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新学期

僕の中の葛藤

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和也は悲しそうな顔で僕の方を見つめている。

何でお前は嘘をつくんだ。俺はちゃんと真っ直ぐ打ち明けたじゃないか。
お前は誤魔化してばかりで、誰とも真っ直ぐ向き合おうとしない。

そんなお前の事許せるのか。お前は自分を許せるのか。

和也はそれだけ言うと背中を向けて立ち去っていく。
僕は何か言いたいのに喉が詰まって何も言えない。

伝えられないんだ。

ごめん、和也。ごめん。





僕は寝袋から出た腕が冷たくて、目を覚ました。

何だかとても悲しい夢を見た。
和也の悲しい顔と、声が出ない自分と。

僕は起き上がってしばらくボーっとしていたに違いない。


「ねぇ、何泣いてんの。」

トモが僕の顔を見つめながら眉を顰めていた。
僕は慌てて顔に手をやった。涙の雫で手が濡れた。

「…何か夢見てた。忘れたけど。」

「ふうん。ま、いいけど。」

トモはどうでもいい所ではしつこいけど、人の心にヅカヅカ入ってくる事はしない。

僕はちょっぴりトモを見直した。



テントを片付けてるとタクミがやってきて、昨日の事を聞くからトモのやらかしを話すと大笑いしてた。
でも和也がパートナーになるかも知れなかったと話すと、急に真顔になって言った。

「オレ、和也がお前とテント一緒じゃなくてすげぇ安心してる。
トモは大丈夫だけど、他のやつは誰だって大丈夫じゃない。
お前は自分の事強いと思ってるだろうけど、お前みたいに華奢な奴は本気になった俺たちには敵わないんだよ。」


僕はいつものようにふざけたタクミじゃないので、ちょっと戸惑ってしまった。

「何言ってるんだよ。誰だって無理に何かするわけじゃないだろ?
それに何で僕が襲われる前提なんだよ。
…僕が襲うとか考えないのか?」


タクミはちょっと考えて、笑い出した。

「ククク。確かにケンケンは攻撃的なキスが上手いよな?」

そしてとんでもなく色っぽい顔をして僕の耳元で囁いた。
『お前とまたあのエロいキスしたい。」

僕は背中がゾクッとして、震えてしまった。多分顔も熱いから赤いかも…。


タクミはゴクっと息を呑むと片手を顔に当てて言った。

「はぁ、何なのお前。すげぇこ慣れてる感じかと思いきや。そんな純情そうな感じ出してくるの。
…オレを翻弄したいわけ?ま、いっか。それがケンケンだからな。」

そう言ってニヤリと笑うと、僕の肩を組んで皆のいる所へ引き摺っていった。


僕は連れて行かれながら無意識に和也の姿を探していた。




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