男装女子はなぜかBLの攻めポジ

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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新学期

ピンチをたぐり寄せる僕

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 ふと誰かの声が聞こえてきた気がして、僕は現実に帰ってきた。佐藤の胸に手を押し付けて身体を引き剥がすと佐藤を睨んで吐き出すように言った。

「僕にキスしたいからってするのってどうなんだ。…でもキスを拒まない僕も大概だな…。」

 佐藤は困ったように僕を見て、優しく微笑んで言った。

「…ほんと、健斗は腕の中に入ってきて撫でることが出来たと喜んでる次の瞬間には、腕を引っ掻いて飛び出してく野良猫みたいだ。でもそんなツンデレな所も健斗の魅力だから。勝手に振り回されてやるよ。」

 僕は何だかしてやられた気がして、顔を背けると佐藤と一緒に歩き出した。さっき転んで痛かった膝はまだちょっと痛かった。でもその痛みが和也や佐藤を振り回してる自分への罰のような気がして、束の間自分の狡猾さから目を背けていられたんだ。

 結局和也には寮に戻るまで会えなかった。


 寮に戻ると和也はもう部屋に居た。僕は気不味かったが、いつものように振る舞うことにした。

「和也、早かったね。もうクタクタだよ。当分山登りはいいや。」

「…ああ。俺も。」

「あとさ、山で話した事、誰にも言うなよ。不能なんて聞こえが悪いからな。」

 僕はそう言うと、和也の顔も見ずに部屋のベッドコーナーへ避難した。とりあえず現状維持だ。これ以上同室の和也と色々近づくと絶対マズイ。和也に嘘をついてるのは気不味いけれど、かと言って本当のことを言えるわけでもない。

 今の僕に出来るのはこれくらいなんだ。ごめんね、和也。



 山登り演習が終わった僕たちは、はっきり言ってだれていた。毎日鬱陶しい雨が降るし、なんと言っても男子高校生は退屈が敵なんだ。

 ある朝騒ついた教室に入っていくと、皆が何だか盛り上がっていた。

「何?」

 僕は隣の佐藤に尋ねた。

「あれ?健斗って知らなかった?来週から体育の授業、柔道だよ。みんな格闘系好きだからさ、張り切ってんの。春に柔道着買ったよね?」


 いや、聞いてません。あれ?もしかして荷物送ってもらってないのかも!いやそこじゃない。格闘系?柔道?くんず解れずのアレですよね?か弱い乙女にアレをやれと?

「えーと、やらなくて良いとか。」

「何だ、苦手なのか?」

「分かんない。柔道やった事ないし。僕がやった事あるのって護身用の武術だからなぁ。」


 佐藤はぎょっとしたように僕を見た。

「お前って護身術習うような危険な目にあってたのか?」

「んー、僕海外留学してたから、そのために少し齧ったんだ。」

「へぇ、いつ留学してたんだよ。」

 僕はこの時点で喋りすぎていた事に気づいた。僕はケイじゃなくて、健斗だった。ケイは留学してたけど、健斗はしていない。僕またもやピンチを自分で引き起こしてるぅ⁉︎







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