121 / 149
冬の出来事
司先輩の追求
しおりを挟む
私は司先輩の前で、蛇の前のカエルの気持ちになっていた。司先輩の優しい顔の奥に、般若の顔が見え隠れしている…。
「漆原、いや、ケンケン?どちらも違うか…。あ、…景?それが本当の名前なんだね?」
私はもうすっかり誤魔化しきれないと諦めて頷いた。
「先輩すみません!騙す事になってしまって。全部弟の健斗のせいなんです。…でも多分私も悪い…。」
「前から漆原に違和感があったんだけど、まさか本物の女の子だったなんて。しかも相部屋で…?あいつは知っているのか?」
私は司先輩を見上げて首を傾げた。
「え。…あぁ。和也には冬休み前にバレちゃって…。もう限界だなって思ってたら、弟が帰国して。もう、ここに来るつもりは無かったんですけど、寮を引き払う手伝いに連れてこられちゃって…。」
司先輩は急に怖い顔で私に近づいて両腕を掴むと、真剣な眼差しで言った。
「君は…!君は黙って居なくなるつもりだった…のか⁉︎ そんな酷いことってあるか。少なくとも僕は…。
いや、そもそも考えなくても分かってた。君が女の子だなんて誰だって感じてたじゃないか。でも僕たちはすっかりあり得ないと思い込んでいて、目の前に事実が見えない垂れ幕を下ろされていたんだ。実際…本当の君は何者なんだい?」
それから私は、弟の身代わりになってたこと、留学経験があること、桜蔭大学へ入学予定なことを司先輩にカミングアウトするはめになった。実は司先輩って凄い怖い…。司先輩は私の話を怖い顔で黙って聞いていると、ため息を吐いて言った。
「…じゃあ、景と僕は同級生だったんだな。ふっ、君は幼いのかな。ちょっと同い年には思えない。」
私は、そっぽを向いて口を尖らせた。
「…司先輩が大人っぽいだけです…。あ、そうだ。内部進学はどうなりましたか?先輩なら絶対希望通りでしょう?」
司先輩は私の様子を微笑んで見つめて言った。
「…景は男でも、女の子でも、結局ケンケンとしては一緒なんだな。すっかり僕も表面的な事に惑わされてしまった。あ、うん、希望の学部へ進学出来そうだ。」
僕は大好きな司先輩が希望の学部へ決まった事に嬉しくなって、満面の笑みを浮かべて言った。
「やった!先輩おめでとうございます!それで、先輩の希望する学部ってどこなんですか?」
先輩は少し顔を赤らめて咳払いすると、にこりと笑って言った。
「医学部だよ。確か医学部は景の進学する桜蔭大学の近くだった気がしたけど。」
私は司先輩がいつも通りの癒しの存在に戻ったと、すっかり気を許していた。
私の前にグッと近づいた司先輩の見たことのない眼差しを見つめるまでは。
「漆原、いや、ケンケン?どちらも違うか…。あ、…景?それが本当の名前なんだね?」
私はもうすっかり誤魔化しきれないと諦めて頷いた。
「先輩すみません!騙す事になってしまって。全部弟の健斗のせいなんです。…でも多分私も悪い…。」
「前から漆原に違和感があったんだけど、まさか本物の女の子だったなんて。しかも相部屋で…?あいつは知っているのか?」
私は司先輩を見上げて首を傾げた。
「え。…あぁ。和也には冬休み前にバレちゃって…。もう限界だなって思ってたら、弟が帰国して。もう、ここに来るつもりは無かったんですけど、寮を引き払う手伝いに連れてこられちゃって…。」
司先輩は急に怖い顔で私に近づいて両腕を掴むと、真剣な眼差しで言った。
「君は…!君は黙って居なくなるつもりだった…のか⁉︎ そんな酷いことってあるか。少なくとも僕は…。
いや、そもそも考えなくても分かってた。君が女の子だなんて誰だって感じてたじゃないか。でも僕たちはすっかりあり得ないと思い込んでいて、目の前に事実が見えない垂れ幕を下ろされていたんだ。実際…本当の君は何者なんだい?」
それから私は、弟の身代わりになってたこと、留学経験があること、桜蔭大学へ入学予定なことを司先輩にカミングアウトするはめになった。実は司先輩って凄い怖い…。司先輩は私の話を怖い顔で黙って聞いていると、ため息を吐いて言った。
「…じゃあ、景と僕は同級生だったんだな。ふっ、君は幼いのかな。ちょっと同い年には思えない。」
私は、そっぽを向いて口を尖らせた。
「…司先輩が大人っぽいだけです…。あ、そうだ。内部進学はどうなりましたか?先輩なら絶対希望通りでしょう?」
司先輩は私の様子を微笑んで見つめて言った。
「…景は男でも、女の子でも、結局ケンケンとしては一緒なんだな。すっかり僕も表面的な事に惑わされてしまった。あ、うん、希望の学部へ進学出来そうだ。」
僕は大好きな司先輩が希望の学部へ決まった事に嬉しくなって、満面の笑みを浮かべて言った。
「やった!先輩おめでとうございます!それで、先輩の希望する学部ってどこなんですか?」
先輩は少し顔を赤らめて咳払いすると、にこりと笑って言った。
「医学部だよ。確か医学部は景の進学する桜蔭大学の近くだった気がしたけど。」
私は司先輩がいつも通りの癒しの存在に戻ったと、すっかり気を許していた。
私の前にグッと近づいた司先輩の見たことのない眼差しを見つめるまでは。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる