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祭りの後始末

満員電車

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朝の満員電車に揺られながら、僕はキヨくんと話さなくて済んで、何処かホッとしていた。とは言え、こんなに密着してると別の意味で気が気じゃない。一昨日のあの部屋の生々しいあれこれが、急に思い浮かんで落ち着かない。

大きな駅に着いて、どっとまた乗客が乗り込んできた。僕は踏ん張りが効かなくて反対側の扉に押しつけられてしまった。こんな事はいつもの事なのに、直ぐそばにキヨくんがまるで僕を守る様に立ち塞がっていると、…壁ドンみたいだ。


キヨくんは顰めっ面をしながらも押されて、結局僕を抱きかかえる様な体制になってしまった。僕がチビのせいで!僕はいかにもヒョロくて生っ白い171cm。自信の無さが前髪の長さって、リアルだ。

一方のキヨくんは184~5cmはあるだろう高身長。ちょっとクセのある髪は長めで大人っぽい。少し額が出て、眼鏡が似合ってる。


僕は思わず、マジマジとキヨくんを見つめて、ハッとした。

「キヨくん、おでこ赤い…。ごめんね、僕のせいで。」

そう言ってキヨくんのおでこに指を伸ばすと、キヨくんがそっぽを向いて、大丈夫だって小さな声で言った。僕は伸ばした指を引っ込めつつ、キヨくんのそっぽを向いた耳が赤らんでいるのを見てしまった。


あ、朝から二人でスルーして来た一昨日の事を、僕が持ち出してしまった。どうして僕はこう粗忽なんだろう。僕はキヨくんの横顔が赤らんでいるのを見て、妙に冷静になってしまった。

お年頃の僕たちは、ちょっと調子に乗ってしまっただけ。キスに関心があっただけ。きっとそう!そう言い聞かせて、僕はキヨくんの肩越しに、満員電車で顰めっ面している乗客を眺めた。


改札を人波に押される様に流され出ると、一緒に流れ出て来た松陰高校の生徒たちが、チラチラと僕たちを見てくる。僕は眉を顰めるキヨくんを、チラッと見上げて思った。

流石キヨくん、オーラが凄いからみんな見ちゃうよね。いつもこんなに注目を浴びてるんだ。陽キャも大変だな。するとそこに三浦君が後ろから声を掛けてきた。


「おはよー。委員長。あ、橘。なんだお前、相変わらず顔隠れてんな。せっかく有名になったんだから、もっと顔出せよ。」

そう呆れた様に言って、僕の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。するとキヨくんが三浦君に話しかけた。

「三浦って、実行委員だったっけ。例のアレ。バーベキューの準備とか、土曜日に間に合うように仕切ってくれるか?」

そう言って三浦君と打ち上げについて話し始めた。僕は一緒に歩くのも変な気がして、力のある二人から少しづつ歩みを遅らせて自然に離れていこうとした。

すると三浦君がいきなり僕の方を振り向いて言った。


「橘、お前俺とコンテスト優勝者だからな、一緒に手伝ってくれ。その方がクラスも盛り上がるだろ?まさか、嫌だとか言わないよな?橘ちゃん?」

僕は顰めた顔のキヨくんを目の端で捉えながら、三浦君の勢いに、断ることなど出来ずに頷いてしまった。

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