【梅雨が招いた雲の下の花鈴】

充ちる

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捨てた理由。

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「そんな……」

浅海は怒りと悲しみと裏切られたと言う感情がぐちゃぐちゃになり、涙を流すことさえできなかった。

「なら、その鈴音ちゃんは!鈴音ちゃんはどこよ!」

徐々に怒りの感情が勝ち、机を強く叩き、ここにはいない「実の子供」のことを聞いた。

『………………』

「なにか……言いなさいよ……」

2人は顔を伏せて黙ったまま。

「なに?なんで黙るの……?」

和之は言いにくそうに口を開いた。

「死んだんだ……事故で……3歳の頃に」

「……は?」

何を言ってるのか浅海はもう理解をする気にもなれなかった。

「人の子供を殺したの……?」

「わざとじゃないの!目を離した隙に……道路に飛び出して……私だって苦しかったわよ……」

「だから……だから自分の子供を返せって?」

(わがまま……いや、常識が無さすぎる。意味がわからない)

浅海は頭を抱えた。

「自分たちが苦労したって言いたいの?これからは自分たちが幸せになりたいからもう1人もくれって?冗談言わないでよ……」

浅海は泣きながら言葉を紡いだ。

「なんで貴方たちの勝手に付き合わなくちゃいけないの?花鈴は私の子よ……血が繋がってなかろうが私の子よ」

「それは違うわ。花梨は私の子よ」

「じゃあなんで入れ替えなんてしたの?なんで殺したのよ」

「………………」

「答えられないんじゃない!」

浅海が鋭い目で睨んできて、2人は喋れずにいたが、和之が口を少し開いて語り始めた。

「俺は、叶を愛したんだ。叶は1人で子育てをしようとしてたんだ。でも、俺が支えてやらないとって思った。だから、子供を入れ替えたら、俺と血は繋がってるから、その子供のことを愛せるし、2人を支えられると思った。血が繋がってない子供は愛せる気がしなかった……だから……」

「なにそれ……私と花鈴と一緒に暮らしながら叶さんとも一緒に暮らしていたってことでしょ……?」

「あぁ」

「子供が死んで、叶さんとは2人だけで暮らして私たちとは3人で……よく頑張ってきたわね」

半ば呆れ気味に理解をしようと口に出してみたが……どうしても気持ちが追いつかない。

「もういい……花鈴は貴方の子供なのよね……わかったわ、もう……いい……」

花鈴が自分の子供じゃない……そのことが頭を巡ってしまって他には何も考えられなくなっていた。

席を立ち、2人の顔も見ないでその場をあとにした。

外は雨が降ってた。

(ここに来る前は、晴れてたのに……)

一一一一一一

ガチャっ……。

「おかえりなさい!」

「ただいま……」

花鈴の笑顔がとても眩しくて耐えられない。

「花鈴……あなたはもういらないの」

「…………え?」

「だから、もういらないのよ。出ていきなさい。」

泣いてる顔を見られたくなくて、花鈴の顔を見ずに言い放ち、玄関のドアを開けて花鈴を追い出した。

ドアを閉め、鍵をかけてチェーンロックをして花鈴が入って来れないようにした。

(ウチは貧乏でろくにご飯も与えてあげられなかった……服も年相応のものを着せてあげられなかった……高校だって行きたかっただろうに……行かせてあげられなかった……ごめんね……)

玄関にもたれかかり、泣き崩れ、床にへたりこんで一晩中泣き崩れた。
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