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僕がキス魔ですか

和也side漆原が懐いた

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バスタオル一枚の無抵抗の漆原に俺が無理にキスして自分の気持ちを自覚した日から、俺は心を入れ替えた…はずだ。

俺は漆原が好きだし、好きなやつに絶対嫌われたくなくて妙に臆病になってしまった。
よくキスなんて迫ったもんだ…。今は出来る気がしない。いや、できるけど、出来ない。はぁ。


漆原は俺が無理強いしないと気づいた様で、あれ以来妙に気を許されてる気がする。
何だか野良猫が懐いた様で嬉しいやら、一方で色んな我慢が身体に良くない様で俺としては複雑な気持ちだ。


今も俺のベッドで、横に寝転がりながら足をバタつかせて一緒に映画を見てる。


この寮は一人ひとりのベッドがクィーンサイズなので、二人転がっても狭い訳じゃない。
そのせいか余計に漆原がリラックスしてるってのはあるかも。良かった。

漆原は怖がりのくせにホラーに目がないもんだから、新作が出るとタブレットモバイル片手に俺のところに来るんだ。
俺は漆原が自分から来てくれるのは大歓迎なんだけど。
あまり喜びすぎて警戒されない様に、ポーカーフェイスを顔に載せてしょうがないなと塩対応だ。


今もビクッと飛び上がりながら俺の腕を掴んでくる。可愛い。

ほんと、こいつまじで猫。しかも気位の高いやつな。
気まぐれに撫でさせてはくれるけど、抱き上げようとするとスルッと逃げていくんだ。


「なぁ、和也って最近僕に甘いよな?何で?」

「そうかな。前と変わらないよ。お前がキーキー言わなくなっただけじゃねーの?」

「まじで?僕ってそんなにキーキー言ってた?ていうか、そんなん猿みたいじゃんね?」

漆原はケラケラ笑うとツボに入ったみたいで、身体を丸めて笑い続けた。


俺はその幸せそうな笑い声の響きに聞き惚れた。
ふと目を奪う、丸まった漆原の背中の裾からチラリと見える肌のツルッとした白白さに胸がドキドキと鳴り始めるのを感じた。


これで手を出せないってどんな拷問なんだ。俺は今までこんなに我慢したことなんてないんだ。
心の中でぶつぶつ愚痴っていると、笑い終わった漆原がこっちを仰ぎ見てニコっと笑った。

今なら聞けると俺は思い切って言ったんだ。

「なぁ、…前に漆原の事、名前で呼んだら怒っただろ?何で?」


漆原は少し上を見て考えてから、少し気まずげになって画面を見ながら言った。

「…あー。僕、健斗って誰にも呼ばれたくないんだ。ケンケンは良いけどね。
健斗って呼ばれると何かしっくり来ないっていうか。別に和也に名前呼びされたくないって事じゃないよ。
健斗が嫌なだけ。」

「そっか。じゃあ…俺お前のこと、…うーちゃんて呼ぼうかな。お前は漆原よりそっちの方が似合うからな。」


漆原はしばらく口の中でうーちゃん、ウーチャンとつぶやいていたけど、納得したのかニコッと笑って言ったんだ。

「オッケー、イイよ、うーちゃんで。」

綺麗な顔で自分の事をうーちゃんて呼ぶ漆原が可愛すぎて、俺は抱きしめたい気持ちを押し殺して歯を食いしばったのはバレてないよな?はぁ。

今日も、うーちゃんが可愛すぎて辛い。





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