竜の国の人間様

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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人間の魔法使い

仁王立ちのメダ※

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 「テディ、アレもっと食いたい。作ってくれ。」

 帰宅する僕らを仁王立ちで待っていたのはメダだった。神様が魔鳥マヨを所望してるのはちょっと面白い構図だ。僕はパーカスにウインクすると、いかにも深刻そうな表情を浮かべて腕を組んだ。

「うーん、僕も作りたいのは山々なんだけどね?アレの材料が手に入らないんだ。植物から採れる油が必要だからね。…もしメダさえ良かったら、ほらアップルパイの時みたいに…。」


 そこまで言った僕の前に、料理人が満面の笑みで進み出て籠いっぱいのアボカドもどきの実を見せてくれた。

「え!これどうしたの!?」

「龍神様が残っていた実を使って庭で育ててくれたんですよ!あっという間に成長して、とんでもないものを見せていただきましたよ。」

 僕は声を立てて笑うと、思わずメダに抱きついた。

「アハハ、ありがとう、メダ!帰ったら頼もうと思ってたんだ!これで当分マヨネーズを作ることが出来るよ。」

 相変わらず他の人が見たら素っ気ない表情だろうメダは、僕には分かる様になった嬉しげな表情を浮かべてちゃっかりお礼待ちだ。


 背後に夫たちの視線を感じながら、僕はメダに口づけた。最近はメダとこうしてもクラクラする事が少なくなって来た気がする。とは言えこの状況はまるで何かのプレイみたいで、夫たちの夜活動に影響が出そうで後が怖い。

 引き剥がす様にメダから顔を離した僕は、顔が熱くなっているのを自覚しながら、腕を組んで僕らを注視している夫たちを振り返った。流石にパーカス達はとばっちりを恐れて既に撤退している。…あれ、ファルコンまでいないし。


 「メダがマヨネーズ作りに協力してくれたから、また魔鳥マヨ食べられるよ。良かったよね?」

 ロバートはあんなに食べたがっていたのに、今は何だか首をポキポキ鳴らして落ち着かない。バルトもメダを眉を顰めて見ている。あのー、気持ちは分かるけど、一応メダも僕の未来の夫ではあるんだけど。

「何だ、狭量きょうりょうな奴等め。気づいていないかもしれんが、テディは出産したせいか私の神力に耐性がついて来たのだぞ?お前達とテディを分かち合うのは遠慮してやっているのに、これしきの触れ合いに嫉妬するとはな。

 テディ、嫉妬深いこ奴らをさっさと捨てて、私とファルコンとあっちの世界へ行くか?」


 メダの冗談は時々冗談にならないので、僕は慌ててメダに頼んだ。

「メダ、ロバートとバルトが本気にするでしょう?僕はずっとメダと一緒に居ることになるんだから、今は彼らと一緒に居させて?それにファルコンの次には、ロバートの赤ちゃんも欲しいし。

 僕とメダは切っても切れない絆で繋がっているんだから、そんな事言って困らせないで。ね?」

 メダはさっきまで振動させていた空気を緩めると、いつもの様に気怠げに僕を見下ろして言った。


 「愛し子の願いには逆らえんな。まぁ良い。今夜は魔鳥マヨとやらをたんまり食わせてくれ。」

 僕はホッとしたせいでメダに感謝の口づけを浴びせると、立ち去るメダを見送った。いつの間にか側に来た夫たちが僕の腰や肩に手を絡めながら黙ってメダの後ろ姿を見つめた。

「やっぱり龍神様は怖いな。何が着火点になるか分からないところがある。」

 バルトが眉を顰めてそう言うと、ロバートも頷きながら、少し落ち着かなげに僕に尋ねた。


 「…テディ、さっきの話だけど、俺との赤ちゃんはいつ頃作る予定かな。俺はいつでも大丈夫だ。今夜からでも!」

 僕はやれやれと、ロバートを据わりかけた目つきで見据えてしまった。

「流石にファルコンが歩ける様にならないとね。お腹が大きくて抱っこするとかちょっと安全じゃないでしょう?」

「それだったら俺が抱っこする。あー、でもテディは学校に復帰したばかりだし…。」

「…ちょっと待ってて。僕も考えてるから、そんなに待たせないよ。」

 僕はそう言うとロバートに口づけを強請った。バルトは空気を読んで先に行ってしまったから、ロバートは僕を思う存分貪った。


 すっかり息が切れてしまった僕は身体が熱い。ロバートが欲しいけれど、流石に二人で消えたら不味いかな。

「テディ、ベッドへ行こう。誰も咎めたりしないさ。」

 ウキウキしたロバートを止めるには、僕もすっかりのぼせ上がっていた。もしかしてさっきメダとした口づけのせいで神力の影響もあるかもしれない。妙に漲っている。

「うん、そうだね。魔鳥狩りですっかり汚れてしまったから着替えなくちゃいけないし。ロバートの部屋に行こうか…?」


 僕は近くにいたセバスにウインクすると、すっかりご機嫌なロバートに抱き上げられて屋敷の離れへと進んだ。三人の寝室以外にも、僕らにはそれぞれ個室が用意されている。パーカスは伊達に年寄りじゃない。

 色々なシチュエーションの為に用意されているんだ。例えばこんな時のためにね…。

 ロバートの部屋に蹴破る勢いで入ると、僕らはお互いの服を剥ぎ取って浴室へと雪崩れ込んだ。喘ぎながらかろうじて洗い合うと、待ち切れないロバートが僕の片足を抱え上げて自分の長いそれを擦り付ける。


 マーキングに似たそのもどかしい動きに、僕は疼く身体を仰け反らした。ああ、もっと奥に欲しい。ロバートの首に抱きつきながら、僕はロバートの指が悪戯に敏感な場所を這い回るに合わせて呻いた。

「テディ、どちらに入れて欲しい?」

「…後ろに、後ろが良い…!」

 僕の不可思議な身体は、もはや二人同時に受け入れられる仕様ではあるけれど、彼らの大きさをズッポリ受け止められるのは後ろの方が安心だった。心配しないで夢中になりたい時は特に。


「ああ、テディ、すっかり柔らかいね。前にも指を入れて挟んで揺さぶってあげようか?」

 強烈な快感を約束されたそのやり方は、して欲しい様なして欲しくない様な何とも言えない気持ちになる。僕はロバートの首に手を回して、唇をその野生味溢れる顔のあちこちに押し付けながら囁いた。

「今はいい…。ロバートと抱き合って口づけしながらしたいから。」

 ベッドに移動した僕は、嬉しげに笑みを浮かべたロバートにゆっくり串刺しにされた。それから僕らは目を合わせながら、唇と舌を触れ合わせながら、じっくりとお互いを与え合いながら興奮を高め合った。


 ロバートのいつも明るい水色の瞳は、今は光を集めて揺らぐ泉の様にセクシーだ。僕はチリチリする快感の崖っぷちを感じながら、彼の与えてくれる激しさを受け止めている。ああっ、もうっ…!

 いつロバートが動きを変えたのか、気づけばガクガクと揺さぶられていて、僕は悲鳴に似た嬌声をあげてロバートにしがみつきながら逝かされていた。ああ、死にそう…!


 ぐったりと二人でベッドに横たわりながら、僕はぼんやりとまだ明るい外の景色を眺めた。

「ねぇ、ロバート、絶対みんなにバレバレだと思うけど、流石に気まずいね。」

「そうか?俺はいつだってテディを可愛がりたいからな。全然気にならないよ。」

 そう言いながらロバートは尻尾をするりと僕に巻きつけた。ああ、この尻尾ちゃんには逆らえない。僕は尻尾を手の中に入れてにぎにぎしながら、ロバートの落ち着く匂いを嗅いだ。

 まぁ、こんなことはよくある事だからね。僕だけがいつまでも恥ずかしく感じるだけで。さあ、そろそろ起きてメダのご機嫌取りに魔鳥マヨ作らなくちゃね?






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