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魔術学園の講師を始めました5

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 さて、少しだけ、昔話をしましょう。
 これは、とある少年と少女が、王立魔術学校に入学した時のお話です。

 ☆★☆★☆

「なんじゃ、な、なんなんじゃ君たちは!?」
「何って……王立魔術学校の入学試験を受けに来た受験生……ですか?」
「あ、ありえん……ありえんぞっ!! A級どころか、S級魔術・・・・までも【解呪ディスペル】する? そんなこと認めんっ!」
「認めるも何も、実際にやってるんだから、認めなさいよ」

 駄々? を捏ねる学園長に【雷鳥】を8発撃ち込むエルミアナ伯爵令嬢。

「あぶないじゃろうが!!」
「あら? それにしてはまだまだ余裕があるみたいだけど?」

 続け様に【閃雷】を起動させる彼女。
 うん、僕の指導の介があったね。僕が伯爵様に拾われてから指導して1年だけど、随分と成長してる。

「ほら、さっさと来なさい? 試験はまだ終わってないんでしょう?」

 ……ルミナ、流石に挑発はどうかと思うよ?

「くっ……天下の大魔術師が、こんな所で負ける訳にはッ!」
「おっと、その魔術はいただけませんね。分解・・させていただきますね?」
「んなぁ!? ワシの……ワシの十八番の【流星雨】を妨害しただとぉ!?」

 いや、この人、入試程度でそんな危ないものを使おうとしてたのか……。
 確か、【流星雨】は魔神戦争で神を討ち滅ぼしたと言われている戦略級魔術だったはず……。
 そんなものを使ってくるなんてこのエルフ、頭の螺子が2、3本無くなっているんじゃなかろうか。
 にしても──

「このぐらい、コツを掴めば誰でも出来ますよね? 王都にはもっと凄い人は幾らでもいるとお伺いしていたのですが。《闇沼》」

 学園長の足下に闇が広がるが、避けられてしまう。
 ……やっぱりこれぐらいじゃ勝てないか。

「こ、この王都に──この世界にA級以上の魔術を解呪出来る奴がどれほど要ると思っとる!? い、一般常識では、A級以上の魔術は解呪出来ないのだぞ!!」
「……そんなことはないと思うのですが? 現に、戦略級魔術【流星雨】を妨害したじゃないですか」

 ちらっと隣にいるルミナを見る。
 目が合い、まだ幼さの残る眩しい笑顔で頷いた。……可愛いんだよな、やっぱり。
 次の瞬間、有り得ない程の静謐性で幻術を起動したルミナは、何事も無いように学園長の後ろまで歩き、身体強化魔術を施してから彼の吾人に回し蹴りをした。
 吹き飛ばされた学園長は、突然の出来事に戸惑い、体勢を立て直す暇も無い。
 そこに、18羽の【雷鳥】が追い討ちを掛ける。

 ……うん、多分これで行けただろうけど、念の為、拘束魔術で拘束しておこう。

 立ち上った土埃が晴れると──


 ──この後、学園長室に呼び出されたということだけは、言っておきましょう。
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