裏切られた勇者

月夜桜

文字の大きさ
5 / 6
第一章

第4話 魔王様は有給が欲しいです!!

しおりを挟む
「まおー!」
「んー? なんだー?」
「えへへ~、まおー、実験に──」
「嫌だ」
「えー! まだ何も言ってないじゃん!」
「どうせろくでもないことだろ?」
「むぅっ!!」

 ドサッと抱き着いてきたエルフィの頭を撫でながら苦笑する。

「ほんとお前は。昨日の威勢の良さはどうしたんだ? あの時は本気でビビったぞ。まさか新入生に対していきなり魔法を撃つなんてな」
「うぐぅ……あれは、あの子の実力が分かってたから……。そ、それに!」
「そ・れ・に?」
「……ごめんなさい」
「素直でよろしい。で、用件は?」

 膝上に座り直させ、頭を撫で続ける。
 んー、我が娘ながら可愛い。血縁関係はないけどな。

「んーと、あのね、魔杖の調整器具が欲しいなって……」
「魔杖って、エルフィのは──ああ、十年前にプレゼントしたままだったな。買い直すか?」
「あれじゃないとやっ! あのままでいい。だから、調整器具が欲しいんだけど」

 うるうるとした目をこちらに向けてくるエルフィ。うん。この子、分かってやってるよな? まぁ、そんなところも可愛いから甘やかしてしまうんだが。

「分かった。ええと、この前貰った目録は……あった。次の休日、ヘゲルがここにあるやつを持ってくる。だから、この中から選んでおけ」
「!! はーい!」

 足をパタパタを動かして目録を読み始める。
 俺、まだ仕事中なんだけど? エルフィアさんがそこにいると仕事がしにくいんだけど?
 ……まぁ、いいか。明日でも出来るし。

 そんなことを言っていたら、翌日、ルーシーに怒られました。ナマ言ってすんません。

 ☆★☆★☆

「魔王様。ご報告があります」
「なんだ、ルーシー?」
「王国内及び西方国境の【諜報部】の交代が完了しました。それぞれ【諜報部】の規定員数以外に【暗部】より五名、選出しています」
「御苦労。諜報部の奴らには有給を取らせろ」
「はい。ところで、一つ【諜報部】からの報告で気になる点があります。時間は大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ」
「はい。魔力探知に長けたものが先日、膨大な魔力の収束を感知した、との報告が」
「……はぁ、ほぼ確実に勇者召喚だな」

 少し考えて、臨時の対処法案を策定する。
 原則として専守防衛のこの国は、先制攻撃を前提とした作戦立案には下院と上院の採決を経ないとダメなんだけどね、これは国家の存続を脅かす緊急事態だから事後採決。
 所謂、超法規的措置というものだよ。

「ルーシー、各防衛軍に通達。これより無期限で第三種警戒態勢を敷く。警戒態勢の引き上げは通常通りに。警衛隊には準第三種警戒態勢を。双方共に一日二回の定時報告書の提出を義務付ける。些細なことでもいいから書くように」

 第三種警戒態勢。
 それは、警告しても従わなかった場合は先制攻撃にて脅威を排除しても良いという、平時に置いて最も緊張度が高まっている状態だ。
 〝準〟が付く態勢は、軍属ではないというだけで命令内容としては同じだ。

「了解です。では、また後で」
「ああ。エルフィにもよろしくな。今日はそっちにいるんだろ?」
「はい! 何やら楽しそうに机上戦略を立てていますね」
「ま、程々に休ませてやってくれ」
「了解です。では!」

 そう言うと、魔力を一切感じさせない【転移】で退室する。
 ほんと、どうなってんだろうねぇ、あの娘。
 というか、暗部の連中は。

「っと、仕事仕事」

 最近は国境での紛争騒ぎとかが多くて書類仕事が増えて増えて仕方がない。
 ……魔王にも有給が欲しいです!!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...