純血の転校生〜僕には誰も必要ない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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戸惑い

時期はずれの転校生

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「クラーク、お前のクラスに転校生が来たんだって?」
「ふーん。こんな時期はずれに妙だな。」
「え、同室誰?そいつ可愛い?」
「何系なの?山猫系ならやっちまうか?」

 そうやって仲間達が好き勝手言い始めるのはいつもの事だった。クラーク カルバラートはネクタイを緩めると、周囲より人一倍体格の良い肩を少し回して食堂の椅子を軋ませると、気怠げに言い放った。

「…ああ、そう言えば何か挨拶してたな。身体も声も小せえし、髪で顔が隠れてたから何かパッとしなかった。」


 クラークの答えに周囲の関心が一気に萎むのが分かった。このアリステ学園は全寮制の男子校のせいか、彼らの血がそうさせるせいなのか、有り余る奴らがいつも退屈しているか、揉めてるかが通常だ。

 名門だけに表面的にお行儀の良い振る舞いは出来ても、派閥の様なものが出来るのは自然の事だ。学年毎に構成される派閥は違うものの、このニ学年で最大派閥と言えるのがクラークを中心とするグループだ。


 混ざり物ばかりのご時世では珍しく、クラークは純血主義の人狼族の両親から生まれた子供だった。それでもクォーターでしかないが、恵まれた体格と特徴的な白灰色の髪、そして淡青灰色の瞳を持つクラークの純血ぶりに、崇拝と憧れを感じる学生らに一目置かれている。

 それが物心ついた頃からクラークにとっては当たり前の環境だったし、そうでない状況など経験がなかった。とは言え、流石にこのアリステ学園には全国の将来有望な学生や血筋が集まる事もあって、気は抜けない。


 特にこの二学年には最大派閥のクラーク達と比べて人数は少ないながら、その特異性で一角を張っている集団がいた。それが吸血族の血を引いたイシス バツアム率いる一群だった。

 彼らはクラーク達の様に常に群れ歩いている訳ではなかったが、吸血族の血筋の者が酷く珍しいせいで存在感が浮き立っている。もっともクラーク同様、時代と共に血筋は弱まりイシス自身もクォーターらしかった。


 とは言え人狼族と吸血族ではその珍しさは吸血族が上を行くので、クラークは最大派閥として名を馳せている一方で、少人数ながらイシス達はどうにも目の上のたんこぶだった。

 昼休みが終わって、クラークが仲間と教室に戻ると、取り巻きの一人が良いニュースとばかりにクラークに情報をもたらした。


 「クラークさん、あの転校生の同室相手が分かりましたよ。面白い事にイシスです。確かにイシスは一人で部屋を使ってましたからね。いい気味です。

 しかしそうなるとあの転校生も可哀想ですね。転校早々、あの気難しいイシスと同室では気が休まらないでしょう?」

 
 そうペチャクチャとクラスメイトのお喋りが終わらないので、クラークは何も言わずに自分の席に向かって歩き出した。気に入らないイシスのお綺麗な顔が不機嫌に歪むのを想像して少し気分が良くなる。

 視線の先で窓の外を眺めている転校生は、強張った背中を見せながら誰にも話しかけられたく無いとばかりにそっぽを向いている。

 小柄な身体といい、横顔に乗せられた眼鏡といい、周囲の好奇の視線を遮断する様な頑なな態度に、クラークは皮肉混じりの笑みを浮かべた。


 これだけ時代の遍歴と共に種族が混じり合ってしまうと、自分の様に純血主義でなければ何の種族であるか知る方が難しい。ぱっと見、転校生もまるで分からない。

 人間の血筋が多ければ、全体に脆弱になるのは言わずと知れた事ではあったものの、人間自体の純血はその珍しさで言ったら自分やイシスの比ではなかった。


 元々先祖の人狼や獣人、異界の者達と比べて人間があまりにも脆弱であったために、いにしえの戦いの度に人間は捕虜となった。当然の帰巣としてお互いの混血を加速させた。

 歴史を紐解くとそれは自然な成り行きだ。一方でそれぞれの種族の血筋を維持するのも難しい程、人間というのは彼らにとって避け難い誘惑に満ちているというのが、眉唾物の話として残っている。


 クラークは妙な事を考えてしまったと思いながら、自分の様に純血に近い者ならば、やはり人間の純血には抗えないのだろうかと、なぜか転校生の繊細な横顔を見つめながらぼんやり考えていた。

 あの転校生が冴えない混ざり者に過ぎないのに、イシスと同室だと聞いてしまったから妙なことを考えてしまったのだと、クラークは顔を顰めて視線を落とした。

 椅子に置いた転校生の手首の白さと細さが、やはりクラークを落ち着きなくさせた。


 

 




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