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受験生

疲れたキヨくん

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疲れた顔のキヨくんが、僕の手を握ってさっきから離してくれない。模試続きでグロッキー気味なのは良く分かるけれど、ここは公の場所と言えばそうだ。


僕は指定校推薦先の大学での面接と試験も終えて、後は結果待ちの状況だ。指定校の良いところは自分が犯罪でも起こさない限り、落ちない事だ。だから僕の中ではすっかり受験生の衣を脱いでしまった。

一方のキヨくんは、目指す大学が難関国立大学だけあって、ここからは私大だけ受ける同級生よりも長期戦の構えだ。週末に統一テストだったキヨくんは、流石に青い顔で僕の前に現れた。


会ってお茶しようと言われて駅前に出てきたけれど、今日も塾から帰宅途中のキヨくんは、どう見てもお疲れ気味だった。もう高3の僕たちは授業も出なくて良いので、今はお昼過ぎでもうすぐ2時という時間。

僕は思わずキヨくんに言った。

「ね、顔色も悪いし、家に帰った方が良いんじゃない?」

キヨくんは顰めた顔で首を振った。

「ダメ。せっかく玲に会えたのに。全然模試や、試験で会えてないのに。」


僕は思い切ってうちに寄らないかと誘ってみた。どう考えても疲れ切ったキヨくんとカフェでお茶するより、そっちの方が良い様に思えたからだ。

キヨくんは僕をじっと見つめると、頷いて家の方向へ歩き出した。住宅地に入ってしまうと、こんな平日の午後の時間は案外人の気配がしない。特に今日は寒い日だから、普段なら散歩や買い物へ行く人も止めているんだろう。


するとキヨくんが僕の手を、冷んやりした手で繋いできた。僕は思わず周囲をキョロキョロしたけれど、誰もいないのでドキドキしながらキヨくんの手を握り返して言った。

「誰かに見られたら困るでしょ?」

そう言ってもキヨくんはムスッとして手を離さない。僕はため息をつくと、誤魔化せる様に身体をキヨくんに寄せて歩いた。結局誰にも会わないまま、僕の家に到着した。…手を繋いで歩いちゃった。ふふ。


「…そんな可愛い顔したら、やばい。」

僕はキヨくんの言葉にキョトンとして、ポケットから家の鍵を取り出して玄関を開けた。僕の後ろから入りながら、キヨくんは家の中を伺いながら尋ねた。

「…おばさんは?」

僕はキッチンへ一緒に行きながら、キヨくんにリビングのソファに座る様に言うと、コーヒーをセットした。


「母さん?今日は習い事の発表会だから遅くなるって。何で?あ、何か食べる?確かチョコレートここにあったかな…。」

僕は接待に忙しくて、キヨくんの顔を見ていなかったので、明らかに空気が変わったことに気づけなかった。コーヒーと買い置きの美味しいチョコレートをトレーに載せてソファテーブルに持っていくと、キヨくんが僕から受け取ってテーブルに並べてくれた。

「…玲、もっとこっちに来て。」


唐突に言われてキヨくんの顔を見上げると、キヨくんが僕を食べたそうに見つめていた。…え?











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