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二学期

ある生徒の動揺と感動

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僕にその噂が届いたのは文化祭当日のお昼前だった。

「おい、聞いたか⁉︎ちょっと前に噂になってただろ?試着日に超絶可愛いメイドが降臨したって話。結局うちの学生だったことしかわからなかったやつ。
あれ、女王様だったんだよ!今、2-Cの執事メイドカフェ、客が入りきれなくて入場制限かかってんの。こんなの初めてらしいよ。13時から入店予約券発売されるらしいから俺並ぶけど、お前どうする?」

実は僕は女王様の隠れファンだった。キスレクチャーにも応募したくらいだ。落ちたけど。

「…行く。絶対行く。」


俺たちはクラス当番までサボって並んで無事予約券をゲットした。…まるでアイドルみたいだな。

予約時間までソワソワしていた僕はついにカフェに足を踏み入れた。3分の1は一般客を入れてるらしくて、チラホラ女の子も居る。うん、可愛い。女子最高!ま、彼女たちはタクミの様なイケメン執事目当てだろうけどな。

「おかえりなさいませ、ご主人様?」


僕の前に立っていたのは、長い黒髪の清楚なメイドさんだった。ん?清楚?見れば見るほど最初の清楚から遠ざかって行くのは何だろう。醸し出すエロさというか。胸はたわわだけど、谷間が見えるわけじゃないし。全体の印象が普通に女の子なんだけど。

腕も腰もすんなりしてて、細いだけじゃない。むっちりとした肉付きがあって。誘導されるままについていく時に髪の隙間から見える素肌の背中は思わず手で触れたい感じだ。

こちらを肩越しにチラッと見る仕草は僕の胸をドキドキとさせて、トドメは一言これだった。

「ご主人様?触っちゃダメ。」

コレで滾らない男って居るのか?俺たちは、ぼうっとしたまま女王様のメイドに魅了されていた。


「ねぇねぇ、あの可愛いメイドさんて、男の娘なんでしょ?凄い可愛いねー。」

ほら一般客の女の子達だってそう思ってるんだ。ん?男の娘?それはそれで何だか卑猥な…。

確かに普段の漆原はツンとした綺麗系で、まさに女王様だ。でもこのメイド服の漆原はどうだ。
メイドに徹底して扮しているのか、仕草や、表情、声音まで可愛い女の子になってる。

そりゃ、ぱっと見漆原とは気づかない。試着日に誰だったのか分からなかったのも不思議じゃない。


俺たちがじっと漆原を見つめていたのに気づいたのか、女王様の漆原はこちらを見つめてにっこり笑うっと手まで振ってくれた。僕たちは骨を投げられた犬の様にニヤけた顔で手を振りかえしたに違いない。

ああ、並んで予約券取って本当に良かった。僕と友人はだらしない顔でうなずきあったんだ。
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