デービス殿下の憂鬱 *スピンオフ*

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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兄上達のやっかみ

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「デービス、いい加減にしたらどうだ。お前のお陰で、私たちはマモルに会うこともできないでいるんだ。」

そう、兄上のリチャードに言われて、私は知らず口元が緩むのをカップで隠した。近いうちに王弟閣下となるリチャードは、節張った手を日に焼けた額に置いて、イライラした様子で私を睨んだ。

逃げきれずにロービンに連れてこられたリチャードの執務室は、人払いしてあるのかお茶の用意以外はひと気が無かった。私は兄上の顔をカップ越しに見つめて、ソーサーに時間を掛けて置くと言った。


「…兄上達はもう枯れているから。」

途端に二人から殺気が飛んで来た気がして、私はクスクス笑うと側で控えて立っているロービンに言った。

「ロービンもマモルに関して言えば当事者なのだから、一緒に座ってよ。どうせ、私に言いたい事が山ほどあるんでしょ?」

渋い顔でドサリと一人掛けに座ったロービンは、昔から王族に負けない美丈夫だ。金髪を肩で揃えた美しい男が、マモルの前でだけ冷たい紫の瞳を柔らかく緩ませるのを、私は子供の頃から見てきた。

ウェリントン伯爵家を弟のマイケルに任せて、自分はマモルの専属の様な形で公的な対外交渉の窓口になっている。それだけマモルに信頼されているという事なのだろうけど、影のようにマモルの側にいるこの男を私はずっと恨めしく思っていた。


「僕がマモルに会うのを邪魔している様な言い草はやめて欲しいな。マモルが兄上達に会いたがらないだけだろう?」

するとリチャード兄上は我慢できない様に立ち上がると、ウロウロと部屋の中を歩き回って言った。本当、兄上は全部身体の動きに出てしまう、わかりやすい性格だよ。

「そうじゃないだろう?お前の夜這いが多すぎて、マモルが起き上がれないんじゃないか。確かにお前が舞い上がっているのは分かるが、ものには限度というものがあるんだぞ。…私は遠征から戻って1週間経つというのに、まだお目通しもしていないんだ。」


僕は肩をすくめてロービンに尋ねた。

「ねぇ、ロービン。私が本懐を遂げてから何日経ってるっけ。」

ロービンは私をジロリと睨むと、ため息をついて言った。

「…10日ほどになりますか。」

僕はニンマリ笑って二人の渋い顔を眺めて言った。

「ほら、まだ10日だ。言うなれば僕らはハネムーンみたいなものなんだから、しょうがないって目を瞑ってよ。僕に残された時間はもう僅かなんだから。マモルがロクシーの番になってしまったら、今の様にはいかないんだろう?」


すると二人は顔を見合わせて、リチャードが言った。

「…そうかもしれないが、だったら余計に私たちにお茶くらい一緒に飲ませてくれないか。マモルに会うのを楽しみに遠征を頑張って来たのに!」

僕は呆れてリチャードに言った。

「独身を貫いているロービンがそう愚痴るのなら兎も角、正妃も側室も、まして王子や姫も抱えた兄上がそんな事を言うのは納得できないよ。」

するとロービンが気遣うように渋い顔のリチャードの方を見ると、私をじっと切れ長の紫の瞳で見つめて言った。


「デービス殿下、マモルは妃とは違います。あの方は何というか、基盤なのです。私達の生きていくための礎です。妃たちに言えない弱い部分を、マモルには曝け出すことができるのです。

貴方もそろそろその違いが分かっても良い頃でしょうね。私は唯一の相手としてマモルだけを選ぶことが出来ましたが、貴方方王族はそうもいかない。それは私から見れば、慈しむ相手が増えるのと同じくして、消耗もするのではありませんか。

私はジャガー族ですので、まぁ獅子族のありようとは違いますけどね。」


そう言って美味しそうに紅茶を美しい仕草で飲んだ。まったくいつもこの男は私に説教を垂れるのだ。そして理にかなっているせいで、私に反論の余地を与えない。私はこの男に頭が上がる時が来るのだろうか。とてもそうは思えない。

そんな苦い気持ちで腕を組むと、リチャードが空気を破って言った。

「とにかくだ、これから5日間デービスはマモルに夜這い禁止。分かったな!?」

私はソファに頭を乗せて天井を仰ぎながら大きなため息をついた。ああ、マモル。貴方を愛するのに、なんて邪魔が多い事だろう!







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