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魔術学園の講師を始めました6
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「「「「お帰りなさいませ、ノワール様!」」」」
ルーラー家の扉を開けると見覚えのあるメイドさん達が出迎えてくれた。
1番前で出迎えてくれたブロンド髪のメイドさんはメイド長兼令嬢姉妹付きのユイさんだ。
んー、やっぱりこの人の歳が分からn──
「ノワール様? なにか、失礼なことを考えましたか?」
怖い。この人の笑顔、怖い。
「い、いえ、なんでもないです。皆さん、僕のことなんて放っていてもいいんですよ? 僕は拾われた身なので」
「そ、そんな恐れ多いこと出来ませんっ! ノワール様はいずれお嬢様の伴侶──つまりは、私達の御主人様になられるのですから☆」
……お茶目なメイドさんが何か仰せられています。
あの、ソフィアさん、露骨に不機嫌になるのはやめてくれませんか?
「ユイ、その辺にしときなさい?」
その声の方向を見ると、暗い灰色の長髪のエルミアナ=ルーラー伯爵令嬢が立っていた。
「……ルミナ、久しぶり」
次の瞬間、ルミナは僕の胸に飛び込んで来た。
ソフィが驚いているような気配がする。
「……ばか。……なんでもっと会いに来ないのよ」
「……はぁ、甘えん坊なお嬢様ですね? 僕は何処で育て方を間違えたのでしょう?」
「甘えん坊で何が悪いのよぉ……あと、お嬢様って言うなぁ」
あー、うん。これはだいぶまいってるね。
彼女の頭を撫でつつ、問い掛ける。
「そこまで、宮廷魔導師団が嫌?」
「私はねぇ! 貴方と同じ職場で働きたかったのよっ! それを、貴方は、貴方っていう人はっ!!」
うん、その事か。もう1年も前の話なのに、この子は。本当に優しい子なんだから。
「ごめん、その事は謝るよ。ただ、宮廷魔導師団に入って、ディストーレの本家に僕が生きていることを知られたら、意味が無いからね」
僕の服の裾がくいくいと引かれる。その方を見ると僕を見つめる2つの目が。
その目は『ディストーレにバレたらダメってどういうこと!?』と言っている。
あー、うん。その事も話さないといけないな。
取り敢えず
「ユイさん、内庭を使わせてもらってもいいですか? 出来れば、紅茶の用意もしていただけると嬉しいです」
「! 分っかりました! 皆さん、行きますよー!」
……あの人、ほんとに元気だな。ちょっと和む。
「お願いします。ほら、ルミナ、お茶を飲みに行くよ?」
「ん!!」
なんですか、その手は。両手を僕に向かって差し出して、何をしろと?
……ああ、そうですか。でも、この数年間で僕は学びました。この子を甘やかすとその内僕まで被害を被ります。
魔術を使って持ち上げると、何やら物凄く不服そうな顔をして僕の右腕を蹴ってきます。
こらこら、君、今ドレスなんだから、そんなに暴れると中が見えるよ?
「中なんて見えないわよ!! ていうか、貴方が見せるような事はしないって分かってるもん!」
いや、もんって……あとさぁ、心を読むのやめてくれない? え? 読んでない? 声に出てた?
……さぁ! いくぞぉ!
☆★☆★☆
「ノワール様、お待ちしておりました」
「ユイさん、相変わらず仕事が早いですね」
「お褒めに与り光栄でございます」
「はい、お嬢様? どうぞ」
僕は、椅子を引いてルミナに着席を促す。
「ん」
「ソフィアお嬢様も、どうぞ」
「ありがとう、兄様」
2人が座った所で僕も座る。
ルミナは足を組んで優雅に? 紅茶を飲む。
「ルミナ、足を組むのは良くないよ? もっとお淑やかに、ね?」
「……ねぇ、ずっと思っていたんだけど、ユイ、貴女、私とシスティ、それと母様の専属メイドよね? 何故、ノワールとの方がメイドメイドしているのかしら??」
「る、ルミナお嬢様、そ、それは、ノワール様がお嬢様の将来の伴侶になられる方ですので──」
まぁーた、有り得もしないことを言う。
「ユイさん、少し、戯れが過ぎますよ? 爵位を持っているとは言え、僕は〝名誉〟子爵です。伯爵家の御令嬢と婚姻を結ぶには不釣り合いですよ」
「──っ!! ……申し訳、ございません」
「ああ、別に怒っているわけじゃないですから。僕は、メイドさん達には出来るだけ笑顔で過ごして欲しいですし」
痛っ! 目の前の伯爵令嬢様が僕の足を蹴ってきた。
その目には『そういう所よ! そ・う・い・う・と・こ・ろっ!!』
僕が何をしたというんだい?
ただ単に、事実を述べただけじゃないか。
「えっと、兄様。この御方を紹介していただいてもよろしいですか?」
「んー、ああ、そうだね。ソフィ、この甘えん坊お嬢様が、僕の主家であるルーラー伯爵家の御令嬢、エルミアナ様。んで、ルミナ。この子が前から話してた僕の妹、ソフィア=ディストーレ。一応、まだ侯爵家なのかな?」
「エルミアナ様。お初にお目にかかります。ディストーレ侯爵家が娘、ソフィア=ディストーレでございます。但し、現在の私は家出をしている身。なので、ただのソフィアです」
ソフィが制服の裾を持ち上げて簡易的なカーテシーをする。
「……ふん。気に入ったわ。ソフィア、よろしくね。ルミナでいいわ」
あのねぇ、仮にも伯爵よりも侯爵の方が偉いんだよ? まぁ、そういう所が好きなんだけれど。
それと、ちょっと聞き捨てならないことが聞こえた気が。
「ソフィ、家出をしたって、どういうこと?」
「んー、ちょっと……学園に行くぐらいなら結婚しろってお母様が煩くて……。だから、家出しちゃった」
「……授業費、どうしてるの?」
「学園長に相談したら、月々で立て替えてくれるって」
あれ、なんか嫌な予感がするぞ? 確か、給料が少し減っていたような。ただ単に減給処分だと思っていたのだけれど……。
「ユイさん」
「はい」
「僕の家に行って、ハルさんに頼んでここ数ヶ月の給料明細と僕の魔杖──【深淵】。それも長杖の方を持ってきてもらえませんか?」
「畏まりました」
ユイさんが、一切の魔術の起動も魔力の流れも感じさせずに消える。
……あの人、本当に何者なんだろうか。聞いた話によると──
──首筋に冷たい物を感じる。
「ノワール様? 乙女の秘密を探るのはあまりマナーが宜しくないですよ?」
……一切の気配を感じなかった。
「ユ、ユイさん。お使いは──」
「こちら、3ヶ月分の給料明細と長杖【深淵】でございます」
「……ありがとうございます。どれどれ……やっぱり」
気にしない。気にしないぞぉ! どんなにお使いを終えるのが早くても、ぜんっぜんっ、僕は気にしないぞぉっ!
……こほん。給料明細を比べると、先月分から授業の年間費を12ヶ月で割った給料が天引きされているようだ。
僕の雰囲気を感じ取ったのか、先程まで黙々と紅茶を飲んでいた目の前のお嬢様は魔力を練り始める。
「ちょっと……これは、総当たり戦前にお仕置が必要みたいですね。ルミナ」
「ん。【雷鳥】ね? 何発撃ち込むの?」
「17発」
「りょうかーい。目標は?」
「学園長室。今日は、学園の方に顔を出してるみたい。部屋の中に無関係者無し」
そういいながら、長杖を構える。
魔杖【深淵】
闇属性の魔術を使うことに特化した、僕専用の魔杖だ。
毎日毎日、コツコツと魔力を貯めたこれがあれば、魔力量が少なくて普段は使えないA級魔術を使う事が出来る。
さぁて、お仕置の時間ですよ、学園長♪
勝手に僕の給料を天引きして、あまつさえ妹の家出を助長させるような事をしてくれた、ね?
「ええと、ここからだと……あっちか。《我は闇を統べる者・裏を統べる者・光を打ち消す者・仇なす者に神の裁きを》」
「てい♪」
次の瞬間、禍々しい魔術式と神々しい魔術式が展開され、起動。闇の炎を纏った【閃雷】の様な物が4発、学園長室に向かって撃ち出される。
それを追随するようにして、可愛らしい動きで起動したルミナの【雷鳥】が17羽、飛翔する。
学園長~頑張ってくださいね~。その【天照】は、防郭術式を簡単に破壊して、触れた物が燃え尽きるまで中々消えない炎を撒き散らしますからね~
「ふぅ、スッキリした」
「ええ、そうね。……なによ、ソフィア。言いたいことがあれば言いなさいよ」
「いや、あの、兄様、もしかして、私がこっちに出てきたこと、怒ってますか?」
不安そうにソフィが見てくる。
「ソフィ、僕は君が王都に出てきたことに関しては怒ってないよ。起こってしまったことはもう変えられないしね」
「こいつが貴女の事を心配していたのは事実よ。私が保証してあげる」
「ちょ、ちょっとルミナ!」
「なによ、事実でしょ?」
くっ……今まで散々おちょくってきた弊害がこんな所で……っ!
「そういえば、ソフィ。今は何処に住んでるの?」
「えっと、宿に泊まっています」
……いやソフィアさん、マジですか。
「追加で後6発ぐらい【雷鳥】を撃ち込んだ方が良かったかしらねぇ?」
「奇遇だね。僕も同じことを考えてた。それよりも、ソフィ、ここか僕の家に泊まりなさい。宿はダメです」
「に、兄様の家がいいですっ!」
「むぅ……」
お嬢様が不服そうに見てくる。
いや、君、一時期、御屋敷を家出して僕と一緒に住んでたじゃないか。
この子、僕の妹だよ? それに目くじらを立てるのはダメだと思うな?
「分かったよ」
ソフィの頭を撫でながら通信宝珠を起動する。
「ハルさん、泊まりの来客が1人来ます。期間は未定ですが、来週中にケリをつけます」
『了解しました☆』
宝珠の向こうからきゃぴっとした声が聞こえてくる。
この人もユイさんの洗礼を受けて超人になった人だ。というか、うちのメイドさんは全員ユイさんの洗礼を受けている。
曰く「将来、私共の御主人様となられる御方に生半可なメイドを付けることなど出来ませんっ!」と。
うちの可愛らしいメイドさん達に何をしてくれたんですか、ほんとに。
「ぐるるるるる……ノワール! 私も貴方の家に行くわ!」
「ダメです」
「いじわるっ!!」
……こんな日常が続けばいいなぁ。第3王子の件もあるから、望み薄だけどね。
ルーラー家の扉を開けると見覚えのあるメイドさん達が出迎えてくれた。
1番前で出迎えてくれたブロンド髪のメイドさんはメイド長兼令嬢姉妹付きのユイさんだ。
んー、やっぱりこの人の歳が分からn──
「ノワール様? なにか、失礼なことを考えましたか?」
怖い。この人の笑顔、怖い。
「い、いえ、なんでもないです。皆さん、僕のことなんて放っていてもいいんですよ? 僕は拾われた身なので」
「そ、そんな恐れ多いこと出来ませんっ! ノワール様はいずれお嬢様の伴侶──つまりは、私達の御主人様になられるのですから☆」
……お茶目なメイドさんが何か仰せられています。
あの、ソフィアさん、露骨に不機嫌になるのはやめてくれませんか?
「ユイ、その辺にしときなさい?」
その声の方向を見ると、暗い灰色の長髪のエルミアナ=ルーラー伯爵令嬢が立っていた。
「……ルミナ、久しぶり」
次の瞬間、ルミナは僕の胸に飛び込んで来た。
ソフィが驚いているような気配がする。
「……ばか。……なんでもっと会いに来ないのよ」
「……はぁ、甘えん坊なお嬢様ですね? 僕は何処で育て方を間違えたのでしょう?」
「甘えん坊で何が悪いのよぉ……あと、お嬢様って言うなぁ」
あー、うん。これはだいぶまいってるね。
彼女の頭を撫でつつ、問い掛ける。
「そこまで、宮廷魔導師団が嫌?」
「私はねぇ! 貴方と同じ職場で働きたかったのよっ! それを、貴方は、貴方っていう人はっ!!」
うん、その事か。もう1年も前の話なのに、この子は。本当に優しい子なんだから。
「ごめん、その事は謝るよ。ただ、宮廷魔導師団に入って、ディストーレの本家に僕が生きていることを知られたら、意味が無いからね」
僕の服の裾がくいくいと引かれる。その方を見ると僕を見つめる2つの目が。
その目は『ディストーレにバレたらダメってどういうこと!?』と言っている。
あー、うん。その事も話さないといけないな。
取り敢えず
「ユイさん、内庭を使わせてもらってもいいですか? 出来れば、紅茶の用意もしていただけると嬉しいです」
「! 分っかりました! 皆さん、行きますよー!」
……あの人、ほんとに元気だな。ちょっと和む。
「お願いします。ほら、ルミナ、お茶を飲みに行くよ?」
「ん!!」
なんですか、その手は。両手を僕に向かって差し出して、何をしろと?
……ああ、そうですか。でも、この数年間で僕は学びました。この子を甘やかすとその内僕まで被害を被ります。
魔術を使って持ち上げると、何やら物凄く不服そうな顔をして僕の右腕を蹴ってきます。
こらこら、君、今ドレスなんだから、そんなに暴れると中が見えるよ?
「中なんて見えないわよ!! ていうか、貴方が見せるような事はしないって分かってるもん!」
いや、もんって……あとさぁ、心を読むのやめてくれない? え? 読んでない? 声に出てた?
……さぁ! いくぞぉ!
☆★☆★☆
「ノワール様、お待ちしておりました」
「ユイさん、相変わらず仕事が早いですね」
「お褒めに与り光栄でございます」
「はい、お嬢様? どうぞ」
僕は、椅子を引いてルミナに着席を促す。
「ん」
「ソフィアお嬢様も、どうぞ」
「ありがとう、兄様」
2人が座った所で僕も座る。
ルミナは足を組んで優雅に? 紅茶を飲む。
「ルミナ、足を組むのは良くないよ? もっとお淑やかに、ね?」
「……ねぇ、ずっと思っていたんだけど、ユイ、貴女、私とシスティ、それと母様の専属メイドよね? 何故、ノワールとの方がメイドメイドしているのかしら??」
「る、ルミナお嬢様、そ、それは、ノワール様がお嬢様の将来の伴侶になられる方ですので──」
まぁーた、有り得もしないことを言う。
「ユイさん、少し、戯れが過ぎますよ? 爵位を持っているとは言え、僕は〝名誉〟子爵です。伯爵家の御令嬢と婚姻を結ぶには不釣り合いですよ」
「──っ!! ……申し訳、ございません」
「ああ、別に怒っているわけじゃないですから。僕は、メイドさん達には出来るだけ笑顔で過ごして欲しいですし」
痛っ! 目の前の伯爵令嬢様が僕の足を蹴ってきた。
その目には『そういう所よ! そ・う・い・う・と・こ・ろっ!!』
僕が何をしたというんだい?
ただ単に、事実を述べただけじゃないか。
「えっと、兄様。この御方を紹介していただいてもよろしいですか?」
「んー、ああ、そうだね。ソフィ、この甘えん坊お嬢様が、僕の主家であるルーラー伯爵家の御令嬢、エルミアナ様。んで、ルミナ。この子が前から話してた僕の妹、ソフィア=ディストーレ。一応、まだ侯爵家なのかな?」
「エルミアナ様。お初にお目にかかります。ディストーレ侯爵家が娘、ソフィア=ディストーレでございます。但し、現在の私は家出をしている身。なので、ただのソフィアです」
ソフィが制服の裾を持ち上げて簡易的なカーテシーをする。
「……ふん。気に入ったわ。ソフィア、よろしくね。ルミナでいいわ」
あのねぇ、仮にも伯爵よりも侯爵の方が偉いんだよ? まぁ、そういう所が好きなんだけれど。
それと、ちょっと聞き捨てならないことが聞こえた気が。
「ソフィ、家出をしたって、どういうこと?」
「んー、ちょっと……学園に行くぐらいなら結婚しろってお母様が煩くて……。だから、家出しちゃった」
「……授業費、どうしてるの?」
「学園長に相談したら、月々で立て替えてくれるって」
あれ、なんか嫌な予感がするぞ? 確か、給料が少し減っていたような。ただ単に減給処分だと思っていたのだけれど……。
「ユイさん」
「はい」
「僕の家に行って、ハルさんに頼んでここ数ヶ月の給料明細と僕の魔杖──【深淵】。それも長杖の方を持ってきてもらえませんか?」
「畏まりました」
ユイさんが、一切の魔術の起動も魔力の流れも感じさせずに消える。
……あの人、本当に何者なんだろうか。聞いた話によると──
──首筋に冷たい物を感じる。
「ノワール様? 乙女の秘密を探るのはあまりマナーが宜しくないですよ?」
……一切の気配を感じなかった。
「ユ、ユイさん。お使いは──」
「こちら、3ヶ月分の給料明細と長杖【深淵】でございます」
「……ありがとうございます。どれどれ……やっぱり」
気にしない。気にしないぞぉ! どんなにお使いを終えるのが早くても、ぜんっぜんっ、僕は気にしないぞぉっ!
……こほん。給料明細を比べると、先月分から授業の年間費を12ヶ月で割った給料が天引きされているようだ。
僕の雰囲気を感じ取ったのか、先程まで黙々と紅茶を飲んでいた目の前のお嬢様は魔力を練り始める。
「ちょっと……これは、総当たり戦前にお仕置が必要みたいですね。ルミナ」
「ん。【雷鳥】ね? 何発撃ち込むの?」
「17発」
「りょうかーい。目標は?」
「学園長室。今日は、学園の方に顔を出してるみたい。部屋の中に無関係者無し」
そういいながら、長杖を構える。
魔杖【深淵】
闇属性の魔術を使うことに特化した、僕専用の魔杖だ。
毎日毎日、コツコツと魔力を貯めたこれがあれば、魔力量が少なくて普段は使えないA級魔術を使う事が出来る。
さぁて、お仕置の時間ですよ、学園長♪
勝手に僕の給料を天引きして、あまつさえ妹の家出を助長させるような事をしてくれた、ね?
「ええと、ここからだと……あっちか。《我は闇を統べる者・裏を統べる者・光を打ち消す者・仇なす者に神の裁きを》」
「てい♪」
次の瞬間、禍々しい魔術式と神々しい魔術式が展開され、起動。闇の炎を纏った【閃雷】の様な物が4発、学園長室に向かって撃ち出される。
それを追随するようにして、可愛らしい動きで起動したルミナの【雷鳥】が17羽、飛翔する。
学園長~頑張ってくださいね~。その【天照】は、防郭術式を簡単に破壊して、触れた物が燃え尽きるまで中々消えない炎を撒き散らしますからね~
「ふぅ、スッキリした」
「ええ、そうね。……なによ、ソフィア。言いたいことがあれば言いなさいよ」
「いや、あの、兄様、もしかして、私がこっちに出てきたこと、怒ってますか?」
不安そうにソフィが見てくる。
「ソフィ、僕は君が王都に出てきたことに関しては怒ってないよ。起こってしまったことはもう変えられないしね」
「こいつが貴女の事を心配していたのは事実よ。私が保証してあげる」
「ちょ、ちょっとルミナ!」
「なによ、事実でしょ?」
くっ……今まで散々おちょくってきた弊害がこんな所で……っ!
「そういえば、ソフィ。今は何処に住んでるの?」
「えっと、宿に泊まっています」
……いやソフィアさん、マジですか。
「追加で後6発ぐらい【雷鳥】を撃ち込んだ方が良かったかしらねぇ?」
「奇遇だね。僕も同じことを考えてた。それよりも、ソフィ、ここか僕の家に泊まりなさい。宿はダメです」
「に、兄様の家がいいですっ!」
「むぅ……」
お嬢様が不服そうに見てくる。
いや、君、一時期、御屋敷を家出して僕と一緒に住んでたじゃないか。
この子、僕の妹だよ? それに目くじらを立てるのはダメだと思うな?
「分かったよ」
ソフィの頭を撫でながら通信宝珠を起動する。
「ハルさん、泊まりの来客が1人来ます。期間は未定ですが、来週中にケリをつけます」
『了解しました☆』
宝珠の向こうからきゃぴっとした声が聞こえてくる。
この人もユイさんの洗礼を受けて超人になった人だ。というか、うちのメイドさんは全員ユイさんの洗礼を受けている。
曰く「将来、私共の御主人様となられる御方に生半可なメイドを付けることなど出来ませんっ!」と。
うちの可愛らしいメイドさん達に何をしてくれたんですか、ほんとに。
「ぐるるるるる……ノワール! 私も貴方の家に行くわ!」
「ダメです」
「いじわるっ!!」
……こんな日常が続けばいいなぁ。第3王子の件もあるから、望み薄だけどね。
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