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新学期
佐藤、お前もか
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夢見が悪かった僕は、キョロキョロと和也を探した。和也と何を話せば良いか分からなかったけれど、このままにはして置けない気がした。
それにしてもと一人僕は考える。どうしてこんなに複雑な事になってしまったんだろう。俺様健斗で乗り切る予定だったはずだ。実際最初は上手くいってた。
でも僕は健斗に擬態した女の子、ケイだ。何だか自分の名前も最近忘れてる…。…今呼ばれても振り返らないぞ、きっと。はぁ。
他人を突き放せないお人好しのせいなのか、流されやすいせいなのか、今ボクはここまで流されてきました…。って一人実況してる場合じゃない。
「健斗、誰か探してるの?しかし登頂、マジ辛かったな。あんなに険しいとはね。」
僕は佐藤の顔を見ながら考える。全ての始まりはこいつが声を掛けてきたからだ。佐藤は僕を見下ろして首をかしげた。
「何?なんか言いたい感じ?」
んぐっ、無駄に可愛いこの男。僕は何だか気分がクサクサして前を向きながら、不貞腐れて言った。
「いや、なんかさ、最近色々あるのって全部佐藤のせいかなって。まぁ僕のせいもあるけどさ。…佐藤はさ、何で僕にちょっかい出したわけ?」
佐藤はしばらく黙り込んだ。それから小さく息を吐くと、僕の手を取って言った。
「最初は嫌な奴だと思ってたんだけど、可愛いとこもあるから好奇心からかな?でも最近はちょっと違うって言うか。今もこうやって手を取られてもそのままにしてるだろ?
健斗ってなんかさ、危なげというか。目を離したら誰かに食われてそうで、それは僕には気に入らない感じ?健斗が僕のせいだって言うなら、…僕が責任取るよ。」
ん?んんっん?何か話が別の方向に突っ走りだしてないか。まただ。また窮地に落ちていく感じがする…。
「っ責任取るって何だよ。お前だけのせいじゃないのは分かってるんだよ。あー、もう訳わかんなくなった!」
僕は手を振り払うと、急ぎ足で山道を駆け下りた。あんまりガムシャラに降りていったもんだから、脚がガクガクして転んでしまった。痛さと情けなさに涙ぐんでると、息を切らした佐藤が見下ろしていた。
「…訳わかんないのは、お前だけじゃないよ。僕だってそうだ。ただはっきりしてる事だってあるさ。」
そう言うと、佐藤は僕を抱き起こすと近くの岩陰へ連れ込んだ。
「分かってるのは、いつだって健斗にキスしたいってこと。」
佐藤は僕を、思いの外優しい手つきで抱き締めると、ゆっくり口づけた。僕は佐藤の優しい唇に、なだめるような柔らかな舌使いにクサクサした気分が消えていくのを感じた。
こうやって受け入れちゃうからややこしくなるんだなともう一人の僕が呟いてる。でも僕は全てを放り出して佐藤とのキスにのめり込んだ。
それにしてもと一人僕は考える。どうしてこんなに複雑な事になってしまったんだろう。俺様健斗で乗り切る予定だったはずだ。実際最初は上手くいってた。
でも僕は健斗に擬態した女の子、ケイだ。何だか自分の名前も最近忘れてる…。…今呼ばれても振り返らないぞ、きっと。はぁ。
他人を突き放せないお人好しのせいなのか、流されやすいせいなのか、今ボクはここまで流されてきました…。って一人実況してる場合じゃない。
「健斗、誰か探してるの?しかし登頂、マジ辛かったな。あんなに険しいとはね。」
僕は佐藤の顔を見ながら考える。全ての始まりはこいつが声を掛けてきたからだ。佐藤は僕を見下ろして首をかしげた。
「何?なんか言いたい感じ?」
んぐっ、無駄に可愛いこの男。僕は何だか気分がクサクサして前を向きながら、不貞腐れて言った。
「いや、なんかさ、最近色々あるのって全部佐藤のせいかなって。まぁ僕のせいもあるけどさ。…佐藤はさ、何で僕にちょっかい出したわけ?」
佐藤はしばらく黙り込んだ。それから小さく息を吐くと、僕の手を取って言った。
「最初は嫌な奴だと思ってたんだけど、可愛いとこもあるから好奇心からかな?でも最近はちょっと違うって言うか。今もこうやって手を取られてもそのままにしてるだろ?
健斗ってなんかさ、危なげというか。目を離したら誰かに食われてそうで、それは僕には気に入らない感じ?健斗が僕のせいだって言うなら、…僕が責任取るよ。」
ん?んんっん?何か話が別の方向に突っ走りだしてないか。まただ。また窮地に落ちていく感じがする…。
「っ責任取るって何だよ。お前だけのせいじゃないのは分かってるんだよ。あー、もう訳わかんなくなった!」
僕は手を振り払うと、急ぎ足で山道を駆け下りた。あんまりガムシャラに降りていったもんだから、脚がガクガクして転んでしまった。痛さと情けなさに涙ぐんでると、息を切らした佐藤が見下ろしていた。
「…訳わかんないのは、お前だけじゃないよ。僕だってそうだ。ただはっきりしてる事だってあるさ。」
そう言うと、佐藤は僕を抱き起こすと近くの岩陰へ連れ込んだ。
「分かってるのは、いつだって健斗にキスしたいってこと。」
佐藤は僕を、思いの外優しい手つきで抱き締めると、ゆっくり口づけた。僕は佐藤の優しい唇に、なだめるような柔らかな舌使いにクサクサした気分が消えていくのを感じた。
こうやって受け入れちゃうからややこしくなるんだなともう一人の僕が呟いてる。でも僕は全てを放り出して佐藤とのキスにのめり込んだ。
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