ありますか? どうぞ』
「えっとね、ここを押しながらここに向かって喋るの」

 虹海が手を添え、男子生徒の口元へ無線機を持っていく。

「えっと、PE18から風紀委員本部、感明良好です。どうぞ」
『PE18、風紀委員本部、感明良好、了解。続いてPE19、感明ありますか? どうぞ』

 忠長はこの間、説明書に書かれてあったコールサインから指揮系統を把握する。
 纏めると、CO──つまり、委員長である虹海が現場で指揮を執り、その次に風紀委員本部が情報を統合し、そしてCPが風紀委員本部の統合した情報を基に自身の担当する局、PEやPSへ指示を出す、といった運用を取っているようだ。そして、緊急の対応をする必要がある場合は、CPの無線に割り込んで風紀委員本部が指示を出せるようだ。
 余談だが、COはCommanding Officer、CPはCommanding Post、PEはPatrol Environment、PSはPatrol Soulの略だ。
 なぜ風紀委員は、人員を表すPersonnelではなく、Soulを使っているのかと言えば、単純にPPという連続した同音語は聴き取り難かったからである。無線の状況によれば、PPがPEに聴こえたりする問題を解決するために、わざとSoulを使うことになったのだった。
 忠長は、それを回避するためにフォネティックコードがあるのでは……? と、考えたが、ツッコんだら負けな気がしたので控えた。

『続いてPS17、感明ありますか? どうぞ』

 忠長の番がやってきた。この手の通話試験は自衛隊でも頻繁に行っているので慣れたものだ。他の生徒のように、言葉に詰まったり、操作方法が分からなかったりなどといったことはなく、難なく終わらせる。

「PS17から風紀委員本部、感明良好。おはようございます。どうぞ」
『PS17、風紀委員本部、感明良好、了解。おはようございます。続いて、PS18、感明ありますか? どうぞ』
「PS18から風紀委員本部。感明良好。おはようございます。どうぞ」
『PS18、風紀委員本部、感明良好、了解。おはようございます。全局からの感明良好。以上、PS18の終話を以て通話試験を終了する。以上、風紀委員本部』

 雫が返答したところで通話試験が終了した。

「と、これを週一回、本来は日曜にやるんだけど、今日は特別。基本的には授業中にもつけておいてね。今日は私も同行するから、よろしくね♪ それじゃあ、あっちで先生たちが待ってるから、解散!」

 その言葉と同時に立ち上がり、各々の担任のところへと歩いていく。
 忠長と雫も担任の下に行こうとすると、虹海に止められる。

「忠長君と雫ちゃん、君たちには私の護衛をしてもらおうと思います」
「……それに異存はないのですが、市内観光などはどうすれば」
「それは普通に参加してもらっていいよ。護衛をしてほしいのはオリエンテーションの時だけね」
「了解しました」
「ん。私も」
「二人とも、ありがとね!」

 虹海と別れ、二人並んで歩くのであった。
 ……美少女を連れ歩いていた忠長に、同じクラスの男子からのヘイトが集まったのは言うまでもなかった。
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