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第2話 王女という名の何か
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夜
祐希と楓は同じ部屋で話し合いをしていた。
すると、そこに トントントン と扉をノックする音が聞こえる。
祐希はすぐさまに魔術を二次起動させて身を構える。
扉の向こうからは『中塚様、姫がお呼びです』と聞こえてくる。
一瞬、顔を見合わせた彼らだったが、有益と判断したのであろう。互いに頷いて扉を開ける。
そこには、軽くお辞儀をし続けるメイドさんがいた。
「姫……ていうと、この国の王女で間違いないよな?」
「はい、そうでございます。……あ、初瀬様もいらっしゃったのですね。お呼びする手間が省けました。初瀬様も御一緒願えますか?」
「……分かった。一緒に行く」
少しだけ間があったが、祐希が行くのならと了承する。
「ありがとうございます。ご案内いたします」
そうして一人のメイドさんに連れられて一つの部屋の前にやってきた。
「こちらになります。私はこれで失礼いたします」
お辞儀をして一行から離れていくメイドさん。
祐希はそれを見送ると、扉に向き直ってノックした。
『どうぞ。開いておりますわ』
と、直ぐに返ってきた。
祐希と楓は頷き合うと、意を決したように取手へと手を掛け、その扉を開けた。
その先には、先程、祐希の事を見つめて微笑んだ王女がいた。
王女は祐希と楓の顔を見ると手招きをし、扉を閉めるように言う。
「さて、漸く、三人きりになれましたね」
「ああ? どういうことだ?」
昼間のこともあり、粗野な言葉で返してしまう祐希。
「あ、この姿では分からないのも当然ですね。見た感じ、私の加護も効力を失ってしまっているようですし」
王女のその言葉に「まさか」と思う二人。
その思考を読んだのか、それを裏付けるようにこう言った。
「では、改めて自己紹介をいたしましょう。私はリーリア=フォン=セルリアと申します。そして、今現在、この身体の意識の表層として現れているのはオリヴィエ……そうですね。あなた様方がよく私を呼んだ〝自称女神〟とでも言いましょうか。本当に女神なのですが……」
と、少しだけ悲しそうな顔をする自称女神。
「んなっ!? あの女神だって!?」
「はい、そう申しております。勇者様、時間がありません。手短に現状をお教えします。あなた様方がどうなさるかは自由ですが、出来れば御助力願います。まず、私が現在、この身体をお借りしている理由ですが、邪神に神界が乗っ取られました。故に、私は緊急避難的にセルリア王国の正当な最後の血を流すこの身体の持ち主と勇者様が魔王を討伐した後に為されたセルリア王国王子と魔王国王女との子孫の末裔である現魔王国王女に精神体を憑依、それと同時に世界中に私直下の天使達を人間に扮させて潜入させました。先程のメイドの彼女もその一人です。……ああ、もう。面倒くさいですね。勇者様、楓様、【並列思考】を最大で使用してください。今から直接、あなた様方の脳に情報を焼き付けます」
そう言うと、掌に魔術陣を展開させて二人の方向に向ける。
「今から少しの間、世界の時を止めます。その間に処理しきってください。では、いきますよ」
その瞬間、膨大な量の情報が頭の中に流れ込んでくる。
これでも情報を絞った方なのであろう。
今のこの世界で生きる為の必要最低限度の情報と女神が伝えたがっている情報だけがそこにはあった。
「う、くぅ……っ! はぁ、はぁ、はぁ、なんだよこれ……完全に世界が変わってるじゃねぇか……ッ!」
「はぁ、はぁ、はぁ、なにこれ……昔と全然違う……」
「はい、その通りです。それと、御二方にお詫びしなければならない事が」
女神が申し訳なさそうにして言う。
「前回の転移の際、私はこちら側の世界とあちら側の世界の時差を三年に設定し、本日まで固定し続けていました。しかし、本日の強制的な大規模召喚によって時空間が歪み、その固定が外れてしまいました」
「……と、言うと?」
「現在のこちら側とあちら側の時差は殆どありません。こちら側で一日経てば、あちら側でも一日経っていると考えてもらって結構です。元々、こちら側とあちら側は起源が同じ兄弟の世界です。それを時空間の法則を改変せずに無理矢理固定していたのでしたら、この反動も分かるのですが……。私は、時空間を固定してから、こちら側とあちら側の時差は〝三年が正しい〟と法則を改変したはずなのです。ですので、この反動は通常は起きるはずの無いものでした。故に、謝罪させていただきます。それと、予め貴方様の疑問にお答えさせていただくと、私の称号が地球で消えなかったのは、先程述べました〝時空間の固定〟と〝法則の改変〟がコンデンサのような役割を果たしていたからです」
「……チッ、分かった。それについてはもういい。他に言うことは?」
「そうですね……ああ、そうだ。御二方とも、御婚約おめでとうございます」
「……ありがとう」
「ん。ありがとう、自称女神」
楓だけ何故か辛辣である。
「それだけならもう行くぞ」
二人は部屋から出ていこうとする。
祐希が部屋の扉を開け、外へ右足を踏み出す直前に自称女神──オリヴィエが口を開く。
「もし、脱出なさるのでしたら、魔王国領に行くことをおすすめします。人族よりも魔族の方がまともですよ? あと、聖光教会に限らず、教会系にお気をつけください。あれは、あれらは邪神の木偶です。最後に……《世界の災厄たる我より、世界で最も呪われたる汝らに、祝福があらんことを》」
そう言って、印を切る。
「これは……【女神の加護】か。忠告、どうもありがとう」
祐希は楓を連れて部屋から出ていった。
祐希と楓は同じ部屋で話し合いをしていた。
すると、そこに トントントン と扉をノックする音が聞こえる。
祐希はすぐさまに魔術を二次起動させて身を構える。
扉の向こうからは『中塚様、姫がお呼びです』と聞こえてくる。
一瞬、顔を見合わせた彼らだったが、有益と判断したのであろう。互いに頷いて扉を開ける。
そこには、軽くお辞儀をし続けるメイドさんがいた。
「姫……ていうと、この国の王女で間違いないよな?」
「はい、そうでございます。……あ、初瀬様もいらっしゃったのですね。お呼びする手間が省けました。初瀬様も御一緒願えますか?」
「……分かった。一緒に行く」
少しだけ間があったが、祐希が行くのならと了承する。
「ありがとうございます。ご案内いたします」
そうして一人のメイドさんに連れられて一つの部屋の前にやってきた。
「こちらになります。私はこれで失礼いたします」
お辞儀をして一行から離れていくメイドさん。
祐希はそれを見送ると、扉に向き直ってノックした。
『どうぞ。開いておりますわ』
と、直ぐに返ってきた。
祐希と楓は頷き合うと、意を決したように取手へと手を掛け、その扉を開けた。
その先には、先程、祐希の事を見つめて微笑んだ王女がいた。
王女は祐希と楓の顔を見ると手招きをし、扉を閉めるように言う。
「さて、漸く、三人きりになれましたね」
「ああ? どういうことだ?」
昼間のこともあり、粗野な言葉で返してしまう祐希。
「あ、この姿では分からないのも当然ですね。見た感じ、私の加護も効力を失ってしまっているようですし」
王女のその言葉に「まさか」と思う二人。
その思考を読んだのか、それを裏付けるようにこう言った。
「では、改めて自己紹介をいたしましょう。私はリーリア=フォン=セルリアと申します。そして、今現在、この身体の意識の表層として現れているのはオリヴィエ……そうですね。あなた様方がよく私を呼んだ〝自称女神〟とでも言いましょうか。本当に女神なのですが……」
と、少しだけ悲しそうな顔をする自称女神。
「んなっ!? あの女神だって!?」
「はい、そう申しております。勇者様、時間がありません。手短に現状をお教えします。あなた様方がどうなさるかは自由ですが、出来れば御助力願います。まず、私が現在、この身体をお借りしている理由ですが、邪神に神界が乗っ取られました。故に、私は緊急避難的にセルリア王国の正当な最後の血を流すこの身体の持ち主と勇者様が魔王を討伐した後に為されたセルリア王国王子と魔王国王女との子孫の末裔である現魔王国王女に精神体を憑依、それと同時に世界中に私直下の天使達を人間に扮させて潜入させました。先程のメイドの彼女もその一人です。……ああ、もう。面倒くさいですね。勇者様、楓様、【並列思考】を最大で使用してください。今から直接、あなた様方の脳に情報を焼き付けます」
そう言うと、掌に魔術陣を展開させて二人の方向に向ける。
「今から少しの間、世界の時を止めます。その間に処理しきってください。では、いきますよ」
その瞬間、膨大な量の情報が頭の中に流れ込んでくる。
これでも情報を絞った方なのであろう。
今のこの世界で生きる為の必要最低限度の情報と女神が伝えたがっている情報だけがそこにはあった。
「う、くぅ……っ! はぁ、はぁ、はぁ、なんだよこれ……完全に世界が変わってるじゃねぇか……ッ!」
「はぁ、はぁ、はぁ、なにこれ……昔と全然違う……」
「はい、その通りです。それと、御二方にお詫びしなければならない事が」
女神が申し訳なさそうにして言う。
「前回の転移の際、私はこちら側の世界とあちら側の世界の時差を三年に設定し、本日まで固定し続けていました。しかし、本日の強制的な大規模召喚によって時空間が歪み、その固定が外れてしまいました」
「……と、言うと?」
「現在のこちら側とあちら側の時差は殆どありません。こちら側で一日経てば、あちら側でも一日経っていると考えてもらって結構です。元々、こちら側とあちら側は起源が同じ兄弟の世界です。それを時空間の法則を改変せずに無理矢理固定していたのでしたら、この反動も分かるのですが……。私は、時空間を固定してから、こちら側とあちら側の時差は〝三年が正しい〟と法則を改変したはずなのです。ですので、この反動は通常は起きるはずの無いものでした。故に、謝罪させていただきます。それと、予め貴方様の疑問にお答えさせていただくと、私の称号が地球で消えなかったのは、先程述べました〝時空間の固定〟と〝法則の改変〟がコンデンサのような役割を果たしていたからです」
「……チッ、分かった。それについてはもういい。他に言うことは?」
「そうですね……ああ、そうだ。御二方とも、御婚約おめでとうございます」
「……ありがとう」
「ん。ありがとう、自称女神」
楓だけ何故か辛辣である。
「それだけならもう行くぞ」
二人は部屋から出ていこうとする。
祐希が部屋の扉を開け、外へ右足を踏み出す直前に自称女神──オリヴィエが口を開く。
「もし、脱出なさるのでしたら、魔王国領に行くことをおすすめします。人族よりも魔族の方がまともですよ? あと、聖光教会に限らず、教会系にお気をつけください。あれは、あれらは邪神の木偶です。最後に……《世界の災厄たる我より、世界で最も呪われたる汝らに、祝福があらんことを》」
そう言って、印を切る。
「これは……【女神の加護】か。忠告、どうもありがとう」
祐希は楓を連れて部屋から出ていった。
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