純血の転校生〜僕には誰も必要ない

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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戸惑い

不本意な上京

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 地元から王都への馬車の旅は、セスことセデアス デザイアにとっては中々辛いものになった。17歳という年齢から考えると、一人で上京するには過不足ない年頃だ。

 けれども辺境の田舎で育った内気なセスにとって、人が多いというだけで心理的負担は大きかった。

 それにこんな思いまでしながら王都の名門学園に急遽転入しなければならない納得出来る理由も、セスには見つからない。


 確かに地元の上級学校でセスがまともな扱いを受けていたと考えるのは間違っているだろう。腕っぷしがものを言う校内では、セスの様に虚弱で頭でっかちな学生は鬱憤のターゲットにされがちだった。

 祖父から命令に近い形での聖アリステ学園への転入は、セスにとっては場所が変わるだけで、状況が良くなると安易に希望を持つものでは無かった。


 それどころか全寮制という事で、以前の様に家に逃げ帰る様な事も出来ない。しかも地元の上級学校では周囲が妙に色めきたっているのを感じて、そんな年頃だとしてもあまり人と関わるのが不得意なセスにとっては閉口する状況だった。

「…僕はどうしてこんなんなんだろう。」

 周囲との明らかな違いに、クヨクヨと後ろ向きなことばかり考えがちのセスは、もう少しこの年頃らしい根拠の無い自信が欲しかった。皆が無邪気にもそれを持っているのを見ると、やはり自分の生い立ちのせいかと考える事がある。



 女の様に筋肉がつかないその身体に眉を顰めていた下級学校時代、祖父母は改まった口調で僕に出生の秘密を話した。

『良いかセス、落ち着いて聞きなさい。セスの産みの母親であるセリアンヌは純血の人間だ。そして母親に良く似たセスが、人間の純血よりだと考えるのは正しいと思う。』

 僕は突然の祖父の話に言葉を失った。そして震える声で自分でも縋る気持ちで呟いていた。


 『…でも僕は父さんの子供でもあるでしょう?僕は、僕は!街の人達が先祖返りと称賛した人虎族の父さんの子供でもある!だから純血そのものという事はないよ。ね?』

 父に似たところなど、家の中を飾る肖像画を見てもひとつも見つからなかった。そのせいで最近はその絵を目にするのも嫌になっていたのに、自分が純血の人間だなんて聞かされるより父親に似たところを永遠に探す方がずっとマシだった。


 けれどその恐怖は祖父の口から決定的な事実として僕にもたらされた。

『…残念だが、お前の父親が誰かは分からないのじゃよ。息子のオビアスは、はっきりとセリアンヌのお腹の子が自分の子供では無いと言った。二人が出会った時、セリアンヌは既に身重だった様じゃ。

 ただ、二人は愛し合っていたし、身重なセリアンヌをオビアスが攫ってくるほど彼女の状況は酷いものだったようだ。それについては二人とも決して話そうとはしなかったから詳しい事は分からん。

 だがオビアスはハッキリと言った。セリアンヌも赤ん坊も純血だと。』
 


 ここが人いきれの雑踏の中だというのに、セスはあの時の衝撃を思い返すだけで体の中が冷えていくような心持ちになってしまう。思いもしない自分の出生の秘密、そして愛する祖父母と血が繋がっていないという事実に、セスはいまだに打ちのめされ続けている。

 どうして自分は他の子供らと違うのか、どうして祖父母に似ていないのか、今までずっと不安を感じていた全ての答えがもたらされて、不安で固められた足元が崩れてしまった。


 一方で、血が繋がっていない自分を赤ん坊の頃から愛情を持って育ててくれた祖父母に、感謝と尊敬を感じた。だからこそ病気が発覚した祖母の元を離れる気になれず、亡くなるまで側で看病をしたのだ。

 けれど祖父の決心は硬く、結局セスはこうして上京する事になってしまった。亡き父の遺言だというその話が本当ならば、故郷よりましな上級学校生活が送れることをセスは祈るばかりだった。


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